そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『アネハメ 姉の最強魔眼に魅入られて』について

 今回紹介する作品はこちら、『アネハメ 姉の最強魔眼に魅入られて』です。

アネハメ 姉の最強魔眼に魅入られて (美少女文庫)

もくじ

どんな話か

 主人公の山吹透とヒロインの山吹薫子は血のつながった弟と姉である。二人は魔術師として街にはびこる瘴気を浄化し、そこから現れる怪異と戦っている。二人の父と母は怪異に殺されている。姉は最強の魔眼の持ち主だ。炎を操って怪異を倒す。一方、弟の透はまだ能力を覚醒していない。しかし内には秘めた才能がある。透は姉の薫子よりも未熟であることに負い目を感じており、早く強くなりたいと願っている。弟の願いを姉は気づいている。
 二人は魔術師としての能力を覚醒させるため、禁断の儀式に手を染めることにする。それは近親による性行為によって行われるものだった。怪異との戦いが激化していくなか、二人は互いを守るために、二人で戦い続けるために今夜も身体を交わる。

どこが面白いか

 日常に横たわる非日常での戦いを描いた現代異能力ものとしての面白さを保ちつつ、近親でのフランクな肉体関係のエロスの両方を描ききっています。かなり面白いです。
 本作の序盤に描かれているのは、学生としての透から見た日常風景。両親を殺され、怪異と戦う危険と隣り合わせの透にとっては日常はとても冷めたものとして描かれている。そこが嫌味な感じがせず、彼がなぜ世界をこんなふうに見るのだろうという興味を掻き立てられました。
 そんな彼は姉に対しては特別な思い入れがある。この思い入れがあるというのは劣情を抱いていたというのではなく、唯一の肉親として、秘密を共有する戦いのパートナーとしての想い。守りたいという思いもあるし、隣に並べる存在になりたいという思いもある。だからこそ、そのために儀式を行いたいと考える。
 このスタンスは最後まで崩れないんですよね。だけど読んでてかなりエロいと感じました。
 性行為に対する二人の反応はかなり冷めているというかフランクな感じなんです。かといって義務感でやっているわけではない。
 禁忌の儀式であり、禁断の関係であるはずなのに、罪悪感みたいなのがないんですね。
 そして、身体を重ねるたびに信頼関係を深めていっている。その点も読んでて面白かったです。

キャラクターの魅力

 姉である山吹薫子はとても魅力的なキャラクターです。表紙のモデル顔負けのプロポーションで妖艶に微笑む姿はとても美しく官能的です。そして、とても強い。本作は近親相姦を題材にしたR18であると同時に、怪異と魔術師の戦いを主軸とした異能バトルでもあります。そのため、戦闘描写にも力を入れており、姉の強さは周囲の魔術師と比べても別格の強さとして描かれています。
 近親相姦による禁断の儀式を通して、弟にも異能が覚醒し、戦闘で活躍するようになるのですが、姉が最強の魔眼の持ち主であるという点は最後までブレないんです。そんな女性に対し、主人公は中出しができる。
 姉には婚約者がおり、本作の関係には近親相姦の要素と同時にNTRとしての側面もあります。
 しかし、それに対しての征服感や優位性、背徳感よりも、二人の間に芽生える信頼関係の描写に重きをおいているように感じます。こういった要素もとても魅力的です。

どこがエロいか

 本作には異能ものとしての側面があります。ヒロインの山吹薫子は作中では最強の存在です。そんな彼女が弟である山吹透に身体を許す。
そして、彼女には婚約者がいる。この婚約者がすごい悪い人間というわけでもなく、かなり善良な人間。
 ある種の優位性や背徳感を煽る設定です。で、ありながら二人の近親相姦に対する反応はフランクだ。
 いわゆる罪悪感のようなものや特別感がない。
 しかし、かといって始終冷めた感じでもない。弱火で煮込まれた鍋のように、最初は当たり前のようにやっていく行為が回数を重ねるごとに熱を帯びている。読んでいるとそう感じる。
 そして、近親相姦による儀式に効果があることを実感すればするほど、薄かった禁忌感はほぼなくなり、身体を重ねるのは当然になっていく。開放された二人の求め合いが激しくなるのに、カタルシスを感じます。

 とても面白い作品です。おすすめなので、ぜひ読んでみてください。