そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

Vtuberが小説を出版!?『仮想美少女シンギュラリティ』について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『仮想美少女シンギュラリティ』です。


仮想美少女シンギュラリティ (VTuber文庫)

著者:バーチャル美少女ねむ
イラストレーター:ホタテユウキ
レーベル:Vtuber文庫
発売日: 2019/4/29
ASIN: B07RB3XV55

あらすじ
脳と機械を繋ぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」研究者の「私」は、実験中に意識を失っている間に、自分がバーチャルYouTuberとしてアイドルデビューしたことに気づく。YouTubeに残されていたのは謎の仮想美少女「ねむ」が「お前は誰だ」と自問自答する奇妙な動画だった…
ねむの目的は何なのか? 人類はついに現実の肉体のくびきから開放され、新人類へと進化するのか? 進化を目前とした人類の葛藤と恐怖を鮮やかに描く黙示録。

バーチャル美少女ねむとは

 Vtuberによって出版された本というのは、企業勢ではピノ様がいますが。個人勢ではたぶん初。さらに、自身がVtuberであることを前面に押し出したうえでの小説の出版は初です。
 まず、バーチャル美少女ねむさんについて紹介します。
 バーチャル美少女ねむ、2017年9月から活動を開始。2016年から活動していたキズナアイがようやく僕を含めたYoutubeよりニコニコ動画を利用する一般のネットユーザーからも認知されるようになったころ。
 Vtuberってどんな子がいるんだろう、と思う人が多くてですね。そういった人たちのために、ニコニコ動画であげられた『バーチャルユーチューバー欲張りセット』をきっかけに、その存在が認知されるようになりました。

 自己紹介動画として、紹介されたその動画はとても奇妙なものでした。

 雷鳴の響く館をバックにして「お前は誰だ、お前は誰だ」とつぶやきながら、「私の名前はねむ……私はすべてを××する……」と言って動画が終わる。

 可愛い女の子が、自分がどういった子であるのかを語るのが多い中で、この意味深な自己紹介動画は異質なものとして扱われ、周囲から「お前こそ誰だ」「Vtuber界のラスボス」と呼ばれるようになります。

 そこから、再度、自己紹介動画を挙げるも、仮想通貨の投資家としての姿や、すべての人類をバーチャルの世界に引きずり込んで美少女に変える、人類美少女計画という野望はリスナーから奇天烈な印象を与えました。

 この人類美少女計画、いろいろな動画を見たうえで僕の解釈を話すと、文字通り全人類を美少女に変えるための計画。
 ブロックチェーンやAIによるシンギュラリティ、将来、技術革新が起きることを確信しているねむちゃんは、バーチャル空間では、人々がそれぞれが美少女のアイコンをかぶって生きていくことができる可能性に、人種差別、わずらわしい現実社会を変えられる希望を見出している。んで、その可能性を人々に喧伝するために、彼女はデビュー当初、かなりスペックの低いPCでカクつきながらもFACE RIGの美少女絵からデビューすることで、バーチャル美少女が、一部の企業や能力のある人だけでなく、一般の人でもできるのだという可能性の幅を広げることに挑戦していました。

 さらに、さきほど言ったようなシンギュラリティやブロックチェーン、仮想通貨の解説もすることで、自身の考える未来の提示もしました。
 また、こうしたVtuberの姿で知識を語るというスタイルは、まだ当時は主流になっていなかったので、そういう解説系のVtuberができるまでの源流にあたるVtuberno一人。
 他にも、現在DWUがやっているような人前には出れない特殊な身の上との対談をバーチャル美少女のガワを用意することで実現するという対談も初期の段階からやっており、当時マスコミ関係者もインタビューできなかったホワイトハッカーみなりんとも対談している。

 本作はそんな彼女が書いたSF小説です。

Vtuberデビューした彼女の自伝とフィクションの中間

 本作の魅力は、主人公が作者であるバーチャル美少女ねむ自身であるというもの。
 脳について研究している研究者の「私」がある日、意識を失い、その間にバーチャルユーチューバーとしてデビューしていたことに気づく。
 主人公の中に眠っている「ねむ」の目的はなんなのか、というのが本作の謎となります。
 面白いのが、Vtuberとしての彼女の今まで出した動画の話が作中に出てきましてね。
 バーチャル美少女ねむちゃんはどういう子でどんな動画がオススメかってのがこの本を読めばわかるんですね。
 僕自身、時々追ってましたから、懐かしいな~と思いながら読みました。

VR空間、オルタナの世界観

 本作の最大の謎に迫る中盤、そこでオルタナというVR CHATみたいなとこに潜るんだけどさ。
 そこのVR空間の表現がかなり上手かったですね。VRCHATはVRではやってないけど、PCで時々やってるんですよ。
 その時のはじめてその世界にやってきたときの感覚がそのまま小説になっているん感じがしてリアルでよかったです。
 作者のバーチャルにはまっていくまでの過程を追体験しているかのような感覚が読んでいてありました。

 では、次の作品も追って報告いたします。

 下に作中に話に出たねむちゃんのオススメ動画、チャンネル画面、本作のアマゾンリンクを張っておきます。
www.youtube.com
www.youtube.com
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仮想美少女シンギュラリティ (VTuber文庫)

仮想美少女シンギュラリティ (VTuber文庫)