そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ポーション頼みで生き延びます』4巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『ポーション頼みで生き延びます』の4巻です。


ポーション頼みで生き延びます!4 (Kラノベブックス)
著者:FUNA
イラストレーター:すきま
レーベル:Kラノベブックス
出版社: 講談社 (2019/1/9)
ISBN-10: 4065145384
ISBN-13: 978-4065145388
発売日: 2019/1/9

あらすじ
ポーションを生み出すチート能力を貰い、異世界に転生したカオル。
行く先々でポーションチートを使っていれば、目立ってしまうは世の道理。
ユスラル王国でも奇跡を生み出したカオルを追ってやってきたのは、カオルと因縁浅からぬ(と勝手に思っている)ブランコット王国の王太子・フェルナン。
だけどカオルはすでに去った後で――
一方カオルは、興味の向くまま生魚を食べたり、温泉地で盗賊退治をしたり!?
コミックも絶好調! の大人気シリーズ第4巻!

『ポーション頼みで生き延びます』とは(1巻から3巻のネタバレ注意)

 『ポーション頼みで生き延びます』とはこんな話です。

 主人公の長瀬薫は帰宅途中、神様の手違いで死んでしまう。
 そのお詫びとして、彼女は異世界で望みの特典をもって転生できることに。
 これに対し、彼女が求めたのが、「私が思った通りの効果のある薬品を私が考えたとおりの容器に入った状態で自由に生み出す能力」、「アイテムボックス」「この世界のあらゆる言語の会話、読み書きに不自由しない能力」でした。
 これにより、ポーションでお店を開いてお金を稼ぎ、その世界での人と結婚し、幸せな家庭を築く、というのが彼女の願いでした。
 
 1巻の序盤から、現実世界での神様、異世界での神様に対して賢く立ち回っている。作者のFUNAさんの作品で、『私、能力は平均値でって言ったよね』ではマイルが自分の心の中にあった隠された願いを理解しないままに願ってしまっていたんですが。じつは、カオルの場合は超常の存在に何を願うか、という猿の手のストーリーラインに対してかなり正解に近い対応をしているんですね。FUNAさんの作品の主人公のなかで一番の年上だけあって、そのへんがじつはしっかりしていた。しかし、それが予想外のことで崩れてしまうというのがお約束なんですね。
 ポーションの力をもって異世界に転生したカオル。彼女は村のギルドにつくと、そこで負傷して運ばれた冒険者に対して自身のポーションを飲ませます。
 これにより全快する冒険者。しかし、ここでの誤算が、この世界ではモンスターや魔法はあっても傷を治せるような奇跡のようものは存在しなかったということだった。
 こうして奇跡の力を周囲に見せてしまったカオルはその力を狙い、彼女を独占しようとする領主から逃げ、奇跡の担い手であったことを知った周囲の人々は彼女との別れを悲しむ、というのを繰り返してきたのが2巻でのストーリーラインでさ。この辺が面白いんですよ。
 3巻からは仲間たちとのロードムービー。街から街へと渡って様々なことをしながら、最後は奇跡の力で人々を救って消えていく。
 4巻ではそのへんの流れを引き継ぎながらも彼女自身の力を使わないように立ち回ることで、彼女の仲間たちの魅力を光らせる巻となりました。
 では、順に話していきましょう。

王太子フェルナン、再び

 1巻でカオルに求婚した王太子、フェルナン。彼が久々に登場しました。
 しかし、カオルとは出会えず。彼女が訪れた後の街々をめぐることに。
 1巻では、カオルを独占しようと少々暴走していたわけですが、なんやかんや憎めないキャラですよね。
 2巻でのコミカルな扱いも面白かったです。一応は宙ぶらりんであった彼の物語も今回でくぎりがついた、といったところでしょうか。
 彼の心理的な成長を描いた短編のラストでカオルを追いかけて姿を消した従者の今後にも目が離せません。

聖女としてのカオル

 4巻では困っている人をほっとけないと考えるカオル、の一面の出る話が多かったですね。
 これにより、ポーションやアイテムボックスなどの超常の力を抜きにした彼女の内面が描かれていましたね。
 また、聖女の力を表立っては使わないようにすることで、今巻では旅の仲間たちのキャラクター性もクローズアップされている。

フランセットとロランド

 騎士のフランセットと王子のロランドのキャラクター性の出た場面が多かったですね。
 あの旅のメンバーの中では年長者の部類で、しっかりした立場を持っている二人。
 だからこそ、港町でカオルが店をやる際や村での交渉事で目立つ立ち位置だった。
 それと、ロランドはフランセットとの間で苦労人としての一面を見せていましたね。
 書き下ろし短編ではそんな彼のキャラクター性がよく出た短編になっていました。

 では、次巻も追って報告いたします。