そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『自称Fランクのお兄様がゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ』の7巻

 さて、今回紹介する作品はこちら、『自称Fランクのお兄様がゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』の7巻です。


自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?7 (MF文庫J)
著者:三河ごーすと
イラストレーター:ねこめたる
レーベル:MF文庫J
発売日: 2019/9/24
出版社: KADOKAWA
ASIN: B07WTL5KC6

あらすじ
裏世界最強の男である事実を隠し、ゲーム至上主義の学び舎――獅子王学園に通う砕城紅蓮。
彼は全世界の実力者が集められた《獣王遊戯祭》で、第四王女・ユーリエルと組んで戦うことになる。
現実世界を反映した遊戯が始まり、貧困に窮したユーリの運営区画は遊戯開始時点で圧倒的最下位、他勢力と二桁以上ものポイント差がついていた。
だが、そんな必敗必至の遊戯でさえも、紅蓮の悪魔の如き策略が全世界の強者を欺き・操り、ユーリエルを勝利へと導いていく――
「『予言』は当たった。この先は、あんた次第だよ。――お姫様」
最低最弱の姫が最大最強の王子を打倒する、天才遊戯者による史上最大の大物喰いが始まる――。【電子特典! 書き下ろし短編付き】

『自称Fランクのお兄様がゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』とは

 黒の采配――ブラックバウト――を制した裏世界最強の遊戯者、破城紅蓮。彼は裏の世界から身を引くと、獅子王学園に入学する。
 そこで普通の高校生活を送ることを夢見た彼。しかし、裏の世界は彼を逃しはしなかった。その学園で妹の可憐に再会した彼は、この学園が遊戯を学ぶための学園であることを知る。
 遊戯の実力ですべてが決まる学園。平穏な日常を送るために、彼はそこでFランクとして生きようとする。しかし、巻き込まれる波乱により、彼は裏の世界での遊戯者としての実力を見せていくことになる。それは妹の可憐による策略であった。

 学園+異能+賭博。あらすじだけを見ると、『賭ケグルイ』と『ノーゲームノーライフ』を合わせたような作品。1巻の物語の中核は、主人公の俺Tueeさを知っている妹が彼を学園の頂点に押し上げようと画策する、『魔法科高校の劣等生』のさすおに系。しかも、ラストで妹と兄が明確な対立をにおわせたことでワクワク感を高めましたね。
 巻が進むごとに、男女を問わず魅力的なキャラクターが登場し、それぞれが腐らずに重要な役どころを演じている。今後の展開に目が離せないシリーズの第7巻です。

 今回は6巻で明らかになった世界大会の裏の姿、王族同士の権力争い。
 そして、現われたユーリエル・アルセフィアがどんな子なのかといった回でした。順に話していきましょう。

獣王遊戯祭の開幕

 ついに、世界大会が開幕される。
 このゲームは、有権者の支持率を奪い合う箱庭型のシュミレーションゲーム。
 主人公たちは何も知らない一般生徒たちに交ざって、ゲームを行う。
 参加国は、アメリカ、中国、ヴァチカン、ロシア、欧州連合。そして主人公たちの所属する日本。
 裏の世界で名が知られていた破城紅蓮だけは他のヒロインたちと仮初の日常を送りながら各国の代表と接触。
 異能の演出やキャラクター性の強調が行われた。
 そのうえで、主人公による大きな一手。それを利用した今回の大会で最も強い敵とされる人物、カールス・アルセフィアによる揺さぶりもありましたね。
 これからどうなっていくのか、というワクワクが高まりました。

ユーリエル・アルセフィア

 本作からフォーカスされた新ヒロイン、ユーリエル・アルセフィア。絶対記憶の持ち主であり、王位継承戦の参加者。
 本作の序盤では、まだ兄に憧れていたころの妹としてのユーリエル視点の回想が描かれている。
 そこでカールスとの兄弟としての関係性、彼女の精神性を強調させている。しかも、このエピソード、いつぞやの巻でやっていた可憐から見た兄を描いた話に酷似している。
 7巻では、表向きはユーリエルは兄の紅蓮と似た境遇のキャラクターであるとなっていますが、その本質は妹の可憐に近いものがある。
 そう考えると、まるで白王子透夜の鏡合わせのキャラクターであると強調されているカールスが、じつは本質的にはもっと別の側面があるのではないかとも勘繰りたくなりますね。
 そして、本作では嵐の前の静けさ、ゲームが動き出すまでの間の日常で、紅蓮はユーリエルと関わっていくことで、彼女のキャラクター性が浮かび上がる。
 本作では、主人公の意味信な発言に、彼女は思い悩み、決断することになる。そこの心の動きがとても面白くて。読んでいくうちに新キャラの彼女を応援したくなるようにさせてくれます。

凍城紫蓮(とうじょう しれん)と凍城 未恋(とうじょう みれん)

 本作では、世界大会の出場者としていろんなキャラクターが登場しましたが、なかでも気になるのが、紫蓮と未恋。
 主人公の息子を名乗る紫蓮は、本大会が終わった後の先を予期させているように見える。
 名前がそもそも意味深ですよね。まず、紫の蓮。紫は2種類の意味が読み取れるんですよ。一つは赤に近い色、つまり、紅蓮を模倣した存在という示唆。
 または青と赤を混ぜた色。この場合、青は水葉である可能性が高い。そうなると、紅蓮と水葉のいいとこどりの異能を持っているのかもしれない、とも考えられますよね。
 さらに、紫蓮と書いて、≪シレン=試練≫と読めるのも意味深だ。彼の存在が紅蓮にとってどのような試練になりうるのかと、想像が膨らみますよね。
 つぎに凍城未恋。恋未満でミレン=未練。恋をしないでなく、未満、つまりそこまでにいたらないということです。そのうえで未練と読めるのですから、なんらかの過去を抱えているか。主人公の過去の何かを背負った存在なのか。本作では意識的に名前をそのキャラクターの役割、あるいはそのキャラクターが乗り越えなくてはいけない呪いとしてつけられている。
 だから、この二人が今後どういった動きをするのか、今から楽しみで仕方がありません。

 では、今日はここまで、次巻も追って報告いたします。




裏世界最強の男である事実を隠し、ゲーム至上主義の学び舎――獅子王学園に通う砕城紅蓮。
彼は全世界の実力者が集められた《獣王遊戯祭》で、第四王女・ユーリエルと組んで戦うことになる。
現実世界を反映した遊戯が始まり、貧困に窮したユーリの運営区画は遊戯開始時点で圧倒的最下位、他勢力と二桁以上ものポイント差がついていた。
だが、そんな必敗必至の遊戯でさえも、紅蓮の悪魔の如き策略が全世界の強者を欺き・操り、ユーリエルを勝利へと導いていく――
「『予言』は当たった。この先は、あんた次第だよ。――お姫様」
最低最弱の姫が最大最強の王子を打倒する、天才遊戯者による史上最大の大物喰いが始まる――。【電子特典! 書き下ろし短編付き】