そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『なぜかS級美女達の話題に俺があがる件』について

今回紹介する作品は、『なぜかS級美女達の話題に俺があがる件』です。

なぜかS級美女達の話題に俺があがる件 (角川スニーカー文庫)

不思議なすれ違いの恋愛

 読み味が普段読むラブコメと違ってて楽しめました。

 主人公の晴也はふだんはクラスの影に隠れた地味な人間。休日はオシャレをして出かける。自己肯定感が低い。
 休日にナンパに絡まれた少女を助ける。休日明け、クラスのS級美女達の一人、小日向凛が休日に素敵な男性に助けられたことを語る。
 教室にいる誰もが、S級美女たちに直接話しかけはしないまでも、気になって聞き耳を立てる。
 晴也は凛の話に既視感を覚える。なんと、彼女は休日に助けた少女だった。
 彼女のなかで、自分が過剰に評価されていると感じた主人公。彼なりに、評価を下げる行動を取るも、教室で語る彼女の晴也像は変わらず、むしろ高くなっていた。

 すれ違い系のラブコメ。最初に立てた計画は崩壊し、予想外の結果を得る。
 ラブコメの日常パートは読んでて楽しかったです。主人公にとっては放課後や休日の一場面なのですが。オシャレで変身をしているという要素は非日常感があり、読んでてワクワクしました。
 また、主人公だけでなく、ヒロインも服装や帽子、アクセサリーで見た目が変わる世界観で。それぞれの正体がいつキャラクターどうしでバレるのかが、話の展開を読めなくしており、日常パートでもワクワクして読めました。
 この作品、晴也と凛の恋愛パートの振り返りが教室でのS級美女たちの会話でされています。
 これにより、フィードバックを主人公も知るのが面白い。リアクションが読んでて楽しく。主人公のコミカルさと、ヒロインの魅力を引き立ててる。

登場人物たちの秘密が気になる

 本作品はライトノベルの1巻です。
 つまりは2巻、3巻と続きを見据えた作品であるということです。
 その上で、1巻で一人のヒロインとの交流を描いた作品です。
 でありながら、主人公は教室と教室の外で別の見た目を持っている。また、読者にだけわかる形で、S級美女と評されるヒロインたちも教室での姿と外での姿が違う。
 両親、人間関係、なにかしらの理由で構築された社会性。社会的ペルソナと、その内面に閉じられた心理的ペルソナ。
 その二つの境目を行き来しながら、ペルソナが分裂したトラウマと向き合い融和する。
 ある種の二重人格もののようなストーリーラインになっている。
 と、なると他のヒロインや主人公にも同じ側面があるのは想像に難くない。
 他のキャラクターたちや主人公も魅力的なので、どんな秘密があるのかが気になります。

 オススメの作品なので、ぜひ読んでみてください。