そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

異世界おじさんについて

 異世界転生、今となっては当たり前のWEB小説での王道だ。事故、事件、神様や権力者の気まぐれや思惑によって。一人の少年が異世界へとやってくる。そんな彼は様々な思いを胸に、あるものは新しい人生を、あるいは世界を平和にするために、または元の世界に戻るために。誰もが知っている未知の異世界を冒険する。
 2019年、現在においてはアニメ化の影響もあって。だいぶメジャーなジャンルとなった。しかし、この異世界転生もの、じつは元となるサイト小説家になろうがオープンしたのが2004年、大ヒットしたのは2009年のSAOから。つまり、10年も変わらずに独自に進化してきたガラパコス的な文化なのだ。

 そういう過去と現在という二つの点を一つの線で結ぶ。それが今回紹介する作品『異世界おじさん』です。

 『異世界おじさん』はコミックウォーカーで連載中のWEB漫画。

 主人公のタカフミは、行方不明となっていた叔父さんを迎えに病院に訪れる。
 そんな彼に対し、叔父さんは異世界語で話しかけ。自分は現実世界に帰ってこれたことをあっけらかんという。
 叔父さんの言葉を狂言としかとれないタカフミは、彼に生活保護を勧める。
 このままだと見捨てられることを察した異世界おじさんは、異世界で使えた魔法をやってみせる。それに驚いたタカフミは、その力をYouTubeで流すことを提案。これにより、彼らは収入を得て、二人三脚での現実世界での日常がはじまる。

 初見の印象は、『聖☆お兄さん』。なにか大きな事件が終わった後で。誰しもが知っている異世界から着想するネタを日常パートで上手くギャグ化する。
 物語の導入である一話は、異世界転生から帰ってきた勇者が普通の人からしたら精神異常者のようにみえるという、『帰ってきたヒトラー』のようなブラックなジョーク。
 2話からはタカフミとおじさんとの日常との同時進行でおじさんから語られる異世界の話が凄い面白い。

 おじさんの過去話の聞き手はゲームやアニメで異世界に憧れるタカフミ。
 異世界の話に期待するも、語られる内容は、お決まりのテンプレをその世界でのリアルで否定する”異世界なめるな”系。
 さらに、それを面白くしていくのが魅力的なヒロインたち。
 本名不明のツンデレエルフ。凍刃の眠り姫、メイベル。冒険者のアリシア。
 彼女たちと出会い、ラブコメに発展するかと思いきや。毎度毎度お約束を破る。
 これのいいところは、これがすでに終わってしまった過去のことで、現実世界に戻ってきたおじさんは異世界に戻ることはない。
 つまり、閉ざされた可能性の中の可能性である点だ。
 わかりやすく言えば、「やれたかも委員会」。
 もしかしたら、恋愛に発展したかもしれないという可能性の話だからこそ。
 失ったものとしての魅力ってのが湧くんですよ。

 しかも、ヒロインたちのおじさんに対する好意にたかふみだけが気づくからこそ。ギャグとしてオチている。

 3巻まで行って、おじさんの物語も謎が深まってきているし、現実世界でのタカフミとヒロインの恋も気になるところだ。

 4巻が出たら、追って報告いたします。



因幡はねるの『因の者オフ会 第二陣 -大願成就- inサンリオピューロランド』について

 11月10日、日曜日、14時30分。Vtuber、因幡はねるによるオフイベント、因の者オフ会がサンリオピューロランドで開催されました。

 今回は、因幡はねるについての解説、はねるとサンリオの関係、僕個人のサンリオの感想、イベントの内容と感想について話します。

因幡はねるとは


 因幡はねる、19歳。財政破綻したうさうさ界のために外貨獲得をすべく人間界、東京都北区赤羽のあにまーれの雇われ店長になった。
 リスナーさんのこともしっかり監視し、たくさんのリプやファボをしている。


【初配信】私の古参になってください♡【因幡はねる / あにまーれ★2018/6/9


 配信頻度はほぼ毎日。デビュー当初から、当時のVtuberの間ではまだ一般的でなかった朝配信や料理配信を行う。steamを中心としたゲーム配信はトークのキレがよく、どんなゲームでも面白い。かわいいらしく特徴的な声質によるおっとりとした語り口は童話のような雰囲気のゲームと相性がいい。

●料理配信

【お料理】簡単!ルウを使わないクリームシチュー♪ねるねるクッキング【因幡はねる / あにまーれ】

大量餃子配信!人の金じゃなくても餃子はうまい【因幡はねる / あにまーれ】

【お料理】犬山たまきちゃんとハンバーグ対決!【因幡はねる / あにまーれ】


●ゲーム配信のオススメ

【木】Tree Simulator 2020【因幡はねる / あにまーれ】

【究極の選択】私の選択でどちらかが死ぬ・・・!?トロッコ問題 of アルマゲドン【因幡はねる / あにまーれ】

【ポケモンピカブイ】絶対にイーブイの可愛さに屈しないウサギ #1【因幡はねる / あにまーれ】

【くまのレストラン】超感動ゲーム!泣きたいやつはこのゲームをやれ!【因幡はねる / あにまーれ】

 また、秀才で勉強がよくできて頭がいい。それを活かして今週のニュースについて語るねるにゅ〜や、VTuber学力テストの問題作成と司会を行う。

●ねるにゅ〜

●VTuber学力テスト

【第4回学力テスト】#VakaTuberは誰だ -ダイナマイトvs発展途上の乱-【因幡はねる / あにまーれ】


性格は内向的で自身を"隠の者"と称している。なので、デビュー当初はVTuberどうしのコラボが少なかった。そのぶん、たくさんの配信量によりリスナーとの濃い交流を行って堅実に登録者を増やしたため、彼女を支えようと考えるアクティブユーザーが多い。そのため、初期からガチ恋イレブンで一位をとる、秋葉原でグッズが売り切れるなどのインパクトのある結果も残した。

●秋葉フェスで自身のグッズが売り切れた日の配信

【秋フェス2018】因幡はねるが秋葉原から消えた日・・・秋フェス報告枠【因幡はねる / あにまーれ】


そんなねるちゃんのキャラクター性を理解しているからこそ、活動していくにあたってあにまーれのメンバーに心を開いていくまでの過程。名取さな、犬山たまき、朝ノ瑠璃、緑仙とコラボに、彼女の変化を感じられる尊さがある。

●名取さなとのコラボ

【名取さな】お悩みドドンと解決!さなねる診療室【因幡はねる】


●犬山たまきとのコラボ

【因幡はねる】ねるたま責め合い♂イチャイチャトーク♥【犬山たまき】

●朝ノ瑠璃とのコラボ

🔴【朝ノ瑠璃】スナック瑠璃【因幡はねる】

●緑仙とのコラボ

【LIVE】因幡はねるとの今後を考える。

今年に入ってからはDBDを中心とした多人数の外部コラボを行うようになり。緑仙と奇抜なコラボを企画したり、Vのから騒ぎを行うように。持ち前の頭の回転の速さで司会業や企画人としての面も出るようになりました。

●緑仙との企画

#すべバナ「緑仙&はねるのすべるかもしれない話」【因幡はねる / あにまーれ】

【緑仙&因幡はねる】#ツブナイ 七夕なので有望な新人Vtuberたちをかわいがるぞ~【因幡はねる / あにまーれ】


●Vのから騒ぎ

【#Vのから騒ぎ】ガチ恋Vtuber編 /神楽めあ/シスター・クレア/緑仙/朝ノ瑠璃【因幡はねる / あにまーれ】

はねるとサンリオ

 
 サンリオピューロランドでソロイベントを行い、プリンくんとコラボする。

 これはねるちゃんが初回配信の時から掲げている彼女の夢です。その夢が今回のイベントで叶う。だからこその"大願成就"なんですね。
 ねるちゃんは幼少期の頃からサンリオのファン。サンリオピューロランドでデートをしながらオススメスポットを紹介する配信もしています。たくさんのサンリオキャラクターのなかでもプリンくんが大好き。家にはたくさんのプリンくんグッズやぬいぐるみがあります。
 
 VTuberとして活躍していくうちに、そんなねるちゃんのことをサンリオやプリンくんからも認知されるようになります。
 5月15日、サンリオキャラクター総選挙が迫るなか、ポムポムプリンがかわいらしいウェイトレスの格好をします。その姿はなんとあにまーれのねるちゃんのコスプレそのもの。突然のことに思わず驚きます。このことは、あにまーれのスタッフやねるちゃんにも寝耳に水だったようです。

 また、9月2日のサンリオエキスポ2019でインフルエンサーとして招待されています。

 こうした段階を得て、ついにサンリオピューロランドでのオフイベントの開催に至りました。


サンリオピューロランドでねるちゃんとデートしようよ!★40,000人記念放送★【因幡はねる / あにまーれ】

ポムポムプリンくんに認知されたかもしれない限界オタクの雑談配信【因幡はねる / あにまーれ】

サンリオに命かけてるVtuberのレポ #サンリオエキスポ #サンリオプレビュー【因幡はねる / あにまーれ】

サンリオの感想

 今回のイベント会場はサンリオピューロランド。そのため、オフ会イベントのチケットは、ピューロランドの一日フリーパスの引換券にもなりました。
 なので、この日、たくさんの因幡組がサンリオピューロランドを満喫していました。たぶん、ふだんと比べると男女の比率が違っていたことでしょう。
 そんな因幡組を考慮して、オフ会イベントの特典としてねるちゃんによるサンリオピューロランドのオススメスポットが描かれたしおりもフリーパスと一緒にもらえました。
 僕もせっかくなので、開演したばかりの9時からサンリオに入園してなかのアトラクションやイベントを楽しむことに。
 今回、紹介されていたイベントで興味を持ったのがカワイイ歌舞伎、ミラクルギフトパレード、ぐでたま・ザ・ムービーショー。順に紹介していきます。

カワイイ歌舞伎について

 まず、9時30分にカワイイ歌舞伎を観にいきました。

 サンリオピューロランドで、なんと歌舞伎が見れる。しかも、キティ、ポムポムプリン、バツマルやシナモンが歌舞伎をやる。

 歌舞伎はプロの方によって監修されています。登場や決め台詞のときにやる見栄や、暗闇のなかで探しまわるだんまり。キャラクターたちが歌舞伎の化粧をしている。

 序盤の桃太郎とかさ、歌舞伎のカッコよさにサンリオの可愛さを足したいい舞台になってるんだよね。

 この序盤だけだったら、そこまで驚かなかったんだよね。

 その後でどんでん返しがあってさ。そこからミュージカルとしてのすごいし歌舞伎としてもすごい演出がメチャクチャ入るんだよ。
 この辺がすごくてさ。正直言ってカワイイ歌舞伎を見るためだけに行ってもいいくらいレベルが高いです。

ミラクルギフトパレード

 そして、11時にミラクルギフトパレード。

 このパレードを見ててスゴイなと思ったのが360度のステージであることと高低差を活かした演出です。

ピューロランドは屋内型の遊園地です。2階までの高さのある知恵の木を中心に、時計回りでディスカバリーシアター、メルヘンシアター、エンターティメントホール、フェアリーランドシアター、サンリオタウンがあり。1階、2階にそれぞれのエリアに観覧できる場所があります。

 ディズニーのパレードやイベントだと、見上げたり、まっすぐ見る形になるけど、サンリオピューロランドの場合は見下ろす視点があるんです。

 だから、サーカスのエアリアルみたいな、高低差を利用した空中演出があるし、キティちゃんもゴンドラで降りてくるんですね。

 これがさ、二階から見るとスゴイ迫力あるんですよ。

 さらに、マスコットさんと人のキャストさんの演技がスゴイですね。

 話の内容がさ。キティたちが知恵の木のパーティーにやってきて。パレードやダンスのする。そんなときに闇の集団がやってきて、パーティーを盛り上げる光の力を奪う。キティの彼氏は倒さなきゃ身構えたら。キティは争わず、闇の集団と心を通わせ、改心させるってはなしなんですよ。

 ベタなストーリーなんだけどさ。キャストの表情の演技がすごいんですよね。

 知恵の木の国と悪の軍団の因縁は知らないけどさ。歌やダンスで、迫害されて孤独だった三人であることがわかります。

 そんな彼らに対して、パレードを邪魔されたのにもかかわらず、ポチャッコが手を差し伸べて、遊ぼうよみたいなジェスチャーするシーンがあるんだけどさ。

 そこのキャストさんの、はじめて誰かに優しくされて戸惑ってるって表情がいいんだよね。その上で、やめろ!って顔でその手を振り払われて、ちょっと顔を伏せて下がるポチャッコも可愛いんですよね。

 カワイイ歌舞伎の時も思ったけどさ。キャストさんの演技によって、表情が変わらないはずのマスコットさんに感情があるように見えるんですね。

 もう一回見にいきたくなりました。

ぐでたま・ザ・ムービーショー

 そして、12時にぐでたま・ザ・ムービーショー。

 映画監督となったぐでたまが、試写会をはじめます。僕らはその試写会の招待客として席に座る。しかし、問題の映画はほぼ未完成の短編であった。なんとかするために、ぐでたまは招待客を巻き込んで、この場で映画を撮影することにってはなしです。

 ぐでたまによる、客いじりがスゴイ面白いです。じつはぐでたまを見ている僕らの姿が撮られてて、それがアトラクションの展開に関わっているとこも面白いです。
 

サンリオについて

 今回、ピューロランドに来て、ぼくが思ったことはさ。かわいいって足すものじゃなくて見出されるものなんだなってことですね。

 僕、サンリオがいろんなものとコラボしているのは知ってたんですよ。KISSとか、パズドラとか。そういったものについて、既存のものにかわいさを足す、いわゆるから揚げにレモンをかけるみたいなものだと思っていた。

 しかし、実際にかわいい歌舞伎を観たらさ。なにかを足しているんじゃなく、調和している。元から、そういう側面があったかのような方向づけになってるんですね。

 サンリオピューロランドは小学低学年の頃に一度行ったことあるんですが。ホントに変わったんだな、という印象です。

 あの当時は、ゴジラやワンピース、デジモンとコラボしたアトラクションがあってさ。女の子が楽しめるだけでなく、男の子の居場所もあるよ、てとこだったんですよね。

 実際、それが成功かっていうとさ。結局、そのアトラクションが終わったら、その男の子はもう帰りたいって思っちゃうんですよね。

 今は、そういうアトラクションがなくなってて、カワイイ歌舞伎やぐでたま・ザ・ムービーショーみたいに、世界観にあったアトラクションだけど、男の子も楽しめるところになってるとこはよかったです。実際、小学生くらいの男の子が楽しそうにしてるとこ、何度か見ましたから。

 サンリオピューロランドをだれもが楽しめる場所にしたい。そういうメッセージがいろんなとこで感じとれました。

 カワイイ歌舞伎やミラクルギフトパレードも、本来はメルヘンの世界にはいないイレギュラーがキティによって、そのうちにあるかわいいを見出され、調和される。そういう流れを組んでるんですよ。

 楽しかったので、新しいショーやアトラクションが見れる時期になったら、個人的にまた行きたいと思ってます。

因の者オフ会について

 そして、14時半、ついにイベントがはじまります。会場は開演前から人で賑わっています。僕は一人で見てまわってましたけど。Twitterでは#因の者オフ会で口々に感想を言い合ってて。中にはネットどうしで交流のあった人とオフで交流してたようですね。

 13時の時点で物販やこの日、限定のガチャの行列がありました。

 ねるちゃんによる歌。リスナーさんとのファンミーティング企画。特別ゲストのダンスショー。手紙の読み上げ。締めは黄色いラビリンス。最後まで楽しい時間でした。順に話します。


【生中継】因の者オフ会 第二陣 -大願成就- inサンリオピューロランド【因幡はねる / あにまーれ】

はじめはファンファーレ

 まず、最初はファンファーレ。6月8日のあにまーれ24時間テレビで明らかになった。あにまーれの初のグループオリジナル曲。
 6月9日にiTunesやその他サイトで楽曲配信されました。
 生で聴くといいですね。リスナーさんたちと、配信で事前に決めていたコールをしていると。繋がっていたんだって感じがしてさ。一体感がありますよね。

ねるリーグ、監視力調査

 歌が終わり、ねるちゃんは3Dの姿からいつもの2Dの姿にもどります。

 そして、ファンミーティング企画。リスナーさんたち合同のねるリーグに移ります。

 四文字の空欄が示す答えを無差別に選ばれた4人のリスナーが答える企画。

 珍回答や名回答があって面白かったです。
 ねるちゃんのリスナーいじりも面白いですね。ちゃんとその日の服装とか、質問も上手いし、記憶力がいいから、Twitterから流れてきた話題と今のリスナーをうまく結びつけたりするトークも上手い。

 次に、ねるちゃんの監視力調査。無作為に選ばれたリスナーさんが出された問題に、どう答えるかをねるちゃんが当てる企画。リスナーさんのTwitterを把握しているねるちゃんだからこそできる企画です。

 リスナーさんのことをよく見てるんだな〜ってことがわかるのがいいですね。

プリンくん登場、かわいいフェスティバル。手紙の朗読

 そして、再度2Dから3Dに変身するねるちゃん。そこに現れるのが夢にまで見たプリンくん。
 彼の登場に感極まるねるちゃんを見てると、感慨深い気持ちになりますね。ついにここまで来たんだな〜って感じ。感動しましたよ。

 そこから、ねるちゃんとプリンくん、リスナーさんによるカワイイフェスティバル。ここ、僕らも会場で踊りました。
 youtubeは何回か見たんですが、いざやると難しいですね。なんとか数時間前にミラクルギフトパレードで踊り方を見たのと、ライブでも踊り方を教えてくれた場面があったので戸惑わなかったって感じです。
 ちなみに、すごい上手いリスナーさんもたくさんいましたよ。次も踊ってみたいですね。

 その次にねるちゃんによるプリンくんへの手紙の朗読。あれもスゴかったですよね。プリンくんの感情表現が豊かなんですよ。
 ねるちゃんのピューロランドが幼い頃から好きって話に、「うんうん」って頷いてさ。その頃にプリンくんに救われたって話に入ったらさ。「もしかして、あの時の」って感じのリアクションしてさ。複雑な感情表現みたいなのがさ。耳や短い手の動きでわかるんですよね。それでいて可愛いんですよね。

 そういったプリンくんのリアクションがさ。ねるちゃんが同じ舞台でプリンくんに向けて手紙を読み上げている場面を盛り上げてましたよね。
 
 そして、その次にリスナーさんへの手紙。
 手紙を聞いてて、そういやそんなこともあったな~、となつかしくなりましたね。
 配信でもちょっと聞こえてたかもだけど。ねるちゃんの言葉にリスナーさんが一人一人。
「これからも推していくよ!」とか、「ねるちゃん大好き」とか打ち合わせたわけでないけど、同じタイミングで掛け声が出るってとこがさ。
 配信のコメントがそのままオフ会になっている感じがよかったですよ。

黄色いラビリンス

 そして締めが黄色いラビリンス。
 曲調が少し懐かしい感じですよね。
 ねるちゃんのキャラクター性が出てて、それでいて可愛らしいとこが最高ですね。

 そして、16時30分にイベントが終了。
 最後まで満足感のあるイベントでした。
 まず、予想以上にサンリオピューロランドが楽しかったですね。
 いわゆる、ねるちゃんの原点で、彼女のエンターテインメント性を作り上げた場を体験できたのはよかったです。
 そして、イベントでじっさいにねるちゃんに会えて、交流できたり、歌を聞けたり。
 ねるちゃんの夢がかなった瞬間を間近で見れたのはとても貴重な体験です。
 これからも推し続けたい、そう気持ちを新たにできる日でした。
 下に本日のイベントのアーカイブを張っておきますので、ぜひ見てください。

 チャンネルのURLも張りますので、チャンネル登録をしていない方は、ぜひこの機会にご登録を。


【生中継】因の者オフ会 第二陣 -大願成就- inサンリオピューロランド【因幡はねる / あにまーれ】


「黄色いラビリンス」因幡はねるオリジナルソング (short ver.)【因幡はねる / あにまーれ】

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仮面ライダーゼロワンの一話について

2019年9月1日、仮面ライダーゼロワンの第1話が公開されました。


感想

スゴい面白かったです。
まず、戦闘シーンがカッコいい。
主人公は科学の超技術により、ライダーとしての戦闘方法をラーニングしているので。その後の戦闘がとてもキレキレ。
見た目もカッコいいけど、異形としての怖さがあります。夜中の戦闘が見たくなりますね。
しかも、バスのギミックを利用した演出やヒロインの社長秘書が投げた武器が当たってしまう場面から、彼の性格、こんなライダーなんだぜってのが伝わってきます。

それと、サクサク進むのがよかったですね。
最近、有料の動画チャンネル、東映ファンクラブでいろんな仮面ライダーを見てるんですが。仮面ライダーの一話って、けっこう難しかったり、シリアスすぎたりすることが多いので。素人には敷居が高いんですよね。
それが、今回は主人公の目的、世界観、キャラクター性がテンポよく動いてくれてるので。一話からこの作品は面白いって乗れるんですよ。

最初の一歩を止めるものが敵

今回のテーマはAI。
主人公のいる世界ではヒューマノイドという、自分で物を考えて行動できるAIが搭載されたアンドロイドみたいなのが社会を支えている。
主人公の祖父はそんなヒューマノイドを生んだ会社の社長。そんな祖父がある日、遺言を遺して死んでしまう。
その遺言の内容が、会社のヒューマノイドが暴走して人類に危機を及ぼす。それを止めるにはゼロワンドライバーしかない。これを装着できるのは我が社の社長のみ。
そして、社長に任命されるのは主人公であった。
もちろん、会社の経営陣は大反対。そんななか、ヒューマノイドの一人が暴走する。

ザックリ語るとこんな話なんですけどね。
面白いのが、Twitterでも話題になった、物語の最初の被害者であり、暴走したヒューマノイドでもあった腹筋崩壊太郎。

腹筋崩壊太郎、お笑い芸人である、なかやまきんに君が演じる、人を笑顔にすることが仕事のヒューマノイド。
彼はヒューマノイドとして、くすくすドリームランドで働いていた。そんな彼は自分のギャグで人を笑顔にできることに充足感を感じ。その感情の目覚めに自分自身も戸惑っていた。

暴走するヒューマノイドは、自我が目覚めるはずだった。しかし、悪役がその進化を利用して人類を滅亡させるためのヒューマノイドとして改造します。

暴走するヒューマノイドは自我を手に入れるはずだった。この情報は本作の悪役と、僕ら視聴者しかまだ知りません。主人公はあくまで人々に危害を加える存在として彼らを倒します。そこがさらに悲しいんですね。

ここで重要なのが、AIの自我の目覚め、という時代を次のステージに進めるための第一歩が、何者かによって邪魔されている。主人公はそれを止めるために戦っている、ということです。

しかも、その悪役たちが根城にしているところが過去に起きたなんらかの事件で廃墟となった都市で。彼らは昔、うまくいかなかったある事件をもう一度起こすためにヒューマノイドを暴走させている。

ここらへんを抑えると、この悪役たちはあの時の日本をもう一度と考えるクレヨンしんちゃんオトナ帝国の逆襲みたいなやつらだと考えられます。

つまり、時代を先に進めたくても、それを帰省して今の状態を保とうとする考えが、低迷した経済や社会を生み出してるじゃないかって問いかけがこの対立軸にはあるんです。

そして、ゼロワンはその平成で行われてきたそういったしがらみを壊して、次のステージに進むための最初の一歩を踏み出すゼロワンを生み出そうというのが社会的なメッセージとしてあるのではないでしょうか。

もちろん、今のところの予想です。
いろいろ話したいことがあるのでまた書くかもしれません。

では、また次の記事で会いましょう。

仮面ライダーゼロワン 変身ベルト DXエイムズショットライザー

仮面ライダーゼロワン 変身ベルト DXエイムズショットライザー

仮面ライダーゼロワン DX飛電ゼロワンドライバー

仮面ライダーゼロワン DX飛電ゼロワンドライバー

仮面ライダーゼロワン DXフライングファルコンプログライズキー

仮面ライダーゼロワン DXフライングファルコンプログライズキー

にじさんじの笹木咲とベルモンドバンデラスのカップリング、ダレパンダについて

昨日、8月28日、22時に、にじさんじベストパートナー決定戦が行われることがTwitterにて発表されました。

にじさんじとは、株式会社いちからが運営するvtuberグループ。2018年の2月から第1期のメンバーがデビューし、際立つ個性と個人個人の独自の企画力が話題となり広がっていった。
ライバーとしての個人を尊重する方針で、ライバーごとにリスナーの空気感が違う。それぞれにそれぞれの良さがあって独立しているが、箱としてのライバーどうしの交流も盛んだ。

そんななかで、にじさんじのライバーどうしの交流で魅力なのが「てぇてぇ」。もとは尊い。萌の最上級の表現だったのが、しだいにキャラどうしの関係性の良さを表す言葉に発展した。その後、にじさんじの楓と美兎のカップリング、カエミトの絡みを見て、「ひゃ〜尊ぇ尊ぇなぁ〜」と言う悟空の2次創作が話題となり、現在の「てぇてぇ」という言葉が生まれた。

「てぇてぇ」はしだいに男女のvtuberのカップリングにも使われるようになり、にじさんじ内でもさまざまなカップリングが生まれた。

今回はそのなかでのベストパートナーを決める配信らしい。参戦メンバーは、ぐんかん、紅ズワイガニ、くずんぼ、おりコウ。どれも切り抜きで見たし、生の配信を何度か見た、いかにもって人選だ。

そのなかで、ちょっとビックリするカップリングをみつけました。それが「ダレパンダ」。ベルモンド・バンデラスと笹木咲のカップリングです。

この二人が出たのは意外でしたね。あまりカップリングとして絡む回数は少ないですから。ただ、カップリングの経緯と、関係性はけっこう面白い。今回はこの二人について、僕が知ってることを語ろうかと思います。

彼女とベルモンド・バンデラスの関係は少々込み入ったものになる。そのことについて語るには、まず、笹木咲さんはどういう人物で、どんなことがあったかを話さなければいけない。

笹木咲、元にじさんじゲーマーズ(にじさんじ2期以降に別々でつくられたグループの一つ、後に統合された)。
ピンクの髪。かわいいウィスパーボイス。語尾の気の抜けるような「〜やよ」。同期の椎名唯華との絡みや悪ふざけは見てて面白い。

デビューは7月。スプラトゥーンやマインクラフトをプレイし、ゲーム部の道明寺ともコラボしてました。
しかし、11月に突然の引退。にじさんじゲーマーズでは、卒業式配信が行われ、ゲーマーズを去ることに。

この話を聞いてあれ、おかしいな? と思った方もいるでしょう。そう、笹木咲さんは11月15日に卒業したはずです。なぜ、今ここにいるのだろうか、と。

じつは彼女は、一度引退した後に二ヶ月後に復活をしたのです。

あれは1月のことでした。にじさんじ公式ツィッターアカウントから、笹木咲のシルエットとともにこんな言葉が流れました。「おかえりと言える日が来る」。

僕はTwitterで喜びの声ともに引用RTされたツイートで知ったんですが。あれをはじめて見たときは動揺しました。

その日の夜、笹木咲さんが記者会見風に経緯を発表。なんでも、彼女が引退を決めた当時、配信したいゲームが規約の事情でできなかった。なので、やりたいことができなくなったため、引退せざるおえなかった。

このゲームがたぶん任天堂だと思います。あの当時、任天堂のゲームを配信するには色々と面倒な手続きや規制、しがらみがありました。

しかし、彼女が引退した後。任天堂はその手続きの大元であるクリエイターズプログラムを廃止。任天堂のゲームが配信しやすくなりました。

そのことを、いちからさんにも伝えられ、彼女は復活を決意します。

当時、この辺の事情がにじさんじを追ってる人の一部には理解されていなかった。いわゆるFWを希望したサッカー選手がゴールキーパーしかやらせてもらえなかった。事務職希望だが、営業にまわされた、みたいな話なんですよ。それが好きな「ゲーム」ができないって言葉に引っ張られ、それはどうなん?って思った人もいたんですね。

この辺は配信者のこだわりを理解できてるか、できてないか違いみたいなもので、僕は後者だったので、少しモヤッとしていました。

そんななか、1月18日、笹木咲さんはある動画を投稿します。それが『笹木は嫌われている--命に嫌われているを歌ってみた』です。
面白いですよ。歌い手さんによく歌われている『命に嫌われている』の替え歌です。
聞いてて驚きましたね。歌詞を変えるだけでここまで歌の印象が変わるのか、と感心しました。自身の現状を歌いながらも、自分とメンバーとの関係性をコミカルに歌っている。
そして、この歌をきっかけにベルモンド・バンデラスとの関係がはじまります。

『笹木は嫌われている』にはこんな一説があります。にじさんじに復帰した笹木。その吉報はにじさんじメンバーにすぐ伝わりました。
しかし、それを伝えた笹木さんのチャットに返信が来ない。まだかまだかと待つそんななか、一人だけ自分の復帰を祝ってくれた人が。誰だろう、社、椎名、舞元、花畑? チャットを覗きこんだそこにいた名前はベルモンド・バンデラス。

この辺の展開に笑ったリスナーから、「ベルモンド・バンデラスだれやねん」という言葉が流行りました。
実際、僕もベルモンド・バンデラス知らなかったんですよ。

ベルモンド・バンデラス。夢の中にだけ存在するBARのマスター。マインクラフトではひたすらダイヤを掘る配信をしていた。にじさんじのライバー、柴犬のしばが母親。

渋い声と優しい人柄から、パズる前から熱心なファンも多く。ニコニコ動画ではすでに彼についての切り抜き動画が投稿されていて、笹木咲の『笹木は嫌われている』がランキング一位を取った際は、それらも上位に。

突如、チャンネル登録者数が増えた時は、『笹木に嫌われている』で自身が登場していたことを知らず。「誰やねん」で埋め尽くされたコメント覧に動揺。後に動画を見て事情を知る。

そこからマインクラフトで、他メンバーと交流する姿から人柄が評価されるように。

当時、僕自身も、人づてで聞いた印象から笹木さんのことをちょっとした問題児だと思っていたので、ベルモンドさんの評価が相対的に上がりました。

その後、二人はにじさんじバトルロワイヤルで同じチームを組み、そこでのコミカルなやりとりが切り抜かれ、「ベル笹」と呼ばれるようになった。

さらに舞元、椎名、ベルモンド、笹木の四人で家を作る配信を行います。

そこから、4月1日のエイプリルフール。二人は突如、こんな配信をしました。それがベルモンド・バンデラスと笹木咲の結婚報告。
もちろん、エイプリルフールのウソだ。
面白いですよ。記者会見風の動画や椎名唯華とのケンカなど、小芝居を絡めた配信は度々やっていたのだが、どれも茶番劇感が笑いを誘います。声色が幼いので、子供が一生懸命やるお遊戯を見てるような気分になるんですよ。この配信もそれを活かしたものになりましたね。

そして、5月に卯月コウ、魔界ノりりむ、笹木咲、ベルモンド・バンデラスの四人によるホラゲー『PACIFY』コラボ。
こちらは6月に第2回が行われた。

そこから2ヶ月おいての今回のコラボ。
個人的に今回の配信で一番の注目株ですね。ご覧の通り、二人の配信はコラボ数がまだ少ないから今からでも十分追える。
面白い二人なんでぜひ見てみてください。

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ウィクロス WXK-D16 TCG 構築済みデッキ にじさんじ ウィクロス バトルセット

ウィクロス WXK-D16 TCG 構築済みデッキ にじさんじ ウィクロス バトルセット

起立! 気をつけ! にじさんじ学園!(2)

起立! 気をつけ! にじさんじ学園!(2)

起立! 気をつけ! にじさんじ学園!(1) 起立! 気をつけ! にじさんじ学園! (コミックエッセイ)

起立! 気をつけ! にじさんじ学園!(1) 起立! 気をつけ! にじさんじ学園! (コミックエッセイ)

『この素晴らしい世界に祝福を!』16巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『この素晴らしい世界に祝福を!』の16巻です。


この素晴らしい世界に祝福を! 16 脱走女神、ゴーホーム!【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)
著者:暁なつめ
イラストレーター:三嶋くろね
発売日: 2019/8/1
出版社: KADOKAWA
言語: 日本語
ASIN: B07VRLSJ8J

あらすじ
『追伸。探してください』セレナが起こした騒動の後、手紙を残してアクアが家出した。マスコット的な存在であるアクアの家出によって、にわかに騒がしくなるアクセルの街。しかし、そんな状況にも関わらず、カズマは『レベル1』であることを理由に追いかけようともしなくて!?
様子のおかしいカズマを気遣っためぐみん達に、原点にして宿敵であるジャイアントトード狩りに誘われ――そこでカズマは、誰も想像がつかないようなパワーアップ方法をひらめく!?
「留守番するのはもう止めだ! あのアホを追いかけるぞ!」
ついに、カズマがチート獲得!? 家出女神を追いかける16巻!

『この素晴らしい世界に祝福を』とは

『この素晴らしい世界に祝福を』とは、もともとは小説家になろうで連載されていた異世界転生ものです。
主人公のスバルはひょんなことから死んでしまう。すると女神のアクアから異世界への転生を進められる。
転生前に自身の死因を笑われた彼は、この中から好きなものを異世界に持ち込めると言われ、女神であるアクアを選ぶ。
こうして、神のチートを得たカズマは異世界無双を夢見るが、現実はそうもいかず、みたいな話ですね。

面白いですよ。アニメ化もされて、1期が好評だったため、2期も放送されました。異世界転生ものと聞かれて真っ先に上がる作品ですが、じつは話の内容は異世界転生と期待したら、という異世界転生を笑うコメディ系の作品。

ヒロインであるめぐみん、主人公の悪友であるダスト、トリックスターなバニルなど、主人公以外にも魅力的なキャラクターがたくさんいる。

また、異世界転生なのに冒険は少なく、初心者の街、アクセルからほぼ出ていないが、世界観が人気でTRPG化もされてる。

この長期シリーズもついに16巻です。

では、読んだ感想に入りましょう。

カズマがレベルアップ

15巻であることがきっかけでアクアは魔王討伐へと向かう。
カズマはレベル不足のため、一度はアクアを追いかけることを諦めるも、レベルアップのためにリッチーのウィズと悪魔のバニルと共にダンジョンに潜ることに。
この辺の流れがいいですよね。アクアを追いかけない、と決めるカズマの判断は彼らしい考えてのことだし。その上で彼だからこそできる秘策で決断をする。
ウィズとバニルの活躍が自然と入っていたのもよかった。この二人は好きなんですけど、表だって活躍するキャラではないですからね。いい感じの見せ場が読めて嬉しいです。

魔王軍の女幹部

あと、よかったのが、魔王の女幹部さんですね。15巻で出たばかりなのに、同人誌なみにかわいそうな感じがそそりますよね。
今巻でも、停滞すると思われる空気を変えて、物語を前に進める導き手としての役割を持ってました。
再登場しても、敵なのに今からかわいそうな目にあっちゃうんだろうな〜って思ちゃう時点で笑っちゃいますね。
アクシズ教の見せ場を作った点もなおよし。

ラストに向けて

ラストに向けて、どんどん動き出していくとこがワクワクしますね。
16巻のラストでとても大きな障害が立ちはだかりますが、それがまさかギャグで終わっていたあれが伏線として機能するとは思わなかった。
このままこのシリーズがどうなるか気になりますね。
ネットでは魔王を倒して最終回でしたが。魔王の娘という存在が続刊フラグのようにも読み取れます。

『幼馴染が絶対に負けないラブコメ』について

さて、今回紹介する作品は『幼馴染が絶対に負けないラブコメ』です。


幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)
著者:二丸修一
イラストレーター:しぐれうい
発売日: 2019/7/8
出版社: KADOKAWA
言語: 日本語
ASIN: B07SGP24NP

あらすじ
幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい。家は隣で見た目はロリ可愛。陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系と文句なしの最強である。
 ……でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる! 普通に考えたら俺には無理めな白草だけど、下校途中、俺にだけ笑顔で会話してくれるんだぜ! これもう完全に脈アリでしょ! 
 ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。死にたい。というかなんで俺じゃないんだ!? 俺の初恋だったのに……。失意に沈む俺に黒羽が囁く――そんなに辛いなら、復讐しよう? 最高の復讐をしてあげようよ――と。

表紙とタイトルがメチャクチャいい

まず、表紙とタイトルがメチャクチャいいですね。女の子が顎クイで余裕そうに見せてるんだけど、空いている左手を男の子の間に置き、口の端が引きつっている。
女の子が優位にみえて、じつは無理しているっていうのが読み取れる。
タイトルからして、この子が幼馴染なんだろうなってわかりますよね。
イラストレーターさんがしぐれうい。ホロライブのスバルさんのキャラクターデザインをしててさ。自身もVTuberをやってる方ですね。
絵が上手いのは知ってたんですが、ここまで読み取れる絵が描ける人なんだって知れてビックリしましたね。

恋愛の勝ちと負け

内容はアマゾンの評価を見る限りでは、賛否両論といった感じでしょうか。
今回の物語のきっかけであるフラれたから復讐を考える主人公に、感情移入できない読者が多かった。
僕も主人公の気持ちがわからなくて、前半読むのがキツかったですね。
ただ、三角関係の中にそれぞれのキャラクターどうしが認識している過去があって。それがそれぞれのすれ違いにつながっているってのがわかってからは面白かったですし。
最後の幼馴染は負けなかったけども、勝つこともできなかった、というのが、ザ・青春って感じがしてよかったですね。

個人的には、2巻が出るなら。新キャラを出すよりも、1巻の二人の掘り下げがもう少し欲しいなと思うのが正直な気持ちです。

では、次巻も追って報告いたします。



幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫) 文庫 – 2019/6/8
二丸 修一 (著), しぐれうい (イラスト)

ゾンビが佐賀でアイドル『ゾンビランドサガ』について

さて、今回は『ゾンビランドサガ』について紹介します。

ゾンビランドサガ SAGA.1 [Blu-ray]

2018年10月に放送のアニメ。

次のようなはなしです。

アイドルを夢見る少女、源さくらはオーディションを受ける当日、車に轢かれて死んでしまう。
それから十数年後、目覚めた彼女は自分がゾンビであることを知り、周りには同じようにゾンビになった少女たちが。
彼女たちの前に、幸太郎という男が現れる。
彼が言うには、佐賀を盛り上げるために、彼は少女たちをゾンビとして蘇らせ、アイドルとしてプロデュースしようと考えていた。
有無を言わさず、ライブ会場へと送られる7人。
そこはメタル系のライブであった。

一話と二話は、なんだこれはっ!?て感じなんですよ。ゾンビでアイドルってだけで、ただでさえ情報量が多いのに、メタル系のライブやラップをやらせることでさ。何やりたいかわからない。
しかし、三話でようやくアイドルの歌をうたいはじめていくうちにさ。彼女はそれでも生きようとしてるんだよっていうさ。応援したい感じになっていく。
その上でさ、7人のアイドル、それぞれのキャラの掘り下げ行われていくんですね。
作風としてはさ、キン肉マンや北斗の拳みたいな、笑っちゃうような状況なんだけど、シリアスって感じが面白いんだよね。

例えば、作中で雷にトラウマがある女の子がいるんだけどさ。あるイベントをきっかけに雷を克服するんですよ。そしたらさ、ライブシーンでさ。雷に打たれてるんだけど、ゾンビだから平気で、しかも雷をレーザーとして打つみたいなライブになるんですよ。普通だったらギャグシーンになるんだけど。ヒロインの葛藤やメンバーの想いを見るとさ。奇跡が起きたんだよ笑うんじゃねぇっ! みたいな空気でさ。笑っていいのか驚いていいのかわからない、けども言語化できない感動があるんですね。

見終わった上で、僕が読み取ったテーマがさ。たぶん、「終わったはずのコンテンツを復活させる是非」だと考えました。
まず、アイドルとは、ようはコンテンツとも読み替えられてさ。ゾンビは復活させる、あるいは延命させると考えられる。
さらにさ、『ゾンビランドサガプロジェクト』がさ。過去のコンテンツをゾンビ化させて、地方を活性化させるランドとつくプロジェクトと言ったらさ。どう考えても千葉にある舞浜ディズニーランドのことに決まってんじゃん。
復活したアイドルたちはさ。みんななにかしらの過去があってさ。それぞれの終わりがあった。その上であなたに時計の針を動かす権利があるんですか? みたいな問いを、マネージャーや主人公にするし。ついには記憶を失っていたけど、取り戻した主人公がマネージャーにするんですね。

それに対しての答えがさ。それでも、俺たちはお前たちの続きが見たい。たとえ変わったとしても変わってないとしても見たいんだっ! このメッセージ繰り返されている。

つまり、ゾンビランドサガは『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Forever』で描かれたテーマに既に答えを出してる作品なんですよ。

この作品、OPが完全に仮面ライダーを意識してますからね。チームの愛称が1号、2号だし。

なかなか面白い作品です。アマゾンプライムでも見れるので是非、2期もやるそうですよ。

【Amazon.co.jp限定】ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best (特典:新曲1MVの絵コンテ データディスク)

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  • アーティスト: フランシュシュ
  • 出版社/メーカー: エイベックス・ピクチャーズ株式会社(Music)
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
ねんどろいど ゾンビランドサガ 源さくら ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

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ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュみんなでおらぼう! ~ [Blu-ray]

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ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best

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  • アーティスト: フランシュシュ
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  • 発売日: 2019/11/27
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ゾンビランドサガウエハース (20個入) 食玩・ウエハース (ゾンビランドサガ)

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ゾンビランドサガ オリジナルサウンドトラックス

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現代版、千夜一夜物語⁉︎『鹿の子の本棚』について

ふだんはライトノベルの感想記事を書く当ブログですが、今回は久々に漫画の感想記事を書きます。その漫画の名は、『鹿の子の本棚』。


本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇 (リイドカフェコミックス)
著者:佐藤将
発売日: 2017/11/30
出版社: リイド社
言語: 日本語
ASIN: B077QGMHY3:

「他人の本棚を見るのはプロファイリングになる」思春期真っ盛りの鹿の子ちゃんとの心の距離を如実に感じる今日この頃。父・鳩作は愛娘の心を知るために無断で部屋へ侵入し、無断で本棚の蔵書を手に取る! そこは、思春期という言葉では片づけられない摩訶不思議なワンダーランド! 親の愛か、ただの変態か。父娘をつなぐ読書の冒険!! 『嵐の伝説』『アコヤツタヱ』でカルトな人気を博する佐藤将による超レア・プレミア本!!

父と子のすれ違い

この作品は思春期に入った娘の鹿の子との心の距離に悩む父、鳩作が娘の部屋に忍びこんで彼女の本棚にある本を読むという。少し変わった形式の短編集です。
面白いのが、小説でなく漫画であること。鹿の子の本を読んでいる時に鳩作の中に流れたイメージという体で漫画が展開されます。
そして、毎回すごい面白いんですよ。
SFや文学作品としてありそうで、かつ『ドグラマグラ』みたいにこれを読んでることを知られたら人格を心配されそうなタイプのキテレツな作品。
読み手であるお父さんにある程度、サブカルの素養があるところも、わからないものをわからないなりに頭のいい人が読み解いている感じが『テルマエロマエ』の主人公っぽくていい。
さらに、最後に娘さんがその短編で印象に残ったシーンで栞を描いてるとこもいいですね。
これにより、父と娘で作品の捉え方が違っててさ。だからこそすれ違い続けていることが強調されるんです。

時間が解決する千夜一夜物語

一話の段階で考えたことなんですけどね。たぶん、これ、千夜一夜物語なんですよね。
女性不信となった王が一夜を共にした妻を次々と殺すんだけどさ。ある日、その国の賢い女性が一夜につき一話、物語を語ることで1,000日目で殺す気をなくさせたというはなし。
つまり、この聞き手の王が父で話し手の女性が鹿の子。そして、娘の気持ちがわからない父という悩みはさ。朝日新聞の人生相談とかで何百回もされているベタなはなしでさ。既に決まった解決方があるんですよ。
それは、時間が解決するというもの。父親は無理して娘さんの気持ちを理解する必要がなくてさ。たぶん、娘さんの本棚を覗いてるうちになんだかんだで娘が彼氏つくって、大学卒業して、就職して、結婚してさ。
最後の最後で結婚式の前の夜に栞経由で何かしら悟って終わるんじゃなかろうか。

あくまで予想だけど。

では、また何か読んだら追って報告いたします。

本田鹿の子の本棚 天魔大戦篇 (リイドカフェコミックス)

本田鹿の子の本棚 天魔大戦篇 (リイドカフェコミックス)

本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇 (リイドカフェコミックス)

本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇 (リイドカフェコミックス)

『ワンワン物語』5巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『ワンワン物語』5巻です。


ワンワン物語5 ~金持ちの犬にしてとは言ったが、フェンリルにしろとは言ってねえ!~ (角川スニーカー文庫)
著者:犬魔神
イラストレーター:こちも
レーベル:角川スニーカー文庫
発売日: 2019/5/1
出版社: KADOKAWA
ASIN: B07NQ42SN7

あらすじ
念願叶って金持ちの犬に転生したロウタ。
魔王軍幹部・カーミラとリッチーをお屋敷の使用人に迎え、駄犬生活を取り戻したロウタの耳に飛び込んできたのは――
メアリの大親友・エリザベスの来訪と、〈勇者〉アルステラの調査派遣!
魔王軍退治は勇者に任せて、ペット生活は安泰! と思いきや……
アルステラは容赦ない魔物スレイヤーで、森の仲間たちが大ピンチ!?
「わふわふ(来るがいい勇者め。俺たちの逃げっぷりを見せてやるぜ!)」
アルステラの聖剣から仲間を守るため、ロウタは魔物たちを引き連れて、空前の大逃亡作戦を開始する!

どんな話か

犬が主人公の人外転生ものの第5巻です。
主人公のロウタは転生者。死の直前、来世はお金持ちの犬になりたいと願った。気づくと、その通りに犬として生まれているロウタ。
彼の願いは叶えられたかのように思われた。
しかし、数ヶ月後、ロウタは自身の異変に気づく。自分の身体が一般の犬より大きい。しかも顔も化け物のようにイカツイ。
なんと、彼は動物の犬でなく、魔物のフェンリルとして生まれていたのだ。
犬としての幸せな日々を過ごしていたのに、ふとした拍子に自分の姿が映るものをみたことでその者の本当の生まれを知る。まるで白鳥の子のような展開で物語は幕を開ける。
転生もののベタである超常の存在に願う際、その願いに思わぬデメリットが後で明らかになる、古典の猿の手から続くストーリーライン、《こんなの聞いていないよ!》。さらに、主人公は日常を愛する《平穏系》です。

私、能力は平均値でって言ったよね! 1 (アース・スターノベル)

私、能力は平均値でって言ったよね! 1 (アース・スターノベル)

彼は彼自身にチートを持っていることを自覚しているし、彼の周りのドラゴンや狼、魔女や剣士も認めている。
しかし、影で脅威を退きながらも、彼は犬としての日々を生きる。
1巻から4巻はそんな彼の日常を描きながら、この世界の悪役であり、復活するであろう魔王の存在をほのめかす。

5巻からある新キャラの登場で物語は大きく進展します。その上でこの作品のテーマもはっきりしてきました。

では、5巻の感想に入りましょう。

新キャラのアルステラ

今回、新キャラのアルステラが魅力的でしたね。ボクっ娘でヤンデレ、正義漢。最初は怖いし。
心理描写をのぞけばのぞくほど、後々の展開を想像して不安になっちゃいますね。
彼女を助けたいと思い、そのボルテージがマックスまで高まった時に救いのヒーローが現れる。その時のカタルシスはいいですね。

本来の自分

今回、シリーズ全体のテーマがはっきりしてきましたね。5巻ではシリーズでたびたび言われていたフシアナアイって言葉がやたらと使われてましたね。
この言葉は「お前の目は節穴か」っていう漫画によくあるセリフからくる造語。しかし、5巻では主人公を飼う家族でなく、アルステラが女の子だと気づかなかったロウタこそがフシアナアイでないかと言われ、オチがつく。
この辺が日常系のサザエ家でいじられるカツオみたいなギャグ締めに見えるんですけどね。
これは、ロウタを優しい犬として見てるメアリたちのが彼のことをちゃんと見てくれてるんじゃないかっていう逆説的なメッセージなんですよ。
しかも、今回、敵だったカーミラとリッチーがお屋敷の使用人としての居場所を手に入れているし。アルステラも、今回ある経験による自分が本来なりたかった自分を見つけますね。
しかも、彼らが本当の居場所、自分を見つけられた場所は都市という社会から離れた森の奥なんです。
さらに言えば、魔王っていうのも胡散臭くてさ。今回の話ってさ。歴史というのは人工物だから事実でないって話でさ。
この辺を突き詰めていくとさ。たぶん、魔王や歴史というのが誰かが作りだしたものでさ。その人工物と自然を取り戻したロウタたちが戦って本来の状態に戻すみたいなさ。もののけ姫みたいな感じになるんじゃないかな。

あくまで予想ですが。

では、次巻も追って報告いたします。


『東京クロノス』について

ネタバレ注意!

さて、今回紹介する作品はこちら、『東京クロノス』です。

TOKYO CHRONOS (PSVR専用)- PS4

『東京クロノス』とは、VR機器で遊べるサウンドノベルゲームです。『弟切草』や『ひぐらしになく頃に』のようなノベルゲー。それがバーチャル空間でできる。

最初聞いた時、バーチャル空間内でわざわざ文字を読むというのが、いまいちピンと来てなかったんですが。やってみたらかなり面白い。
VRゲームの新しい形を見ました。

今回はVRゲームの新しい形とネタバレありのストーリー解説に分けて語っていきます。

VRゲームの新しい形

この作品は、VRゲームとしての完成度が高い。僕らがバーチャル空間でゲームができると聞いた時に、期待したようなものが用意されているし、それ以上のこの手があったかと、膝を打つような機能が多い。
当ブログではこの点について3つにわけて話します。

文字のUIが視点に応じて変わる

まず、ゲームをはじめてビックリしたのが。文字のUIが視点に合わせて動くことですね。ミステリーで360度見渡せますから。何かあったら周囲を見回しながら進めるとですね。
キャラクターがしゃべったり、主人公が地の文を流すときにその文字がちょうど読みやすい位置に来てくれるんですよ。
この文字のUIが動くってことに感動する感覚はやってみないとわからないです。
プレイヤーが操作中に困るであろう小さな問題を解決してるところに驚いたあの感覚は。はじめてくら寿司に来たとき、食べたお皿をレーンの下に入れると、ガシャポンがまわせるってサービスを見たときを思い出しました。

360度見渡せる

そして、360度見渡せるバーチャル空間であること。これは当たり前なんですが。ミステリーというジャンルで、今回の舞台においてとても重要です。

このゲームでは、僕らは誰もいない渋谷に突然放り出され。わけもわからず探索しなければならない、という。不安感を煽る導入からはじまります。
これにより、渋谷が再現されている。本当に渋谷にいるみたい、という魅力もあるんですが。
この作品では、密室にいるという感覚が物語に緊迫感を与えています。

ホテルやファンシーショップ、書斎。そういった密室にいるって感覚がすごいリアルなんですよ。いろんな小道具もあるし、事件があったからといって、そこに集まったときのいい具合に人物がばらけているところもさ。エレベーターの中にいるような緊張感があります。
そこで、犯人は誰だ、どうしてこんなことになったとみんなで話し合ってるときに、この狭いなって感覚が、追い詰められたときにスゴイ手汗をかくくらい焦るんですよ。

そして、そういう緊迫感があるからこそ、外に出れたときに感動する。渋谷は少し水彩画みたいにホントっぽいんだけど、ちょっと景色がボヤけた感じだからさ。じつはリアルな渋谷じゃないんだけど、安心するんですね。

こうやって、外と密室をうまく使い分けることで物語にメリハリをつけています。

キャラクターの視線

さらに、肝となるのがキャラクターの視線です。このゲーム、集団のなかの個々人のキャラクターの表情が細かい。
しかも、そのキャラクターたちがリアルで僕らが話すときの距離感でしゃべる。
序盤、幼馴染の女の子がやたらと近い距離でしゃべってくるんですけど。ふだん異性と話してるときの距離感とは違いすぎてて、すごい怖いと思いましたよ。

そして、集団からの表情や視線の変化もすごい。
なにかものが落ちてきたとか、音がするねとか、あの掲示板をみてとか。
そういうときの気づいたキャラがいっせいにあっち向いたから見るってときの感覚はすごい一体感がありますよ。
集団で話していくときの表情の変化も見どころです。
そもそも東京クロノスって、いわゆる脱出手段が壊された閉ざされた山荘のなかで、事件が起きたから謎を解こうみたいなはなしなんです。
だからこそ、集まって話し合うみたいな場面もあるんですが。話の流れに応じて、それぞれのキャラクターがいろんな表情をする。
だから、彼らが生きているかのような錯覚をうける。
そのうえで、だんだんそれぞれのアリバイについて考えようってなっていくとさ。だんだん、主人公が怪しくねってなってさ。
俺に何か言いたいことでもあるのかのような顔でこっち見てくるんですよ。
そういう疑いの目を向けられるのが、ゲームの世界でもわりとリアルと同じくらい嫌な気分になります。

ここまでが、このゲームでの機能的な部分での魅力です。ここまではネタバレではありません。ここから、ゲームをしたことを前提でこんな話だったよね。テーマはこれだよね、といったはなしをします。
こっから先はできればプレイしてから読んでいただきたい。まず、話のジャンルとしてミステリーだからこそ、ネタバレを食らうと面白さが半減してしまう可能性があります。
それに、再三言ってますが、これはバーチャルでしか体験できない仕組みを持った作品です。これから、それが何かを話すんですが、それについてはまず犯人はだれか、だれがなにをしてたのかわかってる状態でプレイすると同じ感覚を共有できないかもしれない。
それはもったいないです。
このゲームでできる体験は今後、いろんな未来に応用できる可能性があり、それはVR空間でのノベルゲームだけにとどまらない。
だからこそ、今、体験すべきものです。

とりあえず、プレイにあたっての注意点もいくつかあげます。

一つ、プレイするにはPS VR、オキュラスリフト 、オキュラス go 、オキュラスクエスト、などの VR機器が必要となります。昔は、機器一つで8万。PCも含めると20万でしたが、PCにつながない VR機器、オキュラス goの登場により、3万円前後でプレイできます。

二つ、プレイするときは十分な時間をとること。このゲームは6〜8時間でクリアできます。
しかし、できれば一気にプレイすることをオススメします。このゲームは閉じられた空間でのサスペンスを楽しむものです。
なので、ゲームの途中で仕事だったり、別の用事をこなしてから、途中から再開すると、プレイ中に感じていた危機感が抜ける恐れがあります。

三つ、プレイ後は十分休憩できる余裕をもつこと。本作では VR酔いはありません。しかし、ふつうのゲームより精神的な疲れが出ます。たとえるなら、劇団四季でライオンキングを観たあとくらい、アイドルのライブを見終わったあとくらいの疲れがあります。できれば、プレイが終わったら仕事がある日でなく。ゲームが終わったら、家でゆっくりするだけ、といった日にやることをオススメします。

それでは、1ページぶんの空らんののち、ネタバレにはいらせていただきます。

【正規輸入品】Oculus Quest (オキュラス クエスト)- 128GB

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【正規輸入品】Oculus Quest (オキュラス クエスト)- 64GB

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PlayStation VR“PlayStation VR WORLDS

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TOKYO CHRONOS (PSVR専用)- PS4

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ネタバレ注意!?
















ストーリー解説

ミステリーとして魅力

 まず、ミステリーとしての魅力について語りたい。本作は「わたしは死んだ、犯人はだれ?」という謎に答えを出すものです。

 主人公は目を覚ますと渋谷のビルにいることに気づく。外に出ると、様子がおかしい。その渋谷は誰もいない無人だった。
 探索していると、主人公の幼馴染の5人と再会する。なぜ、主人公を含めたこの6人が集められたのか。不思議に思うもつかの間。
 渋谷の電光掲示板に文字が。
「わたしは死んだ、犯人はだれ?」
 ここでエピローグが終わる。

 そして、この世界がクロノス空間と呼ばれるものであること。何らかの目的を達成しない限り、ここから出られないことが明らかになる。

 そのうえで、先ほどの問いに戻る。
 この問いにより、6人のなかのだれかが犯人で、「わたし」はそのだれかに殺されたらしい。その犯人はだれかというはなしになります。

 そこから、この世界を調べるためにチームに分かれての探索。ここでタッグを組むことになった女の子と交流。プレイヤーは彼女の人となりを知る。そのうち、彼女の過去、抱えている問題を知り。彼女を助けたいと考えるようになる。

 しかし、当然のことながら、その子は消えちゃうんですよね。

 このへんの誘導が上手いんですよ。

 そもそも、視点人物である主人公と幼馴染たちは一部、記憶が欠落してですね。しかも、小学校のときは仲がよかったけど、クロノス空間にはいる直前の交友関係の記憶がない。
 だから、仲がいいんだけど、ちょっと距離のある関係性。
 そのうえで、お互いに不信感がでるような先ほどの質問が彼らになされる。
 そんな状態で、最初に仲良くなる女の子が、東国ユリア。
 天才キャラでぬいぐるみが大好き。今回の登場人物の中で一番オタク受けしそうな設定とデザインのキャラクター。

 このゲームって、VRゲームの購入層に多い。PCが好きで友達が少ない人には正直言って馴染みづらい環境なんですよね。
 幼馴染たちの昔はすごい仲良かったけど、今は疎遠な感じは『あの花の名前を僕は知らない』みたいな状態でさ。
 そこで、彼らと渋谷の外でバーベキューしなきゃいけないんですよ。そこ、ちょっと抵抗あるんですよね。
 そういう人は、東国ユリアにちょっと救われるし、あの子が死んだときにどうして彼女が死ななきゃいけなかったんだって思ってさ。
 ゲームの世界観にのめりこむんですね。

 この流れは絶対オタクを意識したつくりになっています。その証拠に、その次に死んでしまうキャラが蔭山哲。6人組のなかで第一印象が一番陰キャな子です。
 彼は影が薄く、本人もそれを気にしている。そんな彼が変わることを決意し、なにか秘密に気づいたあたりで、やはり死んでしまった。
 このへんでさ、蔭山君が主人公に隠れてこっそりなにかやっていたり。明らかに主人公のいない間になにかしらの会話をしていたようだってわかる場面が増えてですね。
 絶対、これ主人公以外の視点があるんだろうなって薄々気づきました。

 そして、さっき話してた。主人公がアリバイの関係で、犯人だと疑われる場面に映る。
 ここで、主人公が捕まるんじゃないかと思ったときに、序盤で主人公とめちゃくちゃ距離の近い女の子が助けてくれるんですね。

 この子の名が、桃野夕。

 彼女は主人公を連れて一緒に逃げてくれます。そして、何日間かのあまあまの同棲生活が始まる。
 ここだけ切り取ると、すごい魅力的なんですよね。このゲームではこの子に関してはやたらと可愛いあの子と距離が近い、みたいなシーンをVRで上手くやっている。
 ギャルゲーや乙女ゲーがVRで出たらこういうことができるんだろうなって期待したくなるようなものになっていました。

 しかし、このシリアスな展開からの唐突なあまあまな展開ってのが、スゴイ怖いんですよね。

 そもそもさ、このヒロインは、主人公が無人の渋谷を探索しているときに最初に出会う女の子です。

 その時の登場シーンが、渋谷の駅前で、遠くから女の子をみつける。
 その子は、こちらを向いたと思ったら、走って近づいてくる。

 その時の近づき方がさ、遠くからだんだん大きくなる近づき方じゃなくてさ。
 3回くらいに分けてじょじょに大きくなって、最後、、主人公の目の前に現れて抱き着く。
 明らかに登場時のエフェクトが、ホラー映画のそれなんですよ。貞子さんが井戸から出てきて、テレビから襲い掛かってくるような溜めの入れ方してるんですね。

 仕様かと思ったんですけど、後で、遠くから近づいてくるモーションのキャラが出てくるから、狙って入れた演出であることがわかるんですよ。

 そのうえでさ、やたら距離近いじゃん。絶対、ヤンデレなんだろうなって思ったら案の定だよ。

 逃亡しているうちに、このままじゃいけないと考える主人公。そんななか、主人公のことを突き放すような態度をとっていた女の子、二階堂華怜が二人のもとにやってくる。
 逃げることを勧める桃野夕。話がしたいと言う二階堂。
 ここではじめて選択肢が出ます。
 もちろん、桃野の選択肢を選ぶとバットエンドになるんですね。
 
 ここで、ある事実が明らかになり、桃野は不慮の事故で消えてしまう。

 こっから、怒涛の勢いで事件が起き、いろんな真実が明らかになり、最後にすごい後味の悪いバットエンドになる。

 そして、2週目。
 同じように主人公の視点で物語が進むも、途中で視点が切り替わるようになってさ。
 これにより、ようやく話の全体像が分かり、ハッピーエンドになっていくという展開になる。

 このへんの世界観に没入させるための導入はスゴイ上手く作ってあるんですよね。
 さらに、こういったストーリーが面白いってだけでなく、テーマ―をもったものになっています。

多数決

 まず、気になるのが、本作はやたら多数決をする場面が多い。
 主人公がみんなから疑われたときも、多数決によってその疑いは決定的なものとなった。
 ほかにも、主人公たちの過去も、多数派による少数派の排除が起きていて、多数決に対して否定的な描写が多いんですね。
 しかも、主人公の推理を邪魔するもう一人の探偵役というミステリーの定番中の定番のキャラが出るんですけどね。
 その子は政治家の息子。彼も国を背負うにふさわしいリーダーとなるために多数の幸福につながる選択を良しとする人物でした。
 しかし、主人公の言葉により、それが正しいのか常に葛藤している。
 このへんから、民主主義批判をしているとも考えられます。
 この民主主義の批判とは、よくある愚かな民が優秀なリーダーを選べるのかってことではないんです。
 これは閉じられた空間で、つながりがなくなった人々から挙手を取ることで正しい答えは出るのか、という問題提起なんです。

 たとえば、もうすぐ参議院選挙です。
 いろんな人たちが選挙に行っています。しかし、若者の投票率が低いことが嘆かれている。
 これにより、政治家は高齢者にむけた施策しかとらなくなるから、若者は投票に行こうという話が一般論としてあります。
 しかし、これもおかしなはなしです。
 僕たちは高齢であろうと、若者であろうと、日本に住んでいます。
 若者に不利な政策をすれば、生産性は落ちて、高齢の方が今受けているサービスがなくなる可能性だってあります。
 年金を守ってくれる人に投票して、その人が当選し、現在の年金制度が守られて、未来に問題を先送りしたとしても。
 若者が労働意欲を失い、働き手がいなくなればそのお金を使う先がなくなるかもしれないし。お金自体に価値がなくなるかもしれない。
 片方を立てればこっちも経たずというもので、僕らは全体バランスを見たうえで全員がウィンウィンになれる選択をしなければいけないんです。

 こうした、全員が幸せになるために、全員が全体のことを考えなければいけない。
 その手助けが、VRならできる、というのが本作のテーマです。

他者理解のプロセス

 この作品は、幸せな結末を得るためには、わたしとあなたが理解しあわなければいけない、というメッセージがあります。
 本作の真のハッピーエンドにたどりつくための条件として、全員の視点ですべてのルートのクリアが必須条件になります。
 これにより、ラスト、主人公が真犯人(?)と対峙する際。
 多数の視点から、その人の人物像を知った結果、今回、クロノス空間を発生させた引き金となった事件の真実にたどりつけるという流れになっている。

 このへんの流れが理想的な他者理解のプロセスとなっているんです。

 よく、VRの可能性として、別の人の見ている景色を見ることで、「私の見ている景色とこの人の見ている景色は違う」というのが当たり前の感覚になると言われています。

 この感覚を、奇怪な事件の全容をVRで知るというミステリーゲームで追体験できるようになっている。
 このへんがVRの可能性を提示した作品としてスゴイ評価すべきところです。

 東京クロノスが流行り、そのへんの感覚を体験すると、これ使えばこんなことができるよねってのがいろんな人が考えられるようになるんです。

 たとえば、今の時代、カメラはどんどん小型化し、最終的にはコンタクトレンズくらいになるか。目に埋め込めるみたいなこともできるかもしれないという話があります。

news.livedoor.com

 これを使えば、交通事故の時にドライブレコーダーでその様子を記録できるように。殺人事件があった時に、被害者と目撃者が見た映像を残すことができます。

 そして、裁判の時に裁判員の方にVRで目撃者、被害者、加害者の視点を体験したうえで、その人がその時どう思ってどう行動したかをその人の立場に近い状態で考えられるかもしれません。

 他にも、よく経営者は現場の気持ちがわからないという言葉があります。数字だけを追うと、その現場での従業員や管理者の事情が見えてこないってものですね。かんぽ生命の不正販売も現場と上との齟齬も原因の一つと考えられます。むかしは下積みから始めることで、上に立つものも下の人の悩みがある程度わかるようになっていました。しかし、現代では、下の仕事がどんどん新しくなっていて、上のほうが知らない事情も増えたりする。セブンイレブンとかどんどん新しいサービスが増えていますよね。だからこそ、ホリエモンさんなどが下積み不要論を発信しているんですね。
 このへんも、VRで定期的に全体の仕事を手軽に体験できれば、個々人の作業が全体でどういう立ち位置になるのかの理解につながるかもしれません。

 こういうふうに、VRによる相互理解のプロセスの可能性がゲームで体験できる。

 オススメのゲームなんでまだやっていない方はぜひやってほしいです。

TOKYO CHRONOS (PSVR専用)- PS4

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渋谷隔絶 東京クロノス (講談社タイガ)

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【正規輸入品】Oculus Quest (オキュラス クエスト)- 128GB

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『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。』です。


お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。3 (ファンタジア文庫)
著者:凪木エコ
イラストレーター:あゆま紗由
レーベル:富士見ファンタジア文庫
発売日: 2019/4/20
出版社: KADOKAWA
ASIN: B07PRS72YR

あらすじ
1学期も終わり夏休み。充実したおひとりサマーバケーションを過ごすために綿密な予定を立てる姫宮春一を襲う新たな天敵。「姫宮さん、一緒に遊ぶ予定を立てましょう!」「やだ」高校受験日に助けた美少女お嬢様、白星有栖の超絶アピールが炸裂。おひとり様エネルギーが減らされる状況を毎度の如く春一は許さない!…のだが、おひとり様理論も通じない初めての強敵。おはようからおやすみまで有栖一色に染まり始め!?最後の手段として春一は、華梨たちクラスのリア充が開くキャンプに参加。協調性のなさアピール作戦を開始する―!ひねくれボッチートな青春ラブコメ、ソロ充は夏こそ輝け!!

『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。』とは

この作品は次のような話です。
一巻、主人公の姫宮春一は、おひとり様を楽しむことで充実した毎日を送っていた。しかし、高校生になってから、クラスの人気者である美咲華梨から、友達がつくれないぼっちであると勘違いされ、一緒にクラスの親睦会のまとめ役をやることになる。
美咲は主人公を変えてあげようと、アドバイスするも、彼は彼女の想定以上の成果を上げる。これにより、美咲は彼が性格上の問題で隠キャを演じているのでなく、好きだからこそおひとり様をやってることを知る。
お互いの価値観がぶつかるなか、親睦会ではある問題が起きてしまう。
この問題を、姫宮春一が解決することで、この主人公は変わり者だけどやるときはやる男だなって読者は思います。

特に、文章で心理を描写できるライトノベルだからこそ。主人公の行動のうちに秘めるこだわりに共感できてさ。一巻で彼のことを最初から好きになって読むことができます。

2巻、この巻では、主人公は1巻で対立していた洞ケ瀬夢乃とひょんなことから交流を持つ。
それにより、彼女の夢を主人公は知ることになり、学園ものの王道でもある。将来の夢とはなにか、という問いがキャラクターたちになされる。
そして、夢と関わりのある進路で、洞ケ瀬と彼女の親友との間でケンカが起きる。ここで主人公と洞ケ瀬との間でのやりとりで、彼の自分の生き方に対する考え方がどういうものか読者に伝わります。

そして、2巻のラストでなにやらラブコメのにおい。一巻で主人公に告白したヒロインが再登場です。名前は白星有栖。はたして、3巻はどうなるのか、を今回話します。

新キャラの白星有栖

白星有栖、高校1年生。
彼女は高校受験のとき、主人公に助けられたことをきっかけに彼に対し、恋に落ちる。
そして、一巻のエピローグで彼に告白するのですが、フラれるんですね。3巻で万を辞しての登場。
1、2巻は主人公がどういうやつかを描くための巻でしたから。準備を整えた上で登場したキャラです。
3巻は主人公の恋愛観を描くための巻であると同時に、彼女を中心とした巻でもある。

3巻、白星有栖視点での主人公との邂逅、惚れるエピソードについて語られた後、主人公が夏休みを満喫するための計画を立てていた。我ながらに充実したソロ充の夏の計画を立てる主人公。もちろん、そうした計画は計画どおりにいかないもの。

2巻のラストで再登場した白星が彼のアルバイト先にも現れ、彼の日常にも関わっていく。

主人公にアタックする彼女は可愛いです。さらにヒロインたちを巻き込んでのカラオケで、彼女の主人公に対する想いを強調、主人公とほかのヒロインたちの距離感を再確認させた上での今巻のメインであるキャンプになるわけです。

キャンプ

ここが一番面白かったですね。王道中の王道なんですが、隠キャなキャラがなぜかアウトドアでメチャクチャソロを楽しむって意外と多いんですよね。
実際、ギャップがあっていい。
非日常てきな空間での集団行動ですから、主人公の特異性も伝わるんですよね。

今後の期待

そして、3巻のラストで急展開が起きる。
これは続きが気になります。
3巻全体で考えると、白星ちゃんは主人公たちに変化を起こす存在だったんだなと思います。
そもそも、白星有栖って名前がまず意味深です。
暗い中でも光る星。つまり見えない暗闇を照らす光ということ。この子の登場でいろんなことが明らかになるということ。
そして有栖といえば、不思議の国のアリスでしょう。有名なおとぎ話。少女のアリスが夢の国を探検し、最後には夢から覚める話だ。
これは彼女の誤解が解けるにもかかってるし、3巻のラストの急展開にもかかっている。
つまり、夢から覚めて、主人公は目下の問題について見て見ぬ振りはできないということです。
4巻で今回明らかになったことに対して、主人公がどう行動するかが気になります。

では、次巻も追って報告いたします。

お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。3 (ファンタジア文庫)

お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。3 (ファンタジア文庫)

お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。 (ファンタジア文庫)

お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。 (ファンタジア文庫)

お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。2 (富士見ファンタジア文庫)

お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。2 (富士見ファンタジア文庫)

『友人キャラは大変ですか?』の7巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『友人キャラは大変ですか?』の7巻です。

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友人キャラは大変ですか? (7) (ガガガ文庫)

著者:伊藤康

イラストレーター:紅緒

レーベル:ガガガ文庫

発売日: 2019/6/23
出版社: 小学館
ASIN: B07SWBYW6D

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あらすじ

VS魔神編、クライマックス!

連絡の途絶えたシズマを追って、異界に突入することになった火乃森龍牙と仲間たち。

もちろん、友人キャラの俺も同道している。
なんてったって、シズマは俺の息子(育ての意味での)。普通に心配なのだ。

異界の意外な姿に驚くのも束の間、俺たちはキュウキ陣営の襲撃を受ける。

ええい、ここが正念場だ!
第三部以降ややこしくなっちまったが、元凶のキュウキをぶっとばせば龍牙の異能バトルストーリーはめでたく終了、俺の本来の居場所(日常パート)も取り戻せるって寸法よ!

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もくじ

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**『友人キャラは大変ですか?』とは

 『友人キャラは大変ですか』とは、次のような話です。

 主人公の小林一郎は、主人公キャラの友人キャラに憧れる男の子。彼は自分を友人キャラとして立たせてくれる主人公キャラを求めていた。そんな彼が見つけたのが、火乃森龍牙。

 龍牙はスポーツ万能で成績優秀。しかし、クラスのみんなとは一歩引いていて、なにか秘密を抱えている。その秘密は、人間界を密かに脅かす異形の軍団、奈落の使徒。彼らを倒すための異能を受け継ぎ、戦う血の運命にあることだった。

 龍牙の秘密を知った小林は影からその動向を探りつつ、クラスで孤高であろうとした龍牙の友人キャラとなった。

 しかし、ひょんなことから龍牙の秘密を知っていることが本人にバレてしまう。すると、龍牙は小林が知らなかった更なる秘密を打ち明ける。

 なんと龍牙は女の子だったのだ。

 これにより、彼女の友人キャラでいるために龍牙にしていた行為の数々が彼女の彼に対する恋愛感情につながっていたことも明らかになる。

 それにより、小林は龍牙の彼氏をすることになってしまう。

 さらには、龍牙の仲間たちも小林に好意を寄せるようになり、しかも小林自身には内なる能力があることも明らかになる。

 はたして小林は友人キャラに戻れるのか、という話です。

 

 面白いですよ。切り口が今までのラノベであまりないタイプ。だからこそ、次どうなるかが予想しづらい。そして、主役の抱えている悩みはラノベ的でもある。

 

 自分は主役になりたくない。だけども、ワクワクする物語に立ち会いたい。キノの旅からはじまり、涼宮ハルヒ、氷菓と続いていく傍観者でいたい主人公の系譜。

 

  それでいて、冷めたような人間というわけでなく、立ち振る舞いがコミカルでだれかのサポートに情熱を注ぎたいキャラだからこそ好感が持てていいですね。

 

 メタ的な立ち位置のキャラが主人公なので、個人のふるまいが全体に影響を与える系の話かと思いきや。アクションもしっかり描写できています。

 

**魔神との最後の戦い

 今回、5巻で混戦を極めた魔神編もいよいよまとめに入っていった形となりますね。

 こんがらがっていた問題が次々と解決していく。

 そして、さまざまなキャラクターたちどうしで起きていた小さな物語が一つの大きな物語に向かって集約しようとしている点はとてもカタルシスを感じます。

**異界と人間界

 今回、小林たちは異界に行くことになります。

 このへんが、この作品特有の予想とは違うことが起きるコミカルな展開だけでなく。

 8巻からの展開を見越しての世界観の構築のための展開にも見えます。今まで、異界は話には出ていても、どんな世界なのかは語られていなかったからですね。

 だから、小林に異界に直接行かせることで、次の舞台の世界観を整えたんでしょう。

**小林と阿義斗、阿義斗と龍牙

 今回、小林と阿義斗、阿義斗と龍牙の違いが決定的となる巻となりました。

 阿義斗は、龍牙と同じく小林が認めるほどの主人公気質であり、小林と同じ、裏側から世界を動かそうとする存在です。

 似た性質を持つからこそ、彼らに別の道や彼ら自身の本質を問いかける存在となる。

 龍牙は主人公にふさわしいのか。力を持ちながら、龍牙に主人公を求めることは正しいことなのか。

 この辺に対し、小林たちがセリフでなく行動で示せたからこそ感動するんですね。

 しかし、まだまだお互いにすれ違いがあるよねってところをギャグで見せることで、そろそろ次の巻からはその辺の話をしたいよねって感じにしてますね。

 

 では、次巻も追って報告いたします。

 

 

友人キャラは大変ですか?7 (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか?7 (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか? (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか? (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか? オフコース: オフコース (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか? オフコース: オフコース (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか?3 (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか?3 (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか? (6) (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか? (6) (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか?5 (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか?5 (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか?4【SS付き電子特別版】 (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか?4【SS付き電子特別版】 (ガガガ文庫)

 
友人キャラは大変ですか?2 (ガガガ文庫)

友人キャラは大変ですか?2 (ガガガ文庫)

 

 



 

『異種族レビュアーズ』の3巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、まさかのアニメ化『異種族レビュアーズ』の3巻です。


異種族レビュアーズ 3 (ドラゴンコミックスエイジ)
漫画家:masha
原作者:天原
レーベル:ドラゴンコミックスエイジ
発売日: 2019/7/9
出版社: KADOKAWA
ISBN-10: 404073257X
ISBN-13: 978-4040732572

あらすじ
ヤりまくれるなら、私は貝になりたい… 絶好調××店レビューコメディ!

2020年冬、まさかのTVアニメ化決定!!!!!!!(マジです)

もちろん本編でもフルスロットル!
クリム君を狙う魔女のお姉さんが登場…もなんのその、構わずイきます×××なお店!ケンタウロスやレプラノーム、はたまた魚介類転生専門店まで!?異種族レビュアーズは今日も往く―――。

『異種族レビュアーズ』とは

 異種族レビュアーズとは、ファンタジー世界の風俗を面白おかしく考察して描いた作品です。
 ファンタジー世界での風俗を描いた作品。ドラゴンクエストだと、パフパフというものがありますし、ゲームの同人誌だと。その世界の風俗で働いてみたいな作品はあります。
 ファンタジーで有名なゲームオブスローンにも風俗描写がありましたね。
 この作品の面白いのが、異世界にどんな風俗があるのかってのを、魔法があるならこういうことできるよねとか、こういう異種族がいたらこんなお遊びができるよねってことが面白く描写されている。
 まず、第一話は次のように始まります。

 人間の冒険者、スタンク。風俗好きの彼は今日もお気にいりのエルフと遊んでいた。
 満足げに店を出る彼、そんな彼を見て、エルフの冒険者のゼルは引いた表情を見せる。
 ゼル曰く、今、スタンクと遊んだエルフは500を過ぎた高齢。
 同じエルフのゼルにとってはババアであった。
 しかし、そんなゼルは人間のスタンクにとっては50歳過ぎのババアのミツエが働く人間の風俗店の常連であった。

 場所は酒場に移り、お互いの選ぶ風俗嬢、通称サキュ嬢に対する価値観の違いでぶつかる二人。

 納得のいかないスタンクはたまたま酒場で飲んでいた冒険者、獣人のブルースとハーフリングのカンチャルにも意見を募る。

 ここで、500歳のエルフと50歳の人間に対するレビューが描かれたページが1ページまるまるで出ます。
 これが完全にファミ通のレビュー記事みたいになっているとこも面白いんですね。

 結果はなんと500歳の人間の圧勝で唖然とするスタンクであった。

 ここまでが本作の第1話。じつはこの1話がもともとは読みきりでさ。あとから連載として2話、3話と描かれるようになります。
 この連載に移行するにあたっての2話、3話が上手いんですよ。

 まず、2話。1話の時に冒険者を集めて比較レビューの紙を描いたスタンク。
 2話になると、そのレビューが酒場の冒険者にとって人気の記事となります。
 それにより、冒険者以外の臨時収入を得たスタンクはそのお金で新たなサキュパス店へと赴くのでした。
 さらに、ここで酒場で働く翼人種のメイドリーが主人公たちを傍観者視点でみつめるヒロインとして出している。
 この2話で、この話は異世界の、いろんな種族の風俗をレビューしていく話だよって方向付けをしているんですね。

 さらに、3話。ここで、第2の主人公、天使のクリムが登場します。
 彼は両性具有。男の子でもあり、女の子でもある存在です。
 クリムはひょんなことから天使のわっかが壊れてしまい、地上に落ちてしまう。
 落ちた先でモンスターに襲われ、あわや殺されかねないところをスタンクに助けられます。

 彼の戦う姿を見て、裏の顔を知らないクリムは腕利きの冒険者である彼らに自分の身を守ってほしいとお願いします。
 
 しかし、彼らは異種族レビュアーズ。冒険の帰りに風俗による予定だった彼らはそのままクリムをお店に連れていきます。

 これにより、制の喜びを知ってしまったクリム。その後もなし崩しにレビューに協力することに。

 彼の立ち位置はシリーズでの第2の主人公。当ブログで何度も言っている”新参者”に当たるキャラです。

 ”新参者”とは、ある一定の決まったルールが存在する集団の中に外からやってくるキャラクターのことです。

 ”新参者”はその集団の中ですでにできているルールをおかしいと指摘します。
 それは今、この漫画を読んでいる読者が思っていることである場合が多く、読者に一番近いキャラなんです。

 そんな”新参者”は2種類の行動をとります。その2種類を、僕の場合はキムタク主演の『HERO』に出てくる久利生公平と、『けいおん』の中野梓ことあずにゃんで説明しています。

 久利生公平とは、キムタク主演の人気ドラマ、『HERO』に出てくる主役キャラです。
 このドラマでクローズアップされるのが検事。世間では刑事ドラマではエリートがやるお堅い職業のイメージ。
 そんな世界にジャンバーを羽織ったいかにもチャラいキムタクが扮する久利生公平がやってくる。
 組織内のキャラクターたちは型破りな彼のことを疎むも、彼の事件に対してまっすぐに向き合う姿勢に感化され、組織が変わっていく。

 あずにゃんは、『けいおん』に後から出てくる後輩キャラです。
 新入生歓迎会で唯たちの音楽を聴き、そのうまさに驚き、彼女にあこがれを抱いて入部する。
 しかし、軽音部では放課後にティータイムを楽しむ部活だった。
 真面目に音楽活動をしたいと考える彼女にとっては、唯たちの部活ゆるい空気にいい感情を抱いていなかった。
 しかし、彼女たちと時間と空間を共にするうちにその空気感に染まっていく。

 今回のクリム君の立ち位置はあずにゃんです。

 天使であるクリムも、はじめはスタンクたちに対しては否定的です。
 そんな彼がなし崩し的に風俗に連れられる。
 しかし、しだいにスタンクたちと苦楽を共にしていくことで、自分の意志で積極的に参加するようになる。

 『異種族レビュアーズ』はクリムを出したことで。穢れの知らない男の子がひょんなことから大人の世界に連れてこられちゃうんだけど、それにより彼自身が成長していくというドラマを作っている。

 実際、1巻はスタンクたちが風俗レビューに駆り出すときに連れていく仲間たちのキャラ付けを行い。2巻からはクリムの成長を描いているという大筋ができています。
 そして、2巻のラストでは、いよいよクリムのかけた天使のわっかに言及するキャラが現れ、キャラクター個人個人の話から世界観を描く大きな物語に変わろうとしています。

 では、3巻の感想に移りましょう。

世界観を広げるための短編

 今回気になったのが、世界観を広げるための短編が多かったことですね。
 3巻では、セリフのなかにできるだけ自然にこの世界でのバックグラウンドを説明しようとする場面が多く、知能指数が高いことがわかりやすい話が多いんですよ。
 一応、1巻、2巻でもセリフ量がワンピース並みのページがあるんですけどね、作者の性癖がわかる絵でその先や設定までを想像させるグッとくるコマが多いんですよ。
 今回、エロは確かにあるんだけど、このえっちぃシチュを象徴とするような一場面を描いた絵って感じじゃないんですよね。
 だから、1巻分かけて、このシリーズの大きな物語を書くための伏線を張るための巻というのが個人的な印象です。

つまり、千と千尋の神隠し

 ネットで3巻の続きが読めるんですが。
 最新話と、3巻までの流れを見たうえで考えられるのが、たぶんこのはなしって『千と千尋の神隠し』になるんじゃないかなというのがぼくの予測です。
『千と千尋』とは、宮崎駿さんが監督するジブリ映画です。
 主人公の千尋は、豚に変えられてしまった両親を元に戻すために、神様が通う遊郭みたいなところで働きます。そこでの経験を経て成長した彼女は、様々な事件の後に父と母親を助けて異世界から現実の世界へと帰っていく。

 この千尋がこの物語の第2の主人公であるクリムだと考えられるんです。
 彼も自分の親的な立場の人が起こしてしまったある事件によって、天使のわっかをなくしてしまいます。
 戻るべき天界が、千尋にとっての帰らなければいけない現実世界と一緒なんですね。

 そして、最新話によると、クリムにとっての上司をなんとかしなければいけないらしいんですよね。
 たぶん、このへんが終盤でカギになっていてさ。それを何とかするためには、クリムの成長がカギになるってはなしになるんじゃないでしょうか。

 あくまで予想ですけどね。あたってても面白いし、外れてても面白い。

 では、次巻も追って報告いたします。

異種族レビュアーズ 3 (ドラゴンコミックスエイジ)

異種族レビュアーズ 3 (ドラゴンコミックスエイジ)

異種族レビュアーズ (ドラゴンコミックスエイジ)

異種族レビュアーズ (ドラゴンコミックスエイジ)

異種族レビュアーズ 2 特装版 (ドラゴンコミックスエイジ ま 7-2-1)

異種族レビュアーズ 2 特装版 (ドラゴンコミックスエイジ ま 7-2-1)

異種族レビュアーズ えくすたしー・でいず

異種族レビュアーズ えくすたしー・でいず

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』1巻から5巻までのネタバレ感想と6巻の感想について

さて、今回紹介する作品はこちら、『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』です。


自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?6 (MF文庫J)
著者:三河ごーすと
イラストレーター:ねこめたる
レーベル:MF文庫J
発売日: 2019/4/25
出版社: KADOKAWA / メディアファクトリー
ASIN:B07515KTH4

あらすじ
平凡な生活を求めて獅子王学園に通い出した裏世界最強の男・砕城紅蓮は、新生徒会&隷徒メンバーと共に《獣王遊戯祭》代表選抜戦に臨んでいた。
だが、突如として現れた海外勢の刺客の魔手に仲間達は倒れていく。
心を許したライバルの仇を討つため、最愛の兄を守り抜き、その隣に立つ『覚悟』を証明するために、自らの命を懸けた遊戯に身を投じる可憐。
その勇姿を見送りながら、紅蓮もまた、全てを守り、殺すための戦いへと歩を進めていた――。
「俺は《黒の採決》で一度も敗けなかった。過去にも、未来にも。それが遊戯である限り俺は絶対に敗けない。そういうふうにできている」
今、最も熱い学園ゲーム系頭脳バトル第六弾。【電子特典!書き下ろし短編付き】

シリーズ全体の魅力(1巻から5巻までのネタバレ注意)

さすおに系について

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』とは、ギャンブルもののデスゲームでありながら学園ものでもあります。近いものだと、『賭ケグルイ』と『ノーゲームノーライフ』を合わせたような作品。amazonのレビューや読書メーターでは1巻に対する印象でみんなそう言ってましたね。
舞台は今よりも未来。SAOのような、VRによる完全な仮想空間が可能で、ドローンや機械による無人の農作業や生産業が当たり前。1巻やそれぞれの巻の要所要所でサラッと書いてあるだけですが、これがじつは重要。こちらについては後で触れます。
そんな世界では、第三次世界大戦というものがあったことにより、どうやら戦争がなくなっているらしい。代わりに権力者たちは代理戦争として、遊戯でお互いの情報や技術、人材などの資産を奪いあうようになりました。主人公の砕城紅蓮はそんな遊戯の天才。彼は命をかけたゲームによる権力争いに妹の砕城可憐を巻き込まないために自ら遊戯の世界で無敗の覇者となった。そんな彼は作中ではまだ語られていない大きな戦いの末、タイトルにあるゲームで評価される学園に入学することになります。そこで、彼は一度は遠ざけたはずの妹に再会し、つぎつぎと学園内で渦巻く構想に巻き込まれたことにより、当初望んだはずの日常とかけ離れたものになる。
この妹が『魔法科高校の劣等生』の妹、司馬深雪に近い存在。周囲や公的な機関がどんな評価をくだしても、兄の素晴らしさを信じている。いわゆる"さすがお兄さま系"の妹。
 ”さすがお兄様系”、略して「さすおに」。このジャンルは、優秀な主人公が公的な機関から不当な評価を受けていることに対し、彼に近しい存在がその評価に憤り、本来の主人公のスペックを褒めるという形式をとっている。
 この流れは古くからあり、たとえば手塚治虫の『ブラックジャック』もこのルールで考えれば「さすおに」です。
 『ブラックジャック』は、主人公のブラックジャックは天才外科医であるが、医師免許を持っておらず、周囲からヤブ医者だと評される。そんな公の評価に対し、家族に近しい存在のピノコは憤る。
 「さすおに」系の妹とピノコの役割は主人公に近しい存在。主人公と近しい境遇でありながら、だからこそ比較すると違うところが浮き出るところです。
 『ブラックジャック』のピノコは、バラバラの身体をブラックジャックが縫い合わせて新しく生き返らせた存在だ。それは地雷で一度は身体を破損したが、恩師の外科医によって生還したブラックジャックと同じ境遇です。
 しかし、違うところもある。ブラックジャックは医者となって人々を助けていくと同時に、自分の身体をバラバラにし、母を殺した原因を作った相手に復讐している。そういう原罪を背負っていくキャラなんです。逆に、ピノコは主人公とともに命と向き合うことで、心理的に成長していく。罪を負わない形で。ブラックジャックって、打ち切りみたいな終わり方しているんですけどね。最終回を見た限りでは、主人公が医者として多くの命を救ってきたと同時に、その命を人工的に延ばすという罪を犯してきた。その罪を、成長したピノコが許すのか背負うだかして、解消されますよ、という話だと解釈できるんですね。
 『自称Fランク』の主人公も、自分の生まれた家が定めた遊戯で相手から奪わなければいけない、という戦いに妹を巻き込まず、すべて自分が背負い込むことにした。
 それは彼の家が、この世界の権力者たちが行ってきた遊戯という罪を彼一人が背負うことでした。
 これの面白いところは、この権力争いから物語が始まるのでなく、それがいったん終わって、学園生活をはじめようってとこから始めたところが面白いし。ヒロインであるはずの、砕城可憐が、ただの主人公の庇護下で終わるキャラでないところが面白いんですね。

主人公の妹、砕城可憐について

 先ほどまで、さすおに系とはなにかについて説明させていただいたのですが、実際のところ、この作品の面白いところは本作はさすおに系であって、さすおに系でないところってのがスゴイとこなんですよ。
 主人公は砕城紅蓮、彼は遊戯によってすべてが決まる裏の世界、≪黒の採決≫で無敗でいたが、その舞台から引退し、師子王学園で普通の学園生活を送ることを夢見た。しかし、その学園が遊戯によってすべてが決まる学園。
 彼はその学園で遊戯とは関係のない普通の日常を送るために自分の意志で、転入試験でFランクをとった。
 『魔法科高校の劣等生』も『ブラックジャック』も、あくまで形式通りであるがゆえにその人の本質を見抜けない不当な評価である一方、本作は、本人の意思で自分はFランクであるように偽った。
 本来であれば、その時点で彼は遊戯とは無関係の学生生活を送れるはずだった。しかし、主人公の身近にいた。彼に人生を変えられた一人の女の子がそれを許さなかった。
 その子の名こそ、砕城可憐、主人公の妹です。一巻では、平穏を望んでいるはずの主人公が桃貝桃花、楠木楓に巻き込まれる形でそれを壊してしまいました。そして、終盤でそれが妹の狙いで、彼女はお兄さまが学園の頂点に君臨することを望んでいることが明らかになる。
このへんを押さえた上でさ。表紙に書いてある『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』ってタイトルが、じつはかなり意味深な言葉であることがわかるんですよね。
まず、"お兄さまが"と書いてある時点でこれが妹の視点であることがわかります。さらに、"自称"Fランクのってわざわざ書いてある。この「〜の」は強調ですね。しかも"自称"とつけることで語り手である妹は兄がFランクであることを強く否定している。この「〜の」は、「と、言ってるけど違いますよね」って意味なんですよ。その上で「頂点に君臨するそうですよ?」と、疑問形で書いてあるんだけどさ。この疑問形もさ、相手に答えを聞くんじゃなく、言わせるための質問なんですね。
つまり、お兄さまが頂点に君臨するに決まってるという可憐の強い意志が秘められています。
タイトルで、ここまで自己主張の強い子がさ。お兄さまに守られてるだけのモブやメインヒロインで収まるはずがないってことが一巻の時点でわかるんですよ。
本作、6巻まで出ているんですが、すべて兄と妹のツーショットで表紙を飾っています。このシリーズは二人の関係性を描いていくものですよって初見の人に強調してるんですね。
そして、その関係性は恋愛関係に近いんだけど、対立関係でもあるんです。

異性関係でありながら対立関係

 たとえば、ハリウッド映画でこんな話を見たことはありませんか。
  刑事、軍隊、ジャーナリストなどに所属している主人公。彼は自身の正義の置きどころを組織に託しています。そんな彼には優しくて献身的な奥さんがいる。そんななか、彼はある組織の不正に気づく。
  葛藤する主人公、しかし、彼の人格を形成するきっかけとなった初期衝動を思い出し、彼は組織を裏切るを決意をする。そんなさなか、家に帰ると妻は笑顔でこう言った。
「あなた、わたし赤ちゃんができたの!」
 海外の映画やドラマを見たことがある人は、今の話をあるあるとおもったのではないでしょうか。
 今日から、こういうのを当ブログでは、「異性関係でありながら対立関係」と呼びます。
 この時、主人公は組織との戦いをしながら、日常的な会話の場面で奥さんとも心理的な戦いをしているんです。
 最近だと、こういう表現はジェンダーにも引っかかるかもしれないのですが、ベタな設定として過程に入った奥さんは夫にその家庭だけを考えてほしいし、夫はそこから自由になって漢として戦える瞬間を味わいたいと考えている、というのは古今東西物語のベースであるんですよ。それは原始時代の頃から、男性は狩りのために新天地に行き、女性はとどまって現在の関係を整えるっていうのが、イメージとして浸透しているからですね。
 本作にも、「異性関係でありながら対立関係」というのがあるんですが、珍しいのがヒロインが主人公の戦いを望み、主人公は平穏を望む、という逆転があることです。
 このシリーズでは、妹と兄が兄弟という境目を超えないラインでラノベ的なイチャコラを繰り広げるのですが、その会話の上でなされているのが、兄を学園の頂点にしたい妹と、平穏を望む兄の対立なんですね。
 このへんが読んでて面白いんですよ。二人はスゴイ仲がいいんだけど。セリフ上ではお互いの考えがかみ合ったことがないんですよね。その場その場での譲歩はあるんだけどさ。その日以降考えを変えるってことがなくてさ。兄には兄の言い分があり、妹には妹の言い分があるってのが他のキャラクターとの会話でどんどん濃くなっている。
 現在では、可憐も戦いを通じて強くなっていっているので、兄を学園の頂点に君臨させるためにいつかこの対立が目に見える形で出るのではないかってちょっと期待しています。

砕城紅蓮について

 今回、1巻から5巻までの魅力を語るうえで妹に比重を置いた解説となりましたが、もちろん主人公である砕城紅蓮も魅力的なんですよ。
 ただ、じつはまだ彼についてはどんな奴なのかと言い切るには隠していることが多い。この作品、主人公が無双したり、オチャラけたギャグパートがあるから、読者であるぼくらもわかった気になるんだけどさ。
 彼の真意、心の内が読めないように描かれているんですよ。
 これはこの前ブログで書いた『天才王子の赤字国家再生術』でも触れたんですけどね、「主人公はじつはこんなことを考えていたのか!」と読者が後半で驚くような作品は、うまい具合に主人公の本当の気持ちや考えが描写されないんですよ。代わりに、桃貝桃花と楠木楓がリアクションを担当し、妹の砕城可憐がゲームの動きを解説していく。これにより、主人公は黒の採決という権力者たちの代理戦争に参加していたという過去や、今、彼が何を考えているのかってのが、まだ完全に明らかになっていないんですよ。
 また、3巻から学園の頂点に君臨する何人かがバトル漫画の異能力みたいなのをもっててさ。主人公の口ぶりから、なにかしらの研究機関によって系統分けされているらしい。
 つまり作品世界に異能がルールとしてあるらしい。そして、ならあるであろう主人公の異能が具体的にハッキリしていないんですよね。
 パッと見だと遊戯であればなんでもできる、人の心を見抜くことができるってのがあるんですが。これは主人公の異能をスケールダウンさせたものか、あくまで遊戯者としての技術ではないかと思うんですね。
 しかも、5巻でどうやら脳の中に人格をダウンロードできるナノマシンみたいなのがあってさ。これも水葉と紅蓮の訓練元となった研究機関が携わっていたものらしい。
 そう考えると、たぶん紅蓮のなかにも別の人格がダウンロードされているんじゃないかとは思うし、これが目覚めた時にどうなるのかって話にはなりそうなんですよね。

砕城について

 個人的に面白いと思った部分を語ったうえで、本シリーズのテーマについて話していきます。
 今のところ考えられるのが、古今東西のデスゲーム系で共通してる目標でもある”デスゲームの主催者を倒す”ってのがこのシリーズでもあるのでしょう。
 これの面白いところが、この主催者を倒すというのが学園長を倒すとか、生徒会長の白王子透夜じゃないと思うんですよ。
 まず、この作品ってキャラのネーミングでいろいろ暗示しているのがあると思うんですよね。
 たとえば、2巻で出てくる御獄原水葉と静火姉妹。姉の水葉は後の睡蓮の花を挿している。そのうえで気になるのは静火。これ、主人公兄弟の砕城紅蓮の紅蓮の炎とかかっている。
 つまり5巻で妹の可憐が水葉と師弟コンビを組むことになるんですけどね。3巻では主人公の紅蓮のシャドウであるかのようにふるまうんですが。あくまで二人は家の境遇を一身に背負った身どうしであるという似通りがあるだけで。内面としては水葉と可憐、静火と紅蓮のほうが共通しているものがあるってことなんですよ。
 そして、大事なのが主人公兄弟の苗字である砕城。たぶん、これがシリーズ全体の目的なんですよ。
 城を砕くとなると、まずオノマトペで考えたら、白王子透夜。
 実際、1巻から現在にかけて現段階での最大のライバルキャラとして描かれています。
 ただ、白王子家を倒すだけで終わりではないと思うんですよね。なぜなら、彼は白王子、つまり”城の王子”なんです。それを強調するために白王子朝人という透夜の弟キャラが主人公の味方になりました。
 そもそも主人公が目指すのは城を砕くこと。では、その城とは何か。これがなんの比喩なのかって話になるんです。
 城とは、いわば人工的につくられた権力の象徴。つまりこのゲームのシステムそのものです。
 たぶん、妹と兄とでお互いの価値観をぶつけあって和解した後はこの黒の采配という盤上自体を壊そうとするというこのシリーズ全体の流れになるのではないでしょうか。
 あくまで予想ですけどね。あたっても面白いし、外れても面白い。
 では、最新刊の6巻の感想に移りましょう。

最新刊、6巻の感想

世界大会のはじまりと異能バトルの開幕

 5巻で、学園長の口から衝撃的なことを告げられる。なんと世界中にある遊戯を教える学園同士で大会のようなものをやることに。
 主人公たちの学園でも代表選手を選出するために、選抜大会を行うことに。
 そこで今までのキャラクターが総出演して競い合う。そんななか、学園入学時に主人公が助けた作中で一番最弱であったキャラ、桃貝桃花が静火と聖上院姫狐による特訓で異様な成長を見せる。
 この巻では今までにはなかった組み合わせでキャラ同士の日常を描いている。さらに、1巻で登場した時任ミミを再登場させることで、じつはかなり初期の段階で異能による遊戯ってのをやってて、これからさらに異能持ちのキャラが出てきますよって前振りを入れているんですね。そして、5巻のラスト、水葉と元生徒会役員のアイドルとの戦いになるはずが、水葉は戦う前に負傷。アイドルの子は正体を偽っていて、本当の姿はロシアのスパイ、クラウンだった。
 そして、6巻で、可憐はロシアの要する遊戯者、クラウンと戦います。
 このクラウンが今までの登場人物とは一線を画した存在として描かれています。彼はナノマシンによって精神を分離させられる存在。
 集団であり個人でもある彼は自分一人の生き死にを気にしない。
 彼はロシアの研究機関の実験により生まれた存在。
 彼らは俗にいうインターネットの個人個人のメタファーでしょう。
 姿を偽り、一アカウントの勝ち負けにこだわらないからこそ、どんな人物にも悪意を持って接することができる。
 しかし、その実態は社会の大きな流れに操られるロボットのような存在。
 親元から見捨てられれば簡単に今の地位が揺らぐし、勝ち負けを気にしないという考えでは本当の勝負には勝てないという流れにより、今までの遊戯者を立てていく。
 そのうえで、存在自体が異様なため今後の世界大会でこれ以上のヤツが出てくるのかというワクワク感が出るんですね。

白王子朝人について

 今回、気になるのが白王子朝人でしょう。
 彼は白王子家ではありますが、彼の兄の婚約者、聖上院姫狐にたいする恋により白王子家を裏切ることに。
 3巻で露骨でしたけど、白王子ってのが白雪姫の王子様って意味でさ。朝人、つまり朝の人ってことでさ。白雪”姫”を起こす人って意味なんですね。
 さらに大事なのが、彼が朝”人”で好きになる相手が姫”狐”ということです。3巻を読んでいた時は姫狐が裏切るのかな、とおもったんですが。それはミスリードでさ。
 彼女の本質を受け入れたうえで、人である朝人が彼女とどう向き合うかという人外婚姻譚だったんですね。
 なので彼は異常な世界で人として頑張るキャラとして描かれている。
 怪物だと自覚している紅蓮に対して対等な親友であろうとしたり、彼のためにできることは何かと考えたりさ。
 葛藤を抱えているキャラであることがわかるんですね。そのぶん、どうしてもヤムチャ的な扱いにもなっちゃうんですけどね。
 彼の今後の成長が楽しみです。

カリオストロの城

 今回、ラストである新キャラが出てきていてさ。そのキャラが7巻、もしかしたらこの大会全体のキーキャラになりそうなんだけどさ。
 そのうえでの予想で考えられるのが、たぶんカリオストロの城になるんじゃないかなと思う。
 まず、このシリーズってさ。妹の可憐にしろ、水葉にしろさ。
 ヒロインがどうやって主人公を遊戯の世界に連れてくるかって話だったんだよ。
 それが2回連続だったんですね。そう考えると、次は逆でさ。じゃあ、遊戯と離れてくれたら私と幸せに暮らしてくれますかって問いが来ると思うんですよ。
 つまりさ、6巻のラストのお姫さまとの恋愛も絡めた展開になるんじゃないでしょうか。そのうえで、もうひとひねり騙してくるかもしれない。
 あくまで予想ですけどね。

 では、7巻も追って報告いたします。

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?6 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?6 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?5 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?5 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?4 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?4 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6+6.5巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6+6.5巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-4巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-4巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? コミック 1-2巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? コミック 1-2巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-5巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-5巻セット

『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』8巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』8巻です。


通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?8 (ファンタジア文庫)
著者:井中だちま
イラストレーター:飯田ぽち
レーベル:富士見ファンタジア文庫
発売日: 2019/5/20
出版社: KADOKAWA / 富士見書房
ASIN: B07QQP5KDB

あらすじ
「なんとも言えないような不安を感じるような」大好真々子の不安は、ゲーム世界での急速な子供たちの親離れから始まり、真人たちも予測不可能な事態へと発展する!「自分は、反抗組織リベーレの、四天王の一人になりました!」突如パーティを離脱したポータを説得するため、四天王を操るボスが待つハハーデス城へと向かう真人たち。そして真々子は世界の危機を救うため―和乃、メディママとアイドルユニットを結成!?

シリーズ全体の魅力(1巻から7巻までのネタバレ注意

『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』とは、思春期の息子である大好真人とその母親である大好真々子のW主人公による異世界転生ものです。
 ライトノベルでは主人公とヒロインのW主人公で描かれる作品は珍しくありません。
 しかし、母親と息子を主人公にするのは珍しいです。
 そして、その二人の主人公がまんべんなく活躍している。
 親子を題材にした作品と言えば有名なのがドラゴンボールの悟空と悟飯。
 ヤンチャな父親のもとで生まれた真面目な優等生の子供。しかし、ナメック星編で明らかになった父親の血筋の因縁に息子である悟飯も巻き込まれ、戦いのさなかで大きく成長します。
 そしてセルゲーム編で主人公交代となるはずが、結局はブウ編で完全に主人公の座を悟空に戻さざるおえなくなった。
 エヴァンゲリオンでも、ゲンドウとシンジという父親と息子の冷たい対立が描かれていましたし、じつは母親とのゆがんだ関係を描いていますね。
 子供と親の関係というのは古今東西の作品でどちら側かの視点に立って描いていたんですが、この作品の珍しいのは親子の両方をクローズアップさせたうえで、親子の関係性というテーマもちゃんとコミカルに描いている点です。
 1巻では主人公の真人と母親の真々子の日常がまず描かれる。思春期に入った息子と、そんな息子に、どう接したらいいのかわからない母。そこから、シラーセという突然現れた存在により、主人公の真人と真々子は異世界へ。
 その後、シラーセから世界観の説明。二人が連れてこられた世界は国が開発した親と子の関係改善のためにつくられたMMORPG。
 そこでは真人と真々子だけでなく、様々な母子がMMORPGに連れてこられていた。
 二人はこの世界からの脱出を目指して、仮想の異世界を旅します。しかし、ここで面白いのが、この世界では息子よりも母親のほうがチートスキルを持っているんですよ。
 母親である大好真々子は、通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃なんです。
 つまり、戦闘の1ターンで息子の真人の倒す敵がいないんですよ。
 1巻の序盤で息子の真人は異世界で行って戦いたいと願う。なんで異世界に行きたいんですか、といえばさ。この辺の気持ちってのがあるんですよね。
 今ってさ、対立のない時代なんですよ。確かに、いまだに戦争もあるし、貧困もあるんだけどさ。科学文明が進み、理不尽が可視化されていくうちに、僕らの敵ってどこにいるんですかって気持ちはあると思うんですよ。
 ネットでの制裁が過激化されているんだけどさ。それも逆に理不尽が可視化されて誰のせいにもできない、自業自得とか自己責任って言葉が流行っているのも、理由が明らかになって、敵がいなくなっていくからです。だからこそ、異世界に倒すべき敵を求めている。しかし、そこに大人を持ち込みましょうってのがこのはなしなんですよ。
 そして、この世界では強い力を持った大人が異世界で暴走している。
 1巻から2巻は、その巻のメインヒロイン、ワイズとメディの母親、和乃とメディママ。彼女たちは異世界で得た強い力で自身の抱えていた欲望を実現させます。
 真々子はその母親たちと対立しながら、母としてどう生きるべきかを考えていき、息子である真人は、母親との摩擦による子供たちの心の闇を解きほぐすメンターの役割をするようになります。
 3巻、ここで反抗組織リベーレという1、2巻のときにもちょこちょこ出ていたキャラが3巻での中心人物となる。
 その組織が指摘するのが、僕がさっき言ったような強すぎる親の問題。組織の四天王の一人、アマンテはチート能力を持った真々子のせいで異世界でやりたかった冒険ができないのではないかという話をします。
 その問いに対して答えを出すことで、1巻からのテーマに一区切りつきました。
 そこから、4巻では明確な敵組織として表れた反抗組織リベーレとの対立の表面化と、二人目の四天王、ソレラの作戦により、真々子のチートに弱点が露見することで、能力の調整がはいります。
 そして、5巻からは天下一母道会が行われる。この世界の母親と母親としてのスキルを競い合う大会。真々子は5巻ではじめて大会の景品となったあるものを欲しがり、そのために大会に出ます。
 真人を優先して生きていた真々子がここではじめて自分の望みのために頑張ることで、彼女の成長を描く。この巻では、真々子は反抗組織リベーレからの妨害により、様々な姿になる。そして、自身をコピーした同一の存在と出会う。
 これによって強調されるのが属性の変化や、鏡合わせの人間と相対したうえで彼女自身は何者なのか、という話なんですね。
 そして、6巻ではオムニバス的なストーリーにより、MMORPGとして主人公たちが守らなければいけない世界の協調、7巻で主人公の成長が描かれる。
 このうえで、8巻に続きます。 

子供の親離れ、自立

8巻の導入は不安の煽り方が上手いです。
大好真々子の息子である真人が、母親の力を借りずにモンスターたちと戦う場面から始まる。そこはコミカルに描かれているが、じつは今回の騒動を予兆させるものでした。
ギルドで新たなクエストを探していると、子供たちによる不自然な親離れが起きていることを知る真人たち。さらに、反抗組織リベーレの親玉が指名手配されていることも知り。彼らはどちらかを選ばなければいけないという選択の瞬間がある。これにより、片方を優先したときに本当にこれでよかったのか、という不安が読者の心に残ります。
彼らは母親と子供の問題を解決しに行く。すると子供たちが胸につけているバッジが原因であることがわかりさっそく外すように呼びかける。これで表面上は解決したようにみえますが、あくまでセリフ劇で終始しており、普段の真々子さんによる絵映えのする解決をしてないため。真々子さんらしくないなってさ、おもうので、これもまたこの先の不安を煽っている。
その上で、次の日にポーターがいなくなり、彼女は四天王となる。
8巻の導入は、明るいんだけどどこか不安みたいな状態から始まり、その不安がポーターの失踪で具現化された、ように読者は考える。
しかし、そこがミスリードで、彼女を助けようと動いていくうちに主人公たちが大きな流れに巻き込まれていることに読者は気づくんです。
ここの流れが、今回すごい上手いんですよ。

息子、母はどうするのか

今回、本作の親と子によるW主人公という特徴が活かされた展開でした。
子供が親から自立する瞬間を本作では描き、ではその上で母親はどうするべきか、というアンサーにも答えている。
真々子が母親としての決断をした瞬間、そこから前半の不安がは一気に吹き飛び、シリーズ全体の魅力である母親無双がはじまる。
今回素晴らしいのは、今までこの世界で一度は敵として真々子の前に立ちはだかった、和乃、メディママが味方として協力するところです。
後半では、二人の母親としての成長も描いている。そこから、もう一人の主人公である息子の真人に合流するまでの流れも熱い。
ポーターと、その母を救いたいと願う真人、彼が思春期の子供の母親に対する気持ちの汲み取る能力は高く、今まで様々なキャラクターのメンターとなってきた。
今回もその強みを発揮した。その上で、彼自身が苦境に立たされた時に母の真々子に頼ることもできるようになった点は彼の成長した部分だろう。

9巻への期待

さて、9巻からは反抗組織、リベーレとの最終決戦。もうすぐ終盤に近づいているって気がしますね。
今まで、リベーレに所属する四天王の3人はコミカルな悪役として描かれてきましたが、その実、彼女たちの本音、どんな人生を送り、どのような考えで母親と子供の絆を邪魔するのかが描かれていなかった。
一応、表向きの理由として彼女たちには母親がいないという環境的要因は強調されていました。
それがラストでは解決するのではないかと思われる場面もあったのですが。そうであってもって感じなんですよね。
それが9巻から描かれるのかは今から楽しみです。

それでは、次巻も追って報告いたします。