そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『合コン行ったら姉がいた(美少女文庫)』について

 今回紹介する作品は、『合コン行ったら姉がいた』です。
合コン行ったら姉がいた (美少女文庫)
もくじ

どんな話か

 主人公の守人は、合コンで出会った女性が生き別れの姉、真衣であることに気づく。二人は孤児で、同じ孤児院で育った。
 守人は、姉を慕っていた。しかし、ある日を境に真衣は守人を拒絶する態度を取るようになった。その後、弟は里親に引き取られ、姉と離れることになる。
 その後、守人は姉が裕福な家に養子となったことを知る。自分が幸せになるために、姉の真衣は弟を普通の里親に出し、姉は裕福な家に行ったのではないか。そう考えた守人は真衣を恨むようになる。
 こうして、守人は大学生に、真衣がOLになったときに、偶然参加した合コンで姉と再会したことを守人は知る。
 弟は姉であるに復讐するために、彼女を自分にベタぼれさせ、幸福の絶頂で地獄に叩き落とそうと考えていた。
 真衣は次第に守人にのめり込むようになる。果たして二人の関係の行方はどうなるのか。

どこが面白いか

 背徳的でエロく。終盤までハラハラとした気分で読みました。まず、表紙がすごいんですよね。
 いかにも肉感的な女性が酒を飲んでこちらに微笑んでいる。右上の方で下着のあられのない姿でこちらを見上げている。
 お持ち帰りされたんだな、てことがわかりますよね。そして、タイトルにこう書かれています。
 「合コン行ったら」ーーなるほどね、合コンでこの子と出会ったのね。
 「姉がいた」ーーえっ、姉弟ものなの!? 合コンで出会ったのに!? なんで右上になったの!?
 そう思って、よく見てみると、緑色の吹き出しで「向こうはこっちに気づいていない」
 ーーああ、なるほどね。でも気づいてないってそんなことあるぅ!? って思うじゃないですか。
 さらに、よく見てみたらちぃさぁく書いてあるんですよ。「生き別れの」「恨みがある」と。
 つまり、生き別れの姉と弟が合コンで再会してそのままヤることやった話らしい、と。
 この表紙を見て、どんな話かわかった時点で、えっこの作品どうなんの!?って思うんですよね。
 物語の展開も面白かったです。ヒロインが主人公にハマっていくまでの流れが丁寧に感じました。
 濃厚で、サディスティックなプレイに、彼にハマっていく、彼女の心理描写がとてもいいです。
 真実を知る我々、読者はある種の背徳感を感じると同時に、どう収拾つけるんだろうって気にならせて、ページをめくりたくなるんです。
 本作は話が進めば進むほど、でもこの問題どうすんの、と思うようなものが出てくるんですよ。
 それが思わぬ要素が終盤に出てきたときはビックリしました。そうなるんだって。
 とても面白かったです。

キャラクターの魅力

 キャラクターたちもとても魅力的です。
 ヒロインの真衣もとても官能的です。本作はヒロインを幸福の絶頂にしたあとで、それを地獄に叩き起こそうとする話です。
 なので、ヒロインと主人公の心理描写に重きをおいています。
 ヒロインが主人公に対し、思いを寄せていく場面。ヒロインの恋心に熱を帯びていく心理に比例するように、復讐心を燃やす弟の心理。
 このへんが読んでてヒリつくんですよ。手にかく汗が冷たく感じるような緊張感がありました。で、ありながらも調教もののような、一人の女性が主人公の思い通りに精神を変化させていくエロスを感じました。
 この辺は文字だからこそ感じるエロスを読み取れた。

どうエロいのか

 この物語はどうなるのだろう、とページをめくらずにはいられない緊張感と、官能小説としての用途が両立しています。
 僕らはヒロインが心配で、彼女はどうなってしまうのだろうと考えてページをめくります。
 一方で、その瞬間が訪れるのを期待している自分がいる。
 ヒロインが幸せを感じ、主人公に対する好意を自覚すればするほど、そのときは近づくんです。
 合コンで出会い、お持ち帰りされたヒロインのチョロい具合はとても可愛く、なにかがかんたんに壊れていく最初の一歩はとてもいい。
 会社ではとても真面目な女性として評される彼女が主人公に促されるままにオフィスラブに興じるながれもとてもよかったです。
 ヒロインがどんどん警戒心を説いて、彼にいいようにされているのがいいんですね。
 
 とても面白かったです。オススメの作品です。