そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』1巻から5巻までのネタバレ感想と6巻の感想について

さて、今回紹介する作品はこちら、『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』です。


自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?6 (MF文庫J)
著者:三河ごーすと
イラストレーター:ねこめたる
レーベル:MF文庫J
発売日: 2019/4/25
出版社: KADOKAWA / メディアファクトリー
ASIN:B07515KTH4

あらすじ
平凡な生活を求めて獅子王学園に通い出した裏世界最強の男・砕城紅蓮は、新生徒会&隷徒メンバーと共に《獣王遊戯祭》代表選抜戦に臨んでいた。
だが、突如として現れた海外勢の刺客の魔手に仲間達は倒れていく。
心を許したライバルの仇を討つため、最愛の兄を守り抜き、その隣に立つ『覚悟』を証明するために、自らの命を懸けた遊戯に身を投じる可憐。
その勇姿を見送りながら、紅蓮もまた、全てを守り、殺すための戦いへと歩を進めていた――。
「俺は《黒の採決》で一度も敗けなかった。過去にも、未来にも。それが遊戯である限り俺は絶対に敗けない。そういうふうにできている」
今、最も熱い学園ゲーム系頭脳バトル第六弾。【電子特典!書き下ろし短編付き】

シリーズ全体の魅力(1巻から5巻までのネタバレ注意)

さすおに系について

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』とは、ギャンブルもののデスゲームでありながら学園ものでもあります。近いものだと、『賭ケグルイ』と『ノーゲームノーライフ』を合わせたような作品。amazonのレビューや読書メーターでは1巻に対する印象でみんなそう言ってましたね。
舞台は今よりも未来。SAOのような、VRによる完全な仮想空間が可能で、ドローンや機械による無人の農作業や生産業が当たり前。1巻やそれぞれの巻の要所要所でサラッと書いてあるだけですが、これがじつは重要。こちらについては後で触れます。
そんな世界では、第三次世界大戦というものがあったことにより、どうやら戦争がなくなっているらしい。代わりに権力者たちは代理戦争として、遊戯でお互いの情報や技術、人材などの資産を奪いあうようになりました。主人公の砕城紅蓮はそんな遊戯の天才。彼は命をかけたゲームによる権力争いに妹の砕城可憐を巻き込まないために自ら遊戯の世界で無敗の覇者となった。そんな彼は作中ではまだ語られていない大きな戦いの末、タイトルにあるゲームで評価される学園に入学することになります。そこで、彼は一度は遠ざけたはずの妹に再会し、つぎつぎと学園内で渦巻く構想に巻き込まれたことにより、当初望んだはずの日常とかけ離れたものになる。
この妹が『魔法科高校の劣等生』の妹、司馬深雪に近い存在。周囲や公的な機関がどんな評価をくだしても、兄の素晴らしさを信じている。いわゆる"さすがお兄さま系"の妹。
 ”さすがお兄様系”、略して「さすおに」。このジャンルは、優秀な主人公が公的な機関から不当な評価を受けていることに対し、彼に近しい存在がその評価に憤り、本来の主人公のスペックを褒めるという形式をとっている。
 この流れは古くからあり、たとえば手塚治虫の『ブラックジャック』もこのルールで考えれば「さすおに」です。
 『ブラックジャック』は、主人公のブラックジャックは天才外科医であるが、医師免許を持っておらず、周囲からヤブ医者だと評される。そんな公の評価に対し、家族に近しい存在のピノコは憤る。
 「さすおに」系の妹とピノコの役割は主人公に近しい存在。主人公と近しい境遇でありながら、だからこそ比較すると違うところが浮き出るところです。
 『ブラックジャック』のピノコは、バラバラの身体をブラックジャックが縫い合わせて新しく生き返らせた存在だ。それは地雷で一度は身体を破損したが、恩師の外科医によって生還したブラックジャックと同じ境遇です。
 しかし、違うところもある。ブラックジャックは医者となって人々を助けていくと同時に、自分の身体をバラバラにし、母を殺した原因を作った相手に復讐している。そういう原罪を背負っていくキャラなんです。逆に、ピノコは主人公とともに命と向き合うことで、心理的に成長していく。罪を負わない形で。ブラックジャックって、打ち切りみたいな終わり方しているんですけどね。最終回を見た限りでは、主人公が医者として多くの命を救ってきたと同時に、その命を人工的に延ばすという罪を犯してきた。その罪を、成長したピノコが許すのか背負うだかして、解消されますよ、という話だと解釈できるんですね。
 『自称Fランク』の主人公も、自分の生まれた家が定めた遊戯で相手から奪わなければいけない、という戦いに妹を巻き込まず、すべて自分が背負い込むことにした。
 それは彼の家が、この世界の権力者たちが行ってきた遊戯という罪を彼一人が背負うことでした。
 これの面白いところは、この権力争いから物語が始まるのでなく、それがいったん終わって、学園生活をはじめようってとこから始めたところが面白いし。ヒロインであるはずの、砕城可憐が、ただの主人公の庇護下で終わるキャラでないところが面白いんですね。

主人公の妹、砕城可憐について

 先ほどまで、さすおに系とはなにかについて説明させていただいたのですが、実際のところ、この作品の面白いところは本作はさすおに系であって、さすおに系でないところってのがスゴイとこなんですよ。
 主人公は砕城紅蓮、彼は遊戯によってすべてが決まる裏の世界、≪黒の採決≫で無敗でいたが、その舞台から引退し、師子王学園で普通の学園生活を送ることを夢見た。しかし、その学園が遊戯によってすべてが決まる学園。
 彼はその学園で遊戯とは関係のない普通の日常を送るために自分の意志で、転入試験でFランクをとった。
 『魔法科高校の劣等生』も『ブラックジャック』も、あくまで形式通りであるがゆえにその人の本質を見抜けない不当な評価である一方、本作は、本人の意思で自分はFランクであるように偽った。
 本来であれば、その時点で彼は遊戯とは無関係の学生生活を送れるはずだった。しかし、主人公の身近にいた。彼に人生を変えられた一人の女の子がそれを許さなかった。
 その子の名こそ、砕城可憐、主人公の妹です。一巻では、平穏を望んでいるはずの主人公が桃貝桃花、楠木楓に巻き込まれる形でそれを壊してしまいました。そして、終盤でそれが妹の狙いで、彼女はお兄さまが学園の頂点に君臨することを望んでいることが明らかになる。
このへんを押さえた上でさ。表紙に書いてある『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? 』ってタイトルが、じつはかなり意味深な言葉であることがわかるんですよね。
まず、"お兄さまが"と書いてある時点でこれが妹の視点であることがわかります。さらに、"自称"Fランクのってわざわざ書いてある。この「〜の」は強調ですね。しかも"自称"とつけることで語り手である妹は兄がFランクであることを強く否定している。この「〜の」は、「と、言ってるけど違いますよね」って意味なんですよ。その上で「頂点に君臨するそうですよ?」と、疑問形で書いてあるんだけどさ。この疑問形もさ、相手に答えを聞くんじゃなく、言わせるための質問なんですね。
つまり、お兄さまが頂点に君臨するに決まってるという可憐の強い意志が秘められています。
タイトルで、ここまで自己主張の強い子がさ。お兄さまに守られてるだけのモブやメインヒロインで収まるはずがないってことが一巻の時点でわかるんですよ。
本作、6巻まで出ているんですが、すべて兄と妹のツーショットで表紙を飾っています。このシリーズは二人の関係性を描いていくものですよって初見の人に強調してるんですね。
そして、その関係性は恋愛関係に近いんだけど、対立関係でもあるんです。

異性関係でありながら対立関係

 たとえば、ハリウッド映画でこんな話を見たことはありませんか。
  刑事、軍隊、ジャーナリストなどに所属している主人公。彼は自身の正義の置きどころを組織に託しています。そんな彼には優しくて献身的な奥さんがいる。そんななか、彼はある組織の不正に気づく。
  葛藤する主人公、しかし、彼の人格を形成するきっかけとなった初期衝動を思い出し、彼は組織を裏切るを決意をする。そんなさなか、家に帰ると妻は笑顔でこう言った。
「あなた、わたし赤ちゃんができたの!」
 海外の映画やドラマを見たことがある人は、今の話をあるあるとおもったのではないでしょうか。
 今日から、こういうのを当ブログでは、「異性関係でありながら対立関係」と呼びます。
 この時、主人公は組織との戦いをしながら、日常的な会話の場面で奥さんとも心理的な戦いをしているんです。
 最近だと、こういう表現はジェンダーにも引っかかるかもしれないのですが、ベタな設定として過程に入った奥さんは夫にその家庭だけを考えてほしいし、夫はそこから自由になって漢として戦える瞬間を味わいたいと考えている、というのは古今東西物語のベースであるんですよ。それは原始時代の頃から、男性は狩りのために新天地に行き、女性はとどまって現在の関係を整えるっていうのが、イメージとして浸透しているからですね。
 本作にも、「異性関係でありながら対立関係」というのがあるんですが、珍しいのがヒロインが主人公の戦いを望み、主人公は平穏を望む、という逆転があることです。
 このシリーズでは、妹と兄が兄弟という境目を超えないラインでラノベ的なイチャコラを繰り広げるのですが、その会話の上でなされているのが、兄を学園の頂点にしたい妹と、平穏を望む兄の対立なんですね。
 このへんが読んでて面白いんですよ。二人はスゴイ仲がいいんだけど。セリフ上ではお互いの考えがかみ合ったことがないんですよね。その場その場での譲歩はあるんだけどさ。その日以降考えを変えるってことがなくてさ。兄には兄の言い分があり、妹には妹の言い分があるってのが他のキャラクターとの会話でどんどん濃くなっている。
 現在では、可憐も戦いを通じて強くなっていっているので、兄を学園の頂点に君臨させるためにいつかこの対立が目に見える形で出るのではないかってちょっと期待しています。

砕城紅蓮について

 今回、1巻から5巻までの魅力を語るうえで妹に比重を置いた解説となりましたが、もちろん主人公である砕城紅蓮も魅力的なんですよ。
 ただ、じつはまだ彼についてはどんな奴なのかと言い切るには隠していることが多い。この作品、主人公が無双したり、オチャラけたギャグパートがあるから、読者であるぼくらもわかった気になるんだけどさ。
 彼の真意、心の内が読めないように描かれているんですよ。
 これはこの前ブログで書いた『天才王子の赤字国家再生術』でも触れたんですけどね、「主人公はじつはこんなことを考えていたのか!」と読者が後半で驚くような作品は、うまい具合に主人公の本当の気持ちや考えが描写されないんですよ。代わりに、桃貝桃花と楠木楓がリアクションを担当し、妹の砕城可憐がゲームの動きを解説していく。これにより、主人公は黒の採決という権力者たちの代理戦争に参加していたという過去や、今、彼が何を考えているのかってのが、まだ完全に明らかになっていないんですよ。
 また、3巻から学園の頂点に君臨する何人かがバトル漫画の異能力みたいなのをもっててさ。主人公の口ぶりから、なにかしらの研究機関によって系統分けされているらしい。
 つまり作品世界に異能がルールとしてあるらしい。そして、ならあるであろう主人公の異能が具体的にハッキリしていないんですよね。
 パッと見だと遊戯であればなんでもできる、人の心を見抜くことができるってのがあるんですが。これは主人公の異能をスケールダウンさせたものか、あくまで遊戯者としての技術ではないかと思うんですね。
 しかも、5巻でどうやら脳の中に人格をダウンロードできるナノマシンみたいなのがあってさ。これも水葉と紅蓮の訓練元となった研究機関が携わっていたものらしい。
 そう考えると、たぶん紅蓮のなかにも別の人格がダウンロードされているんじゃないかとは思うし、これが目覚めた時にどうなるのかって話にはなりそうなんですよね。

砕城について

 個人的に面白いと思った部分を語ったうえで、本シリーズのテーマについて話していきます。
 今のところ考えられるのが、古今東西のデスゲーム系で共通してる目標でもある”デスゲームの主催者を倒す”ってのがこのシリーズでもあるのでしょう。
 これの面白いところが、この主催者を倒すというのが学園長を倒すとか、生徒会長の白王子透夜じゃないと思うんですよ。
 まず、この作品ってキャラのネーミングでいろいろ暗示しているのがあると思うんですよね。
 たとえば、2巻で出てくる御獄原水葉と静火姉妹。姉の水葉は後の睡蓮の花を挿している。そのうえで気になるのは静火。これ、主人公兄弟の砕城紅蓮の紅蓮の炎とかかっている。
 つまり5巻で妹の可憐が水葉と師弟コンビを組むことになるんですけどね。3巻では主人公の紅蓮のシャドウであるかのようにふるまうんですが。あくまで二人は家の境遇を一身に背負った身どうしであるという似通りがあるだけで。内面としては水葉と可憐、静火と紅蓮のほうが共通しているものがあるってことなんですよ。
 そして、大事なのが主人公兄弟の苗字である砕城。たぶん、これがシリーズ全体の目的なんですよ。
 城を砕くとなると、まずオノマトペで考えたら、白王子透夜。
 実際、1巻から現在にかけて現段階での最大のライバルキャラとして描かれています。
 ただ、白王子家を倒すだけで終わりではないと思うんですよね。なぜなら、彼は白王子、つまり”城の王子”なんです。それを強調するために白王子朝人という透夜の弟キャラが主人公の味方になりました。
 そもそも主人公が目指すのは城を砕くこと。では、その城とは何か。これがなんの比喩なのかって話になるんです。
 城とは、いわば人工的につくられた権力の象徴。つまりこのゲームのシステムそのものです。
 たぶん、妹と兄とでお互いの価値観をぶつけあって和解した後はこの黒の采配という盤上自体を壊そうとするというこのシリーズ全体の流れになるのではないでしょうか。
 あくまで予想ですけどね。あたっても面白いし、外れても面白い。
 では、最新刊の6巻の感想に移りましょう。

最新刊、6巻の感想

世界大会のはじまりと異能バトルの開幕

 5巻で、学園長の口から衝撃的なことを告げられる。なんと世界中にある遊戯を教える学園同士で大会のようなものをやることに。
 主人公たちの学園でも代表選手を選出するために、選抜大会を行うことに。
 そこで今までのキャラクターが総出演して競い合う。そんななか、学園入学時に主人公が助けた作中で一番最弱であったキャラ、桃貝桃花が静火と聖上院姫狐による特訓で異様な成長を見せる。
 この巻では今までにはなかった組み合わせでキャラ同士の日常を描いている。さらに、1巻で登場した時任ミミを再登場させることで、じつはかなり初期の段階で異能による遊戯ってのをやってて、これからさらに異能持ちのキャラが出てきますよって前振りを入れているんですね。そして、5巻のラスト、水葉と元生徒会役員のアイドルとの戦いになるはずが、水葉は戦う前に負傷。アイドルの子は正体を偽っていて、本当の姿はロシアのスパイ、クラウンだった。
 そして、6巻で、可憐はロシアの要する遊戯者、クラウンと戦います。
 このクラウンが今までの登場人物とは一線を画した存在として描かれています。彼はナノマシンによって精神を分離させられる存在。
 集団であり個人でもある彼は自分一人の生き死にを気にしない。
 彼はロシアの研究機関の実験により生まれた存在。
 彼らは俗にいうインターネットの個人個人のメタファーでしょう。
 姿を偽り、一アカウントの勝ち負けにこだわらないからこそ、どんな人物にも悪意を持って接することができる。
 しかし、その実態は社会の大きな流れに操られるロボットのような存在。
 親元から見捨てられれば簡単に今の地位が揺らぐし、勝ち負けを気にしないという考えでは本当の勝負には勝てないという流れにより、今までの遊戯者を立てていく。
 そのうえで、存在自体が異様なため今後の世界大会でこれ以上のヤツが出てくるのかというワクワク感が出るんですね。

白王子朝人について

 今回、気になるのが白王子朝人でしょう。
 彼は白王子家ではありますが、彼の兄の婚約者、聖上院姫狐にたいする恋により白王子家を裏切ることに。
 3巻で露骨でしたけど、白王子ってのが白雪姫の王子様って意味でさ。朝人、つまり朝の人ってことでさ。白雪”姫”を起こす人って意味なんですね。
 さらに大事なのが、彼が朝”人”で好きになる相手が姫”狐”ということです。3巻を読んでいた時は姫狐が裏切るのかな、とおもったんですが。それはミスリードでさ。
 彼女の本質を受け入れたうえで、人である朝人が彼女とどう向き合うかという人外婚姻譚だったんですね。
 なので彼は異常な世界で人として頑張るキャラとして描かれている。
 怪物だと自覚している紅蓮に対して対等な親友であろうとしたり、彼のためにできることは何かと考えたりさ。
 葛藤を抱えているキャラであることがわかるんですね。そのぶん、どうしてもヤムチャ的な扱いにもなっちゃうんですけどね。
 彼の今後の成長が楽しみです。

カリオストロの城

 今回、ラストである新キャラが出てきていてさ。そのキャラが7巻、もしかしたらこの大会全体のキーキャラになりそうなんだけどさ。
 そのうえでの予想で考えられるのが、たぶんカリオストロの城になるんじゃないかなと思う。
 まず、このシリーズってさ。妹の可憐にしろ、水葉にしろさ。
 ヒロインがどうやって主人公を遊戯の世界に連れてくるかって話だったんだよ。
 それが2回連続だったんですね。そう考えると、次は逆でさ。じゃあ、遊戯と離れてくれたら私と幸せに暮らしてくれますかって問いが来ると思うんですよ。
 つまりさ、6巻のラストのお姫さまとの恋愛も絡めた展開になるんじゃないでしょうか。そのうえで、もうひとひねり騙してくるかもしれない。
 あくまで予想ですけどね。

 では、7巻も追って報告いたします。

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?6 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?6 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?5 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?5 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?4 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?4 (MF文庫J)

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6+6.5巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-6+6.5巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-4巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-4巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? コミック 1-2巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? コミック 1-2巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-5巻セット

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ? ライトノベル 1-5巻セット

『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』8巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』8巻です。


通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?8 (ファンタジア文庫)
著者:井中だちま
イラストレーター:飯田ぽち
レーベル:富士見ファンタジア文庫
発売日: 2019/5/20
出版社: KADOKAWA / 富士見書房
ASIN: B07QQP5KDB

あらすじ
「なんとも言えないような不安を感じるような」大好真々子の不安は、ゲーム世界での急速な子供たちの親離れから始まり、真人たちも予測不可能な事態へと発展する!「自分は、反抗組織リベーレの、四天王の一人になりました!」突如パーティを離脱したポータを説得するため、四天王を操るボスが待つハハーデス城へと向かう真人たち。そして真々子は世界の危機を救うため―和乃、メディママとアイドルユニットを結成!?

シリーズ全体の魅力(1巻から7巻までのネタバレ注意

『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』とは、思春期の息子である大好真人とその母親である大好真々子のW主人公による異世界転生ものです。
 ライトノベルでは主人公とヒロインのW主人公で描かれる作品は珍しくありません。
 しかし、母親と息子を主人公にするのは珍しいです。
 そして、その二人の主人公がまんべんなく活躍している。
 親子を題材にした作品と言えば有名なのがドラゴンボールの悟空と悟飯。
 ヤンチャな父親のもとで生まれた真面目な優等生の子供。しかし、ナメック星編で明らかになった父親の血筋の因縁に息子である悟飯も巻き込まれ、戦いのさなかで大きく成長します。
 そしてセルゲーム編で主人公交代となるはずが、結局はブウ編で完全に主人公の座を悟空に戻さざるおえなくなった。
 エヴァンゲリオンでも、ゲンドウとシンジという父親と息子の冷たい対立が描かれていましたし、じつは母親とのゆがんだ関係を描いていますね。
 子供と親の関係というのは古今東西の作品でどちら側かの視点に立って描いていたんですが、この作品の珍しいのは親子の両方をクローズアップさせたうえで、親子の関係性というテーマもちゃんとコミカルに描いている点です。
 1巻では主人公の真人と母親の真々子の日常がまず描かれる。思春期に入った息子と、そんな息子に、どう接したらいいのかわからない母。そこから、シラーセという突然現れた存在により、主人公の真人と真々子は異世界へ。
 その後、シラーセから世界観の説明。二人が連れてこられた世界は国が開発した親と子の関係改善のためにつくられたMMORPG。
 そこでは真人と真々子だけでなく、様々な母子がMMORPGに連れてこられていた。
 二人はこの世界からの脱出を目指して、仮想の異世界を旅します。しかし、ここで面白いのが、この世界では息子よりも母親のほうがチートスキルを持っているんですよ。
 母親である大好真々子は、通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃なんです。
 つまり、戦闘の1ターンで息子の真人の倒す敵がいないんですよ。
 1巻の序盤で息子の真人は異世界で行って戦いたいと願う。なんで異世界に行きたいんですか、といえばさ。この辺の気持ちってのがあるんですよね。
 今ってさ、対立のない時代なんですよ。確かに、いまだに戦争もあるし、貧困もあるんだけどさ。科学文明が進み、理不尽が可視化されていくうちに、僕らの敵ってどこにいるんですかって気持ちはあると思うんですよ。
 ネットでの制裁が過激化されているんだけどさ。それも逆に理不尽が可視化されて誰のせいにもできない、自業自得とか自己責任って言葉が流行っているのも、理由が明らかになって、敵がいなくなっていくからです。だからこそ、異世界に倒すべき敵を求めている。しかし、そこに大人を持ち込みましょうってのがこのはなしなんですよ。
 そして、この世界では強い力を持った大人が異世界で暴走している。
 1巻から2巻は、その巻のメインヒロイン、ワイズとメディの母親、和乃とメディママ。彼女たちは異世界で得た強い力で自身の抱えていた欲望を実現させます。
 真々子はその母親たちと対立しながら、母としてどう生きるべきかを考えていき、息子である真人は、母親との摩擦による子供たちの心の闇を解きほぐすメンターの役割をするようになります。
 3巻、ここで反抗組織リベーレという1、2巻のときにもちょこちょこ出ていたキャラが3巻での中心人物となる。
 その組織が指摘するのが、僕がさっき言ったような強すぎる親の問題。組織の四天王の一人、アマンテはチート能力を持った真々子のせいで異世界でやりたかった冒険ができないのではないかという話をします。
 その問いに対して答えを出すことで、1巻からのテーマに一区切りつきました。
 そこから、4巻では明確な敵組織として表れた反抗組織リベーレとの対立の表面化と、二人目の四天王、ソレラの作戦により、真々子のチートに弱点が露見することで、能力の調整がはいります。
 そして、5巻からは天下一母道会が行われる。この世界の母親と母親としてのスキルを競い合う大会。真々子は5巻ではじめて大会の景品となったあるものを欲しがり、そのために大会に出ます。
 真人を優先して生きていた真々子がここではじめて自分の望みのために頑張ることで、彼女の成長を描く。この巻では、真々子は反抗組織リベーレからの妨害により、様々な姿になる。そして、自身をコピーした同一の存在と出会う。
 これによって強調されるのが属性の変化や、鏡合わせの人間と相対したうえで彼女自身は何者なのか、という話なんですね。
 そして、6巻ではオムニバス的なストーリーにより、MMORPGとして主人公たちが守らなければいけない世界の協調、7巻で主人公の成長が描かれる。
 このうえで、8巻に続きます。 

子供の親離れ、自立

8巻の導入は不安の煽り方が上手いです。
大好真々子の息子である真人が、母親の力を借りずにモンスターたちと戦う場面から始まる。そこはコミカルに描かれているが、じつは今回の騒動を予兆させるものでした。
ギルドで新たなクエストを探していると、子供たちによる不自然な親離れが起きていることを知る真人たち。さらに、反抗組織リベーレの親玉が指名手配されていることも知り。彼らはどちらかを選ばなければいけないという選択の瞬間がある。これにより、片方を優先したときに本当にこれでよかったのか、という不安が読者の心に残ります。
彼らは母親と子供の問題を解決しに行く。すると子供たちが胸につけているバッジが原因であることがわかりさっそく外すように呼びかける。これで表面上は解決したようにみえますが、あくまでセリフ劇で終始しており、普段の真々子さんによる絵映えのする解決をしてないため。真々子さんらしくないなってさ、おもうので、これもまたこの先の不安を煽っている。
その上で、次の日にポーターがいなくなり、彼女は四天王となる。
8巻の導入は、明るいんだけどどこか不安みたいな状態から始まり、その不安がポーターの失踪で具現化された、ように読者は考える。
しかし、そこがミスリードで、彼女を助けようと動いていくうちに主人公たちが大きな流れに巻き込まれていることに読者は気づくんです。
ここの流れが、今回すごい上手いんですよ。

息子、母はどうするのか

今回、本作の親と子によるW主人公という特徴が活かされた展開でした。
子供が親から自立する瞬間を本作では描き、ではその上で母親はどうするべきか、というアンサーにも答えている。
真々子が母親としての決断をした瞬間、そこから前半の不安がは一気に吹き飛び、シリーズ全体の魅力である母親無双がはじまる。
今回素晴らしいのは、今までこの世界で一度は敵として真々子の前に立ちはだかった、和乃、メディママが味方として協力するところです。
後半では、二人の母親としての成長も描いている。そこから、もう一人の主人公である息子の真人に合流するまでの流れも熱い。
ポーターと、その母を救いたいと願う真人、彼が思春期の子供の母親に対する気持ちの汲み取る能力は高く、今まで様々なキャラクターのメンターとなってきた。
今回もその強みを発揮した。その上で、彼自身が苦境に立たされた時に母の真々子に頼ることもできるようになった点は彼の成長した部分だろう。

9巻への期待

さて、9巻からは反抗組織、リベーレとの最終決戦。もうすぐ終盤に近づいているって気がしますね。
今まで、リベーレに所属する四天王の3人はコミカルな悪役として描かれてきましたが、その実、彼女たちの本音、どんな人生を送り、どのような考えで母親と子供の絆を邪魔するのかが描かれていなかった。
一応、表向きの理由として彼女たちには母親がいないという環境的要因は強調されていました。
それがラストでは解決するのではないかと思われる場面もあったのですが。そうであってもって感じなんですよね。
それが9巻から描かれるのかは今から楽しみです。

それでは、次巻も追って報告いたします。

『スコップ無双2』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『スコップ無双2』です。


スコップ無双2 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ (MF文庫J)
著者:つちせ八十八
イラストレーター:憂姫はぐれ
レーベル:MF文庫J
発売日: 2019/5/25
出版社: KADOKAWA/メディアファクトリー
ASIN: B07QZC8DKW

あらすじ
砂漠のドラゴンをスコップ波動砲で撃墜したアラン達は水の巫女改めすこ巫女・ユリアの温泉スコップ(えろい)を満喫しつつ、オーブ探索の旅を続けていた。
次に訪れた氷の国では古代の賢者・リーズフェルトの記憶を鉱夫禁忌教典で掘り起こし、敵を鉱夫隕石招来で一撃粉砕。オーブも楽勝入手。
とてつもないスコップ無双で旅は順調そのものだがリティシア姫はふと不安を覚える。
オーブが集まれば旅は終わり、鉱夫様ともお別れ。
それでもお傍にいたい姫は、なぜか世界征服の決意を固めてしまう。
「私は人を超えます――すこぷりんせすですこっぷ!」
震えよ人類、これが究極のヒロインだ。

オーブを集めるロードムービー

スコップ無双はストーリーラインとしては、いわゆるドラゴンボールの形式を取っている。
旅の目的として、ゴールを読者にわかるようにしたほうが達成感があってですね。オーブという目に見える物質にすることで一つずつ集めていくことでゴールに近づいていることが可視化されているんです。
今回は旅が始まったばかりによくある、主人公はどういうやつか、主人公の旅の同行者たちの決断により、今後の旅の期待感が高まるという構成になっている。

旅の中でのそれぞれの決意

一巻からずっと続くスコップ無双。
能力としては、掘る、埋めるの概念が通じるものにはすべて干渉することができるジョジョじみた能力であることがわかってきましたね。
そんな中、主人公の旅の同行者たちも、それぞれの旅の目的を決意します。
この辺が面白いんですね。今回はお姫さまがクローズアップされましたが、じつはカティアやアリスなども旅での目的が読者に明らかになるように描写されています。
ギャグにしながらもキャラクター一人一人の心理の変化が丁寧に描かれていますから。彼女たちを応援したいと思わせてくれるとこがいいです。

姫はどうなるのか

今回、スゴイのはお姫さまのリティシアですね。一巻の時から、精神的に追いつめられた状態から主人公のアランから助けられる。
白馬の王子さま効果で、彼に心酔するのはわかっていたんですが。その好意が尊敬に変わり、徐々に狂気に陥っているさまはギャグでありながらホラーですね。
この作品、コメディなのにキャラの心理の変化が上手いので先がすごい気になります。

では、次巻も楽しみにしてます。

スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ (MF文庫J)

スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ (MF文庫J)

スコップ無双2 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ (MF文庫J)

スコップ無双2 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ (MF文庫J)

Vtuberが小説を出版!?『仮想美少女シンギュラリティ』について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『仮想美少女シンギュラリティ』です。


仮想美少女シンギュラリティ (VTuber文庫)

著者:バーチャル美少女ねむ
イラストレーター:ホタテユウキ
レーベル:Vtuber文庫
発売日: 2019/4/29
ASIN: B07RB3XV55

あらすじ
脳と機械を繋ぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」研究者の「私」は、実験中に意識を失っている間に、自分がバーチャルYouTuberとしてアイドルデビューしたことに気づく。YouTubeに残されていたのは謎の仮想美少女「ねむ」が「お前は誰だ」と自問自答する奇妙な動画だった…
ねむの目的は何なのか? 人類はついに現実の肉体のくびきから開放され、新人類へと進化するのか? 進化を目前とした人類の葛藤と恐怖を鮮やかに描く黙示録。

バーチャル美少女ねむとは

 Vtuberによって出版された本というのは、企業勢ではピノ様がいますが。個人勢ではたぶん初。さらに、自身がVtuberであることを前面に押し出したうえでの小説の出版は初です。
 まず、バーチャル美少女ねむさんについて紹介します。
 バーチャル美少女ねむ、2017年9月から活動を開始。2016年から活動していたキズナアイがようやく僕を含めたYoutubeよりニコニコ動画を利用する一般のネットユーザーからも認知されるようになったころ。
 Vtuberってどんな子がいるんだろう、と思う人が多くてですね。そういった人たちのために、ニコニコ動画であげられた『バーチャルユーチューバー欲張りセット』をきっかけに、その存在が認知されるようになりました。

 自己紹介動画として、紹介されたその動画はとても奇妙なものでした。

 雷鳴の響く館をバックにして「お前は誰だ、お前は誰だ」とつぶやきながら、「私の名前はねむ……私はすべてを××する……」と言って動画が終わる。

 可愛い女の子が、自分がどういった子であるのかを語るのが多い中で、この意味深な自己紹介動画は異質なものとして扱われ、周囲から「お前こそ誰だ」「Vtuber界のラスボス」と呼ばれるようになります。

 そこから、再度、自己紹介動画を挙げるも、仮想通貨の投資家としての姿や、すべての人類をバーチャルの世界に引きずり込んで美少女に変える、人類美少女計画という野望はリスナーから奇天烈な印象を与えました。

 この人類美少女計画、いろいろな動画を見たうえで僕の解釈を話すと、文字通り全人類を美少女に変えるための計画。
 ブロックチェーンやAIによるシンギュラリティ、将来、技術革新が起きることを確信しているねむちゃんは、バーチャル空間では、人々がそれぞれが美少女のアイコンをかぶって生きていくことができる可能性に、人種差別、わずらわしい現実社会を変えられる希望を見出している。んで、その可能性を人々に喧伝するために、彼女はデビュー当初、かなりスペックの低いPCでカクつきながらもFACE RIGの美少女絵からデビューすることで、バーチャル美少女が、一部の企業や能力のある人だけでなく、一般の人でもできるのだという可能性の幅を広げることに挑戦していました。

 さらに、さきほど言ったようなシンギュラリティやブロックチェーン、仮想通貨の解説もすることで、自身の考える未来の提示もしました。
 また、こうしたVtuberの姿で知識を語るというスタイルは、まだ当時は主流になっていなかったので、そういう解説系のVtuberができるまでの源流にあたるVtuberno一人。
 他にも、現在DWUがやっているような人前には出れない特殊な身の上との対談をバーチャル美少女のガワを用意することで実現するという対談も初期の段階からやっており、当時マスコミ関係者もインタビューできなかったホワイトハッカーみなりんとも対談している。

 本作はそんな彼女が書いたSF小説です。

Vtuberデビューした彼女の自伝とフィクションの中間

 本作の魅力は、主人公が作者であるバーチャル美少女ねむ自身であるというもの。
 脳について研究している研究者の「私」がある日、意識を失い、その間にバーチャルユーチューバーとしてデビューしていたことに気づく。
 主人公の中に眠っている「ねむ」の目的はなんなのか、というのが本作の謎となります。
 面白いのが、Vtuberとしての彼女の今まで出した動画の話が作中に出てきましてね。
 バーチャル美少女ねむちゃんはどういう子でどんな動画がオススメかってのがこの本を読めばわかるんですね。
 僕自身、時々追ってましたから、懐かしいな~と思いながら読みました。

VR空間、オルタナの世界観

 本作の最大の謎に迫る中盤、そこでオルタナというVR CHATみたいなとこに潜るんだけどさ。
 そこのVR空間の表現がかなり上手かったですね。VRCHATはVRではやってないけど、PCで時々やってるんですよ。
 その時のはじめてその世界にやってきたときの感覚がそのまま小説になっているん感じがしてリアルでよかったです。
 作者のバーチャルにはまっていくまでの過程を追体験しているかのような感覚が読んでいてありました。

 では、次の作品も追って報告いたします。

 下に作中に話に出たねむちゃんのオススメ動画、チャンネル画面、本作のアマゾンリンクを張っておきます。
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仮想美少女シンギュラリティ (VTuber文庫)

仮想美少女シンギュラリティ (VTuber文庫)

『七つの魔剣が支配する』1巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『七つの魔剣が支配する』です。


七つの魔剣が支配する (電撃文庫)
著者:宇野朴人
イラストレーター:ミユキルリア
レーベル:電撃文庫
発売日: 2018/10/7
出版社: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ASIN: B07GZCDZ45

あらすじ
春――。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。魔法使いの卵たちを迎えるのは、満開の桜と魔法生物のパレード。喧噪の中、周囲の新入生たちと交誼を結ぶオリバーは、一人の少女に目を留める。腰に日本刀を提げたサムライ少女、ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今始まる──。

世界観とキャラクターの見せ方

まず、世界観とキャラクターの見せ方が上手いですね。本作の舞台はキンバリーという魔法学園。ハリーポッターのホグワーツを彷彿とさせるような雰囲気です。
そんななか、入学式で出会う五人の新入生の何気ない会話から物語がはじまる。話の内容は、入学式のパレードでトロールが行進しててさ。そうしたトロールを動物園の象みたいに扱うのはどうなのか、亜人にも人権があるのではって話でさ。
そこでわかりやすい対立軸として田舎でトロールに困らされていたガイと、トロールと心を通わせていたカティのそれぞれの経験からくるトロール観がぶつかります。
そこから、パレードである事件が起きて、ナナオというサムライの姿をした女の子がって流れがあってさ。
この辺の第1章で、6人がどんな子なのかってのが読者に印象づけられる。しかも、自己紹介はパレードの後に行っているからさ。名前より先にキャラを印象づけさせているから、感情移入しやすくなっている。
さらに、この会話で、今回の話の中心は亜人種の差別で、カティをメインにした話ですよってのがわかるんですね。

七つの魔剣

1巻では驚愕のラストで驚かされましたね。
本作でのタイトルが、七つの魔剣でしたので。最初にパレードに集まった6人とプラスアルファがなにかをする話ではないか。ではそのプラスアルファは誰だろうって思いながらついつい読んじゃうんですよね。
特に最初の印象がハリーポッターでしたから。勧善懲悪的な世界観かと思ってしまった。
だからこそ、ラストに驚きました。
なるほど、そういう話だったのかと感心しましたね。

W主人公

全体としては、オリバーとナナオのW主人公の作品なんですね。君の名は、とか、デスノートとか。男性と女性、洋風と和風。一見、正反対な二人。
しかし、物語が進むにつれて立場の正反対さはあっても、境遇や内面に似通ったものがある。だからこそ、この二人が今後、なんらかの関係性を築いてしまうんだろうなと思いました。

では、2巻もすぐ読みます。

七つの魔剣が支配するII (電撃文庫)

七つの魔剣が支配するII (電撃文庫)

七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

七つの魔剣が支配する (電撃文庫)


『食べないお嬢と魔術学園の料理番』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『食べないお嬢と魔術学園の料理番』です。
食べないお嬢と魔術学園の料理番 (ファンタジア文庫)

魔術学園にやってきた学食の料理番をやる主人公。学食は生徒から大人気となるが、ヒロインの生徒会長からは反対され、学食を廃止すべく、主人公に決闘を申し込む。しかし、そんなヒロインはある悩みを抱えていた……

美味しんぼのような食べ物で悩みを解決する、教師生徒もの、魔法学園ものの王道であるヒロインとの決闘、ラストでは悪人たちとのバトルがあり、その時、主人公の秘密が明らかになる。

色々な要素をこれでもかと詰め込んでいながら、破綻がない。面白かったです。

では、次巻も追って報告いたします。



食べないお嬢と魔術学園の料理番 (ファンタジア文庫)

食べないお嬢と魔術学園の料理番 (ファンタジア文庫)

『子守男子の日向くんは帰宅が早い』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『子守男子日向くんは帰宅が早い』です。


子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

妹ちゃんを優先して放課後はすぐ帰宅する主人公の日向くん。そんな日向くんと妹ちゃんと偶然関わったヒロインとの交流をきっかけに、彼の日常がちょっとずつ変わっていく。

いい作品ですよ。徹頭徹尾、ほんわかとした日常を描くことに集中している。だからこそ、終盤にその日常が壊れるのではないかってとこがさ。いわゆるよくあることだけども、しあわせなひと時に共感した後だと、かなり緊迫感が出てくる。

ラストの膝枕のシーンはよかったですね。
いい話でした。

では、次巻も追って報告いたします。


子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

『女神さま降臨!=非日常だと思った? 1 ~神のお告げで美少女と学園ミッションに挑むことになった~ 』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『女神さま降臨!=非日常だと思った? 1 ~神のお告げで美少女と学園ミッションに挑むことになった~ 』です。


女神さま降臨!=非日常だと思った? 1 ?神のお告げで美少女と学園ミッションに挑むことになった? (オーバーラップ文庫)

著者:白河勇人
イラストレーター:小林ちさと
レーベル:オーバーラップ文庫
発売日: 2019/1/24
出版社: オーバーラップ
ISBN-10: 4865544399
ISBN-13: 978-4865544398

あらすじ
運命の出会いを求めて、ミッションスタート!

日々に退屈しながらも「こんなもんだ」と思っていた高校二年生・灯月燈也の前に、ある日女神が現れた。
「救世主さまっ!」
「はい?」
女神曰く、燈也に恋した女悪魔のせいで、彼は【運命の人】と結ばれず、関わった人まで不幸になるという。
未来を修正するための課題を与えられ、サポート役もつくことになったが、現れたのはドSな完璧女王様の水澄紗妃で!?
さっそく水澄と一緒に委員長の手伝いや同級生のスカートめくりに奔走し──って思ってたのと違う!
女神様、いつになったら非日常が始まるんですか!?
日常以上ファンタジー未満の青春ラブコメ、ミッションスタート!!

今回は、女神様から与えられたミッションを解くことで一人の女の子の心理的な謎を解く話です。

毎回、僕がこういうストーリーラインでいつも例に挙げている誰もが知っている代表的な作品が夏目漱石の『こころ』。今度、有名ブロガーの骨しゃぶりっぽく話す予定なんですけどね。
あの作品でライトノベルの王道みたいなストーリーなんですよ。
青春の真っ只中で退屈を感じていた青年が、海で水着姿のヒロインと出会い、別の場所でまた再開し、ヒロインとその周囲と親交を深める。すると、どうやらそのヒロインにはある悩みがあり、それは過去に起因するものらしい。一方、主人公にも人生の転機が訪れ、それを導いてくれるもう一人のヒロインが主人公を誘惑する。
二人の間で揺れ動く主人公。しかし、あるアイテムがきっかけで主人公は正ヒロインの元に向かう。

『涼宮ハルヒの憂鬱』とかも、今言ったようなラインで動いてるでしょう。古今東西のラブコメライトノベルの王道なんですよ。

今回も、主人公は様々な人とミッションを通じて関わっていくうちに。そばでサポートしてくれるヒロインにすべて繋がっていくことがわかる。

でさ、謎解きパートでその謎を解いたことで、彼女と仲良くなり、自身の道を定める。

面白かったですよ。出てくるヒロインも全員かわいかったですから。

では、次も追って報告いたします。


『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』3巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』3巻です。


天才王子の赤字国家再生術3 ?そうだ、売国しよう? (GA文庫)
著者:鳥羽徹
イラストレーター:ファルまろ
レーベル:GA文庫
発売日: 2019/1/12
出版社: SBクリエイティブ
ISBN-10: 4815601151
ISBN-13: 978-4815601157

あらすじ
【「このライトノベルがすごい! 2019 文庫新作ランキング4位!】

「宗教勢力を利用して国の価値を爆上げだ!」

 帝国皇女との結婚話に端を発した騒動を切り抜けたウェイン。そんな彼の下に隣国カバリヌより使者が到着する。大陸西側の一大宗教・レベティア教の主催する『聖霊祭』にウェインを招待したいというのだ。
 絶大な影響力を持つ『選聖候』たちが集うイベントということもあり、ろくでもないことに巻き込まれることはほぼ確定。それでも隣国と友好関係を結ぶため、ウェインは渋々西へと向かうのだが――!?
 クセ者だらけの国際舞台に、天才王子が本格デビュー! 大人気の弱小国家運営譚第三章、ここに開幕!

今回も主人公の妹さんが家庭教師から国同士の歴史を聴くところから始まる。毎回、巻がでるごとに言ってますけど。妹さんって世界観や人間関係を説明するための聞き手として重要だし、内面が見えない主人公たちと違って、葛藤と成長が描かれているキャラなのが気になりますね。
んで、ウェインたちは聖霊祭に向かうことになる。古今東西、ある場所からある場所に行く時、必ず主人公はそこからなにかを持って帰る、というのが古典から続くお約束なんだけどさ。
ご多聞に漏れず、この話でもこの旅がウェインたちに大きな変化をもたらします。今回の話はその変化に備えるために。このキャラはこういう人ですよってのを改めて強調する回でしたね。
旅先で、主人公はある政治的な理由のため、4人のキャラクターと謁見する。しかし、そのキャラは血の通った人間というよりも。主人公たちの世界に存在する欲望をシンボル化させたような存在。そうした人物に会っていくことで、主人公に内在する正義や大切なものをあぶり出すというストーリーラインは童話的だ。
さらに、主人公の部下にも同じく主人公に対する不信を煽る悪魔のような存在が。
すべてキャラクターの内面や心の中に抱えているものをあぶり出すために現れたようなキャラが今回は多い。
だからこそ、今巻で彼がもっとも大事なものを表に出した上で、ラストの大きな変化に対して主人公はなにを選択するのかが次巻で重要になることだろう。

では、次巻も追って報告いたします。


『妹さえいればいい。』12巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『妹さえいればいい。』の12巻です。


妹さえいればいい。 (12) (ガガガ文庫)
著者:平坂読
イラストレーター:カントク
レーベル:ガガガ文庫
発売日: 2019/4/23
出版社: 小学館
ASIN: B07QQQ9CZC

あらすじ
小説を、書け。

主人公になることを諦め、淡々と機械のように小説を書き続ける羽島伊月。一方、可児那由多は小説を書くことをやめ、部屋に引きこもってひたすらゲームに没頭するようになってしまう。そんな二人を、不破春斗や白川京はどうにか立ち直らせようとするのだが……。主人公達が立ち止まっている間にも、時間は容赦なく流れ、世界は絶えず動き続ける。大野アシュリーや木曽撫子、羽島家にも大きな出来事が訪れて――。大人気青春ラブコメ群像劇、待望の第12弾!!交錯する人間模様の行く先を、刮目して見届けよ!!

可児と羽島がどうなるか

11巻のラストで決定的なすれ違いが起きてしまった可児と羽島。可児は小説を書くのをやめ、羽島は頭を丸める。
二人がどうなるのか、を見どころにおいて、二人の破局に、波紋が広がり周囲にも影響を与える。
この辺が群像劇としての面白さがありましたね。様々なキャラクターがそれぞれの想いを抱いて可児と羽島にぶつかるのは面白いですね。

大事の下にある小事

可児と羽島の破局、この大きな事件を見せつつ、じつはそれをきっかけに小さな事件を起こして確実に起きている変化を描いているのも上手い。
アシュリーとマキナの関係も進展し、イラストレーターの刹那と千尋の話も一区切りつきましたね。ラストに向けて諸々のここ気になってたんだよな〜ってとこが解決していくとこはいいですね。
白川京ちゃんも編集者として心理的な成長をしたところも次巻で活かされるのか気になりますね。

次巻のメインは

次巻で気になるのは白川京ちゃんと不破春斗ですね。今回、二人の心の揺らぎが描かれた場面が多かった印象です。
このへんのうちに秘めた想いが表に出るのかが次の巻で気になるとこですね。
二人の間では不破の片思いからはじまる恋愛関係が宙ぶらりんになってますから気になります。

では、次巻も追って報告いたします。

『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』の2巻です。


天才王子の赤字国家再生術2 ?そうだ、売国しよう? (GA文庫)
著者:鳥羽徹
イラストレーター:ファルまろ
レーベル:GA文庫
発売日: 2018/9/14
出版社: SBクリエイティブ
ISBN-10: 4797399007
ISBN-13: 978-4797399004

あらすじ
【「このライトノベルがすごい! 2019 文庫新作ランキング4位!】

皇女と縁談!? 100%罠じゃん!!

「私と一緒に帝国を奪りませんか?」
次代の名君として臣民に慕われつつ、楽隠居を目指して日々売国を画策する小国ナトラの王太子ウェイン。
僅かな手勢で隣国との戦争に勝利し、その名を内外に響かせた彼のもとに突然舞い込んだのは、後継争い
に揺れる帝国の皇女ロウェルミナとの縁談話だった!?
うますぎる話に警戒するウェインだったが、周囲は帝国との関係が深まるとお祭り騒ぎ。しかも非公式の
お見合いに訪れた皇女から提案されたのは、野望に溢れたもので――。
「超断りてえええええええええ! 」
天才王子による七転八倒な弱小国家運営譚第二章、ここに開幕!

巧みなストーリー

1巻に引き続き、キャラの立て方、ストーリーの魅せ方が上手いですね。家臣たちの王子である主人公に対する評価を描いて、それを横目で見るニニムの想い。そこから件の王子の元にやってくるニニム。公務中で家臣の前では王子としての姿を見せる主人公を印象づけた後で、彼らがいなくなった後で、「国売ってトンズラしてぇぇぇ!」と言わせる。
これで、この国の世界観、主人公の表向きと裏向きの性格、さらにはその裏向きの性格をヒロインにだけは見せれるんだよという尊さが良きなんだよね。今回、この二人の関係性がピックアップされる巻だからこそ、序盤のこの流れはうまい。

縁談の話が

で、一巻の時に手に入れた鉱山をどうするかって話を置いてから。主人公の縁談の話がやってくる。この作品、主人公の奇想天外な策によって読者や相手が騙されるとこに爽快感を生むストーリーだからさ、主人公やヒロインの心理を極力書いてないんだけど、まわりのモブの心理は細かくてさ。この縁談の流れも自然なんだよね。
今回はこの縁談が物語の起承転結の起に当たるんだけどさ。ここでうまく立ち回ってるのが主人公の妹ですよ。
兄の縁談を知った妹がヒロインに対してさ。彼女がお兄様と結婚するんじゃないのっていうさ。家臣や読者が聞けなかった質問をしちゃうんだよね。
このシリーズは妹がさ。いかにも主人公の庇護下にあるキャラですよ感を出してるんだけどさ。明らかにストーリーを動かすに重要な立場を任されてることが多いんですよね。しかも、じつは毎巻ごとにちょっとずつ成長してるんですよ。
この子、絶対、後々重要なキャラになりますよ。
でっ、この妹さんのおかげでヒロインと主人公の特別な関係性というのが読者に明らかになった上で、縁談の相手が明らかになる。

相手はまさかの

でっ、縁談の相手が明らかになる。
するとじつは主人公とヒロインの昔なじみのキャラであった。1巻で話題に出てた。帝国で学生してたって話がクローズアップされてさ。
その時に、皇女の身分を隠してじつは主人公とヒロインと仲良くしてた子がいてさ。その子が縁談の相手だった。
主人公とヒロインの間にある関係性のアドバンテージを有する第3の存在。恋愛ものだったら盛り上がるパターンなんですけどね。面白いのが、これが政略結婚でさ。どうやら学生時代、縁談の相手さんはキレ者だったらしくさ。そんな子が何の目的で会いに来たんだというところでさ。中盤は夏目漱石の『こころ』のような、キャラ同士の会話に心理的な謎があるミステリーのような雰囲気になるんだよね。
だからこそ、それが明らかになった時が面白いし、終盤にどうしてこうなるんだってドミノ倒しのような展開が待ってる。
面白かったですよ。では、また3巻も追って報告いたします。

『理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?』の2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?』の2巻です。


理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?2【電子特典付き】 (MF文庫J)
著者:三河ごーすと
イラストレーター:茨乃
レーベル:MF文庫J
発売日: 2019/1/25
出版社: KADOKAWA
ISBN-10: 4040655079
ISBN-13: 978-4040655079

あらすじ
無敵の父親>>>最強の軍団 年の差ラブコメ×魔法学園×父娘ファンタジー

史上最高ステータス値を記録し、最強のSランクとして《第一魔法騎士学園》に入学した白銀雪奈。
その父であり、表向きDランクの専業主夫である冬真は、人知れず陰の特殊部隊のエースとして世界の平和を維持していた。
だが、友を失った雪奈は学園最強の騎士団《ヘヴンリー・ロウズ》への入隊を望み、二人は新たな戦いへと巻き込まれていく――!
「戦争を経験したら……お父様の思う、いい子の雪奈じゃ、いられないかも、しれませんよ?」
「今までも、これからも。雪奈は俺の最高の娘だよ」
自立を望む尊い心につけ込まれ、地獄と化した戦地に向かう娘を救うために、無敵の父が真の実力を発揮する――!

初代ガンダムのブライトが主人公

 この作品は異能学園ものです。『とある魔術の禁書目録』とか『魔法科高校の劣等生』、『インフィニットストラトス』のように異能を鍛える学園を舞台にした作品です。
 時代は未来。この世界では胞子獣という怪物がいて、人々は既存の軍用兵器で彼らと戦ったが、勝つことができなかった。なので、コロニーのようなものを作って生き残った人々は避難し、若者たちは胞子獣対抗できる異能を訓練している。主人公はそんな世界で最強のSランクで周囲からこの世界を救うかもしれない英雄として期待される少女、白銀雪奈、でなく、その子の父親の白銀冬真。しかも彼は周囲からDランクとして扱われていた。しかし、じつは第一線で活躍する特殊部隊のエースで実戦スキルはかなり高かった。
 面白いですよ。異能学園もののいいところがさ。学校で伸ばすスキルを異能に置き換えて大衆向けの話にしながらも、学校の中でどう学んでいくべきか、ということに対していろんな問いを出しているとこがいいんですよね。
 こういった場合、だいたいが学校という狭い範囲内では評価されない人間が社会という実戦ではじつは有用な人間で、学校という箱庭はその枷でしかないという夢物語で終わりがちなんですが、この作品では、世界を変えうる天才がいたとして、そういう子をどう導いていけばこの世界はよくなるのか、という視点で描かれているのが新鮮です。
 人類というある組織が危機的な状況の中で、限られた資源と人材の中で突出した天才と向き合うことで状況を打開する。
 これと似たようなものが、『機動戦士ガンダム』のアムロです。
 この作品の状況って、機動戦士ガンダムでコロニーの襲撃から逃げるように地球を目指して出発した1話の戦艦の状況を惑星単位で大きくさせた話なんですよ。
 アムロが本作で世界最強とされる娘の雪奈。その娘の父である主人公の冬真の立ち位置はなんとそのアムロの上司であるブライトです。
 だから、設定や戦闘描写はライトノベルっぽくて面白いし、作中で語られるテーマは20代後半が読んでも面白いものになっている。
 1巻ではそうした状況の中でじつは父親のチート性を見せつけながら、絶望感のある急展開で世界観と主人公の強さを読者に印象付けました。
 2巻ではヒロインである主人公の娘の心理描写に重きを置くことで、娘との接し方に戸惑う父親としての彼の姿が浮き出た巻でした。
 

敵は身内

 今回の敵は身内。じつは胞子獣を神のように崇拝する組織の存在が1巻の後半で明らかになり、彼らと主人公の在籍する特殊部隊との戦いが今巻の導入でした。
 そこからのニュース報道により、胞子獣という脅威がいるにも関わらず政府は怪物でなく、人に銃を向けている、というのが一般の市民の反応であることがわかる。
 読者は序盤でその組織がどれだけ悪どいことをしているかわかっているから、市民が政府を非難し、敵視している様に憤りを感じるんですが、実際にマスメディアを通してみる1巻の序盤の戦闘の概略みたいなものがそこまでズレたものではないからさ。だれかが悪いと怒りをぶつけられない理不尽な状況に対するむなしさも感じるように描かれています。
 そこから、グランマリアという異能学園の生徒でありながら、学園を牛耳る生徒会長的な立場に立っている女の子が、世界を守るためにヘブンリー・ロウズというその学園の生徒のみで構成された軍隊を作っていて、そこに主人公の娘をスカウトした。1巻では、加入を断っていた雪奈でしたが、1巻の終盤の悲劇により、守れたかもしれないものが守れなかったという体験を経た彼女は加入を決意する。
 さらに、2巻からグランマリアは2巻の序盤での主人公たちの戦闘を世間に対して非難することで、市民から賛同を得ていた。
 いわゆる今のアメリカのトランプみたいな形でさ。政府の大人たちからは思ってもみない形で一人の少女が権力を持っている形となっていました。
 これにより、世間へのアピールとしての存在だったヘブンリー・ロウズがまだ若いのに、胞子獣と戦って世界を救うんだという流れになった。
 自分の娘も、胞子獣と戦う覚悟を固める。
 しかし、父親としても、世界最強の少女を育成する立場のものとしても、才能があるが経験や知識に乏しい若者たちが戦いに出向く形になるのは望ましくなかった。

最強の娘と父のすれ違い

 こういう状況があって、娘と父親がすれ違いだすってのが今巻の話です。
 今巻は各キャラクターの心理描写が上手でしたね。
 冬真と雪奈はもちろんのこと、彼女たちの周囲のキャラクターのなかにある葛藤がなかなかよかったです。
 たくさんのキャラクターの心理描写が重なっていくことで、その裏でかすかに動いていたことが大きな波となり、最終的にヒロインにある決断をとらせたって展開は上手かったです。
 次巻もどうなるのか、今から楽しみです。

『陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ』の2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ』の2巻です。


陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ……2 (ファンタジア文庫)
著者:佐倉唄
イラストレーター: 桝石きのと
レーベル:ファンタジア文庫
発売日: 2018/10/20
出版社: KADOKAWA
ISBN-10: 4040728327
ISBN-13: 978-4040728322

あらすじ
陰キャラな俺・九条静紀に、林間学校の季節がやってきた。皆でカレー作りだの、テントでお泊まりだの、そんなの楽しむ奴は、陽キャラだけだ。(一応)恋人になった陽キャ度100万%の春日陽奈ときたら、そりゃもうテンションアゲアゲで…「キャンプファイヤーで、静紀くんと絶対キスしてみせるね」うん、絶対回避しよう。いかに地味に忍ぶか考えていたら、「林間学校で、レミを陰キャアイドルに育ててほしいの!」と、マジモードな新宮からも意味不明なお願いを受けてしまう。何か事情がありそうだから“仕方なく”協力するが、なんで陽キャイベントで、俺が頑張ってるんですかね…。

レミがメイン

今回はアイドル志望のレミをメインとした巻でした。彼女はアイドルになりたい女の子。主人公のアドバイスで陰キャラ受けをするアイドルを目指します。
そんななかで前半のテーマとなったのが夢。レミがアイドルを目指すに当たって、障害となったのが彼女の夢を否定する教師の存在。
その教師の考えを変えることができるのか、というのが前半のゴールですよってわかるように何回か彼がレミに突っかかる場面がありましたね。
主人公がレミをサポートしていくうちに彼女の本心、彼女がなぜアイドルをやりたいのかという想いを知っていくことになる。これにより、読者にとっての「応援したいヒロイン」になっていく。そのボルテージが高まったところで、最後のレミの夢に対する熱い叫びは心に響きます。

舞台は林間学校

今回の舞台は林間学校。人と関わりたくない主人公は嫌々林間学校に参加します。また、レミからのお願いや恋人の春日のアプローチにより、林間学校に積極的に参加せざる終えなくなる。
どんな時も陰キャラであろうとする主人公、彼に同調する秋月、彼のことが好きすぎる春日、夢を追いかけるレミ。
林間学校というイベントに対してのそれぞれの掛け合いは面白い。

2幕構成

でっ、これがじつは巻の半分で、後半でメインヒロインと主人公の間で波乱が起きる。
これが前半でのストーリーに関わっていることで、寝耳に水だったのでヒヤっとしました。
正反対の2人がお互いとどう向き合っていくか。2人の恋はまだまだ続くが今後も波乱もありそう。

では、次巻も追って報告いたします。

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ……2 (ファンタジア文庫)

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ……2 (ファンタジア文庫)

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ…… (ファンタジア文庫)

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ…… (ファンタジア文庫)

『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』の1巻について


悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました【電子特典付き】 (角川ビーンズ文庫)
著者:永瀬さらさ
イラストレーター:紫真衣
レーベル:角川ビーンズ文庫
発売日: 2017/9/1
出版社: KADOKAWA
ISBN-10: 4041060362
ISBN-13: 978-4041060360

あらすじ
乙女ゲーム世界に、悪役令嬢転生したアイリーン。前世の記憶だと、この先は破滅ルートだけ。破滅フラグの起点、ラスボス・クロードを攻略して恋人になれば、新しい展開があるかも!? 一発逆転で幸せになれるか!?
電子特典は、クロードがアイリーンに「君は僕を愛しているのか?」と迫る、書き下ろしショートストーリーを収録!

悪役令嬢もの

異世界転生ものと同じくらい悪役令嬢ものも数を増やしています。来年には『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』もアニメ化しますので、その勢いはさらに強くなるでしょう。
しかし、悪役令嬢ものといえば、数が増えるに従い、最初の頃に決まった王道からの脱却を目指し始めるのが世のコンテンツの宿命ですので。わりと異端なものが増えてくる。
その中で久々に既存の枠組みからの外しをやりながらもストーリーは王道でキュンキュンできる悪役令嬢ものがこちらです。

セーブザキャット

物語の始まりは婚約破棄直後、主人公は前世の記憶を取り戻し、自分は前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢になっていることに気づきます。
自分がしていない正ヒロインのいじめの首謀者に祭り上げられ、学園からの悪い噂は絶えない、主人公が手がけた事業も振った王子のものに。
まさしく、ドン底からのスタート。記憶を取り戻したばかりの混乱を沈めるため、自分の周辺で起きたことについての説明がなされた上で、彼女が訪れたのが物語のラスボス、魔王クロードのもと。
配下に毒入りのお菓子を渡したり、人質にしたり、クロード視点から見たら、「なんだこの女は」ってなるところで、なんと彼女は魔王に求婚しにきたらしいということを知る。
少女漫画の王道である第一印象最悪ってとこから、彼女はクロードの周辺で起きる問題を解決していく。
この問題の解決の仕方が序盤で描かれた王子に奪われた事業でできた人脈でさ。ヒロインの視点ではなんてことのないように書かれてたけど。事業の関係でヒロインと関わっていた人は彼女の本当の良さみたいなのを知っててさ。
なんだこの人いい人じゃんっていう気分にさ。読者もクロードも思うんだよね。その辺のセーブザキャットがよかったですよ。

本当の恋に気づく瞬間

そして、クロードの周辺がよくなると思われた最中。主人公がある事件に巻き込まれる。ここで、物語のなかで謎とされていたクロードがなぜラスボスとなったのかも明らかになり。
離れ離れとなったヒロインとクロードがそれぞれの心の中で互いが互いを大切に思うことに気づく。
その心の中での気づきが、本来乙女ゲームでは敵役としての設定だったものが互いが秘めていた想いを気付かせる仕掛けになっているってのがなかなかよかったです。

では、次巻も追って報告いたします。

『異世界召喚された俺がHできない理由』について

さて、今回紹介する作品がこちら、『異世界召喚された俺がHできない理由』です。


異世界召喚された俺がHできない理由 Answer.1 全部MPチートのせい (オーバーラップ文庫)
著者:大城功太
イラストレーター:sune
レーベル:オーバーラップ文庫
発売日: 2019/1/24
出版社: オーバーラップ
ISBN-10: 4865544372
ISBN-13: 978-4865544374

あらすじ
美少女冒険者と淫蕩生活!

隠れオタクの高校生・守口悠人(もりぐちゆうと)は、美少女冒険者ミリアの魔法により憧れの異世界に召喚される。
ミリアに誘われるまま冒険者として過ごすことになった悠人は、魔法を使うと消費する【МP】のステータスが規格外と判明。
魔法チートで一流冒険者を目指すと張り切る悠人だが、この異世界には問題があった。
МPがいわゆる【マジックポイント】ではなく【ムラムラパワー】――つまり性欲で!?
性欲が溜まるほどМPが溜まり、強力な魔法が使えるこの世界。
悠人を強くするため、ミリアがえっちなサービスでMPを高めようと迫ってきて!?
悠人の理性が試される冒険者生活が始まる――!えっちでイケない異世界ファンタジー!

ヒロインとのエッチな日常

エッチなことをしなければ魔法が打てない。仕方ないよねな日常はなかなかいい。ヒロインのミリアと獣人のメイドさんとのイチャイチャな日々はかわいくていいですね。
ムラムラを解消すると、強くなれない、という設定もあるので生殺しになっているとこも初々しさが出ている。

怒涛の下ネタ

日常での軽い触れ合いから、大きなサービスシーンの時に互いの気持ちを確認したことで、読者からもわかる形でヒロインが主人公にとって大事な存在になったというイベント後、中盤では巨大な敵を倒すために打ち立てたコメディ色の強い闘いにより、タガが外れたように下ネタが増えていく。
後半の重要人物である侍キャラは面白かったですね。下ネタは前半にもありましたが、それがジャブであったんだと思わせられるくらいたくさん出てきてつい吹き出してしまいました。

後半の展開

そっから、ラストで密かに貼られていた伏線が明らかになり、主人公は選択を迫られる。この選択もヒロインとの日常を丁寧に描いてからだったんで、彼の気持ちに共感できる。もちろんある決断をして殻を破った主人公は強くなる。そこからのラストバトルの熱さはドラゴンと戦った時のコメディな戦いとのギャップがよかった。
あんな彼も大好きなもののためにこんなに変われるんだぜって感じがよかったです。

では、次巻も追って報告いたします。