そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

小説版 星のカービィ『メタナイトとあやつり姫』について

さて、今回紹介する作品はこちら、小説版 星のカービィ『メタナイトとあやつり姫』です。


星のカービィメ タナイトとあやつり姫 (角川つばさ文庫)

星のカービィメ タナイトとあやつり姫 (角川つばさ文庫)

著者:高瀬美恵
イラストレーター:苅野タウ
レーベル:角川つばさ文庫
発売日: 2018/1/15
出版社: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ASIN: B078K679QQ

あらすじ
今回の物語は、メタナイトが主人公の特別編!ケーキ作りで有名なシフォン星という星へ向かおうとしていたメタナイトは、とある用事のため、カービィたちのすむプププランドに立ち寄っていた。しかしそのころ、シフォン星ではマローナ姫が行方不明になる事件が起こっていて!?カービィ、デデデ大王たちとともに、急いでシフォン星へと向かうメタナイト。だけど、たどりついた先では意外な展開が待っていた!!小学中級から。

以前から重要な回としてあげていた『メタナイトとあやつり姫』です。この巻をきっかけに小説版 星のカービィはシリアスな話が多くなります。1巻、2巻、3巻はカービィ、デデデ大王、ワドルディ、それぞれの魅力を描いたキャラ巻になっている。その上で4巻目がメタナイト主役の巻となっている。

今回は、メタナイト主役の巻、カリオストロの城、メタナイトの抱える闇とはの順で話します。

メタナイト主役の巻

今回はメタナイトが主役の巻。
ある日、「飛んでいる鳥も寝てしまいそうなほど平和な、プププランド」にメタナイトが2人の部下を連れてやってくる。
目指すはコックカワサキのお店、道中、カービィとワドルディにみつかり、コミカルなやり取りをした後、ようやくお店にたどりつく。
そしてコックカワサキにメタナイトは焼き菓子をつくるのをお願いする。目的はシフォン星の王の誕生日を祝うため。
しかし、コックカワサキから今朝の新聞でシフォン星の王女さまが行方不明になり、王様は誕生日会をやれる余裕がないことを知る。
メタナイトは、お世話になった王様のために誕生日会までに王女様を見つけ出すことを決意する。
それを聞いたカービィ、ワドルディ、デデデ大王も手伝うといいだして一行はシフォン星へと向かう。

導入は、メタナイトは部下を抱えていてクールで義に熱い、しかし、カービィやデデデ大王に振り回されがちな残念なとこもあるってのがわかる。そして、彼が銀河を旅しているポップスターの外からやってくる存在であることがわかるように描かれてますね。

最初の一文が「平和な、プププランド」と含みのある文章であるのが少し怖いですよね。プププランドは平和だけど、ここ以外は平和じゃないんだよって意味にも読み取れます。

実際、この巻以降から起きるシリアスな出来事はプププランドの外で起きたことがきっかけです。メタナイトは「プププランドの外」を代表する存在なんです。

カリオストロの城

今回の話はカリオストロの城を思い出しました。クラリスというお姫様が、昔出会った泥棒のおじさんに助けられる。彼の自由な姿に憧れた彼女は、自分もあなたのそばで自由に生きたいと言うも、彼に諭されることで、お姫様として生きていくことを決意する。

読みが浅いけど、カリオストロってこれでさ。今回のシフォン星も、恋愛はないけど、行方不明になったお姫様を中心にすると今話したようなストーリーラインになっている。

今回、行方不明になったマローナ姫はメタナイトの恋の相手にはなれないけど、彼のなれなかった自分としてメタナイトの前に現れます。

メタナイトの抱える闇

今回、物語の黒幕であり悪役でもあるガーリック。彼は人を操れる催眠能力を持ち、それでマローナ姫を操っていました。
しかし、じつはマローナ姫は操られておらず、一人の女の子として自由に生きたいという思いからガーリックに操られるフリをしていました。

このガーリックの催眠能力が本作の肝です。
ガーリックの催眠能力に作中のキャラクターたちはみな翻弄されてしまいます。
しかし、カービィだけはガーリックに操られることはありませんでした。
それは彼が「大好きな食べ物で頭がいっぱい」のため、「術にかかる隙」がないからです。
けど、それならなぜ3巻でカービィと間違われるくらい食欲があるデデデ大王には催眠が効くのか、と話の中でデデデ大王は言います。
それは大王がカービィと比べると名誉や地位などのそれ以外の欲求も持っているからなんですね。

じつはそのカービィにはかからないけど、デデデ大王にはかかってしまうことに対する理由がメタナイトにも共通しているんです。

メタナイトは部下に慕われ、クールなキャラクターとしてみんなから認識されています。しかし、じつはそんな彼にも弱い部分があり、それを悟られたくなくて仮面を被っている。

ガーリックはそれを見抜き、その弱さを揺さぶることで催眠にかけようとします。なんとかメタナイトも、カービィと同じように大好きな部下や仲間のことを考えて催眠から逃れようとするも、それができないから催眠能力の源であった赤い宝石から目を逸らしながら破壊することでまぬがれます。

つまり、今回メタナイトは自身の抱えている弱さを克服できずに終わるんです。ラスト、カービィと同じく赤い宝石に操られなかったマローナ姫は本当の自分の姿で国民と接することを決意します。それはメタナイトが本作ではできなかったことなんですね。

この点が本作が描いたメタナイトの闇であり弱さでもあり、これが小説版星のカービィ全体のテーマにもつながります。

この話はまた今度します。
それでは次巻も追って報告します。

星のカービィ  あぶないグルメ屋敷! ?の巻 (角川つばさ文庫)

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星のカービィくらやみ森で大さわぎ! の巻 (角川つばさ文庫)

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  • 作者: 高瀬美恵,苅野タウ,ぽと
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/03/15
  • メディア: 単行本
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星のカービィ大盗賊ドロッチェ団あらわる! の巻 (角川つばさ文庫)

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  • 発売日: 2014/08/08
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星のカービィメ タナイトとあやつり姫 (角川つばさ文庫)

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