そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ワンワン物語』5巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『ワンワン物語』5巻です。


ワンワン物語5 ~金持ちの犬にしてとは言ったが、フェンリルにしろとは言ってねえ!~ (角川スニーカー文庫)
著者:犬魔神
イラストレーター:こちも
レーベル:角川スニーカー文庫
発売日: 2019/5/1
出版社: KADOKAWA
ASIN: B07NQ42SN7

あらすじ
念願叶って金持ちの犬に転生したロウタ。
魔王軍幹部・カーミラとリッチーをお屋敷の使用人に迎え、駄犬生活を取り戻したロウタの耳に飛び込んできたのは――
メアリの大親友・エリザベスの来訪と、〈勇者〉アルステラの調査派遣!
魔王軍退治は勇者に任せて、ペット生活は安泰! と思いきや……
アルステラは容赦ない魔物スレイヤーで、森の仲間たちが大ピンチ!?
「わふわふ(来るがいい勇者め。俺たちの逃げっぷりを見せてやるぜ!)」
アルステラの聖剣から仲間を守るため、ロウタは魔物たちを引き連れて、空前の大逃亡作戦を開始する!

どんな話か

犬が主人公の人外転生ものの第5巻です。
主人公のロウタは転生者。死の直前、来世はお金持ちの犬になりたいと願った。気づくと、その通りに犬として生まれているロウタ。
彼の願いは叶えられたかのように思われた。
しかし、数ヶ月後、ロウタは自身の異変に気づく。自分の身体が一般の犬より大きい。しかも顔も化け物のようにイカツイ。
なんと、彼は動物の犬でなく、魔物のフェンリルとして生まれていたのだ。
犬としての幸せな日々を過ごしていたのに、ふとした拍子に自分の姿が映るものをみたことでその者の本当の生まれを知る。まるで白鳥の子のような展開で物語は幕を開ける。
転生もののベタである超常の存在に願う際、その願いに思わぬデメリットが後で明らかになる、古典の猿の手から続くストーリーライン、《こんなの聞いていないよ!》。さらに、主人公は日常を愛する《平穏系》です。

私、能力は平均値でって言ったよね! 1 (アース・スターノベル)

私、能力は平均値でって言ったよね! 1 (アース・スターノベル)

彼は彼自身にチートを持っていることを自覚しているし、彼の周りのドラゴンや狼、魔女や剣士も認めている。
しかし、影で脅威を退きながらも、彼は犬としての日々を生きる。
1巻から4巻はそんな彼の日常を描きながら、この世界の悪役であり、復活するであろう魔王の存在をほのめかす。

5巻からある新キャラの登場で物語は大きく進展します。その上でこの作品のテーマもはっきりしてきました。

では、5巻の感想に入りましょう。

新キャラのアルステラ

今回、新キャラのアルステラが魅力的でしたね。ボクっ娘でヤンデレ、正義漢。最初は怖いし。
心理描写をのぞけばのぞくほど、後々の展開を想像して不安になっちゃいますね。
彼女を助けたいと思い、そのボルテージがマックスまで高まった時に救いのヒーローが現れる。その時のカタルシスはいいですね。

本来の自分

今回、シリーズ全体のテーマがはっきりしてきましたね。5巻ではシリーズでたびたび言われていたフシアナアイって言葉がやたらと使われてましたね。
この言葉は「お前の目は節穴か」っていう漫画によくあるセリフからくる造語。しかし、5巻では主人公を飼う家族でなく、アルステラが女の子だと気づかなかったロウタこそがフシアナアイでないかと言われ、オチがつく。
この辺が日常系のサザエ家でいじられるカツオみたいなギャグ締めに見えるんですけどね。
これは、ロウタを優しい犬として見てるメアリたちのが彼のことをちゃんと見てくれてるんじゃないかっていう逆説的なメッセージなんですよ。
しかも、今回、敵だったカーミラとリッチーがお屋敷の使用人としての居場所を手に入れているし。アルステラも、今回ある経験による自分が本来なりたかった自分を見つけますね。
しかも、彼らが本当の居場所、自分を見つけられた場所は都市という社会から離れた森の奥なんです。
さらに言えば、魔王っていうのも胡散臭くてさ。今回の話ってさ。歴史というのは人工物だから事実でないって話でさ。
この辺を突き詰めていくとさ。たぶん、魔王や歴史というのが誰かが作りだしたものでさ。その人工物と自然を取り戻したロウタたちが戦って本来の状態に戻すみたいなさ。もののけ姫みたいな感じになるんじゃないかな。

あくまで予想ですが。

では、次巻も追って報告いたします。