さて、今回紹介する作品はこちら、『賭博師は祈らない』の4巻です。
著者:周藤蓮
イラストレーター:ニリツ
レーベル:電撃文庫
出版社: KADOKAWA (2018/6/9)
ISBN-10: 4048938703
ISBN-13: 978-4048938709
発売日: 2018/6/9
あらすじ
束の間の幸福、そして因縁の対決。帝都に戻った賭博師ラザルスの命運は――バースでの長逗留を終え、ようやくロンドンに帰還したラザルス。リーラは徐々に感情豊かになり、観光がてらついてきたエディス達との交流も続く。賭場の馴染みからは、そんな関係を冷やかされる始末。ラザルスは賭博師として日銭を稼ぐいつもの生活へと回帰していく。
だが幸福そうに見えるラザルスの心を陰らせるひとつの懸念――。リーラという守るべき大切なものを得たが故に、彼の賭博師としての冷徹さには確実に鈍りが生じていた。裏社会の大物や警察組織にも目を付けられつつも、毎日を凌いでいたラザルスだったが……。
そしてかつての恋人である賭博師・フランセスとの因縁が、ラザルスに決定的な破滅をもたらすことになる。
18世紀ロンドンを舞台にした賭博ものの本作品。しっかりとした時代描写とキャラクターの「殻を破る瞬間」の描写が魅力的です。
4巻は今までの巻が一つに向かって収束していく大事な巻。順に説明していきます。
ラザルスの過去
4巻では、序盤にラザルスの過去が描かれます。元カノのフランセスとの馴れ初め。
そして、過去に賭博師ゆえに助けることのできなかった過去を思い出す。
あそこから、3巻で言っていたリーラだけを助けてしまったことの自身の罪悪感の話ってとこがどこからくるのかがわかりましたね。
また、フランセスとの過去自体も短いページ数でそのキャラクターとの関係性が好きになるくらいいい過去でした。
どんな朝を迎えて、どんな瞬間があって、どんな夜で終わるかが濃縮されて描かれているため。二人の一日が短いページで想像できるようになります。
絶望の後に立ち上がる
そして、今回、なによりも面白かったのは、リーラとの日々によって変わってしまったことを自覚してしまったラザルスの絶望と、そこからの「殻を破る瞬間」からの立ち上がりでしょう。
日常の描写から、不穏な影が潜んでいてラザルスを心配したくなる気持ちが強まります。その読者の不安を超えたことが起きてしまう。
そして、絶望感にひしがれたラザルスは動けなくなり、時間が経てば経つほど悪くなる状態の中、戦えないラザルスの描写が焦燥感を掻き立てます。
その上で、序盤に出た不安感を煽っていたアイテムがラザルスを立ち直らせるきっかけを与え、そこからどんどん上向きに事態が動き出すところ爽快感がありました。
あの時できなかった事が今ならできる
そして、今回読んでて気持ちよかったのが、あの時できなかった事が今ならできるって展開ですね。中盤にはラザルスが自分がリーラによって変わってしまったことによる絶望が描かれている。しかし、終盤でだからこそできることがあるって展開になってさ。
それが冒頭の過去でできなかったことができた瞬間があるってとこがさ。開放感があっていいですよね。
いよいよ、5巻がフィナーレ。感想は追って報告いたします。
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