こんにちは、神島竜人です。今回は『死神公女フリージアはさよならを知らない』について紹介します。
あらすじ
死神は人と繋がり恋することで――最期にすべてを理解した
「私は人が生き抜いた末の『死』が観たい。その果てに、なにが遺るのかを」
『死』を学ぶためだけに現世を旅をする死神がいる。死神公女フリージア・トルストイ・ドルシュヴィーア。
異世界の中でも高位な存在であり、現世の『死』を知りたいと願った彼女は、付き人である少年、《人の死期がわかる》異能を持つ黒朗夏目と、様々な人間の『死』を看取る旅をする。
寿命という概念と無縁だから、人間と親しくなったことがないから気付かなかった、抗いようのない一つの事実。
彼女がそのことに気付く、その刻まで――旅は続く。
ヒロインは死を観察する死神
異色の作品です。最初はどういう気持ちで読めばいいのかわからずに世界観に引き込まれながら読みました。
徐々に死を観察する、というヒロインの目的が見えてきて序盤のどんでん返しがフックになって最後まで読み進められました。
話の構成としては死神のヒロインが寿命が見える相棒とともに死の運命にある人たちを観察して。その死に際の行動から死を理解しようとする作品。
つまりは余命もの。
石田衣良さんの『約束』とか、携帯iランドの『恋空』、片山恭一さんの『世界の中心で愛を叫ぶ』、伊坂幸太郎の『死神の精度』、漫画だと『イキガミ』、映画だと黒澤明の『生きる』も有名です。
いずれも人生に向き合い、蝋燭の火が消える瞬間の強いまたたきを捉えた、読者を泣かせるためのストーリーが多い。
そのイメージから私は序盤で、ようはこういう作品だろうな、と予想しながら読み進めました。
ただ、予想とは大きく外れていて面白かったです。
誰かが近々死ぬという前提で読み進めるミステリー?
ヒロインの相棒が相手の余命を見ることができる。それにより、だれがいつ死ぬかを知っている。
その死ぬだれかはだれなのか、という緊張感があります。
そのギミックがある上で、けっこう変化球が多い。1回目で、典型的な余命ものをやったので。
2回目もそれ系の話になるかな、と思ったら予想を裏切る話になりました。
この設定でどうやって話を回すんだろうと思いながらページをめくったのですが、意外と作者の引き出しが広くて驚きます。
今後の展開
1巻で話としては完成しています。しかし、続巻が出る余白はたくさんあるようにも思います。
今巻ではいろんな引き出しが見えたので、もっといろんなパターンが見れるだろうな、と思います。
また、異世界の設定も掘り下げられそうな部分がまだまだありそうです。