そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』の2巻です。


天才王子の赤字国家再生術2 ?そうだ、売国しよう? (GA文庫)
著者:鳥羽徹
イラストレーター:ファルまろ
レーベル:GA文庫
発売日: 2018/9/14
出版社: SBクリエイティブ
ISBN-10: 4797399007
ISBN-13: 978-4797399004

あらすじ
【「このライトノベルがすごい! 2019 文庫新作ランキング4位!】

皇女と縁談!? 100%罠じゃん!!

「私と一緒に帝国を奪りませんか?」
次代の名君として臣民に慕われつつ、楽隠居を目指して日々売国を画策する小国ナトラの王太子ウェイン。
僅かな手勢で隣国との戦争に勝利し、その名を内外に響かせた彼のもとに突然舞い込んだのは、後継争い
に揺れる帝国の皇女ロウェルミナとの縁談話だった!?
うますぎる話に警戒するウェインだったが、周囲は帝国との関係が深まるとお祭り騒ぎ。しかも非公式の
お見合いに訪れた皇女から提案されたのは、野望に溢れたもので――。
「超断りてえええええええええ! 」
天才王子による七転八倒な弱小国家運営譚第二章、ここに開幕!

巧みなストーリー

1巻に引き続き、キャラの立て方、ストーリーの魅せ方が上手いですね。家臣たちの王子である主人公に対する評価を描いて、それを横目で見るニニムの想い。そこから件の王子の元にやってくるニニム。公務中で家臣の前では王子としての姿を見せる主人公を印象づけた後で、彼らがいなくなった後で、「国売ってトンズラしてぇぇぇ!」と言わせる。
これで、この国の世界観、主人公の表向きと裏向きの性格、さらにはその裏向きの性格をヒロインにだけは見せれるんだよという尊さが良きなんだよね。今回、この二人の関係性がピックアップされる巻だからこそ、序盤のこの流れはうまい。

縁談の話が

で、一巻の時に手に入れた鉱山をどうするかって話を置いてから。主人公の縁談の話がやってくる。この作品、主人公の奇想天外な策によって読者や相手が騙されるとこに爽快感を生むストーリーだからさ、主人公やヒロインの心理を極力書いてないんだけど、まわりのモブの心理は細かくてさ。この縁談の流れも自然なんだよね。
今回はこの縁談が物語の起承転結の起に当たるんだけどさ。ここでうまく立ち回ってるのが主人公の妹ですよ。
兄の縁談を知った妹がヒロインに対してさ。彼女がお兄様と結婚するんじゃないのっていうさ。家臣や読者が聞けなかった質問をしちゃうんだよね。
このシリーズは妹がさ。いかにも主人公の庇護下にあるキャラですよ感を出してるんだけどさ。明らかにストーリーを動かすに重要な立場を任されてることが多いんですよね。しかも、じつは毎巻ごとにちょっとずつ成長してるんですよ。
この子、絶対、後々重要なキャラになりますよ。
でっ、この妹さんのおかげでヒロインと主人公の特別な関係性というのが読者に明らかになった上で、縁談の相手が明らかになる。

相手はまさかの

でっ、縁談の相手が明らかになる。
するとじつは主人公とヒロインの昔なじみのキャラであった。1巻で話題に出てた。帝国で学生してたって話がクローズアップされてさ。
その時に、皇女の身分を隠してじつは主人公とヒロインと仲良くしてた子がいてさ。その子が縁談の相手だった。
主人公とヒロインの間にある関係性のアドバンテージを有する第3の存在。恋愛ものだったら盛り上がるパターンなんですけどね。面白いのが、これが政略結婚でさ。どうやら学生時代、縁談の相手さんはキレ者だったらしくさ。そんな子が何の目的で会いに来たんだというところでさ。中盤は夏目漱石の『こころ』のような、キャラ同士の会話に心理的な謎があるミステリーのような雰囲気になるんだよね。
だからこそ、それが明らかになった時が面白いし、終盤にどうしてこうなるんだってドミノ倒しのような展開が待ってる。
面白かったですよ。では、また3巻も追って報告いたします。