そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『賭博師は祈らない』3巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『賭博師は祈らない』3巻です。


賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)
著者:周藤蓮
イラストレーター:ニリツ
レーベル:電撃文庫
出版社: KADOKAWA (2018/1/10)
ISBN-10: 4048935879
ISBN-13: 978-4048935876
発売日: 2018/1/10

あらすじ
賭博師と奴隷少女の物語。舞台は賭博温泉街バースへ。

ノーマンズランドでの負傷も癒え、ようやく当初の目的地バースにやってきたラザルスとリーラ。村から付いてきたエディスとフィリーも道連れに、気儘で怠惰な観光を洒落込むつもりだったが、一つ誤算があった。
温泉とギャンブルが名物のこの街で目下勃発しているのは、賭博を司る儀典長と副儀典長による熾烈な権力争い。バースへの道中で出会った知人からは忠告を受けるも、時既に遅し。
温泉から宿に戻ってみると、部屋には荒らされた形跡。そして一人横たわる血まみれの少女。面倒事の匂いに辟易としながらもラザルスは彼女を保護する。
それは、陰謀張り巡らされたバースにおける長い戦いの幕開けであった。

戦わらざるおえない状況

3巻で、ラザルスは戦わざるおえない状況に追い込まれる。今までは違う状況です。
1巻、2巻では、ラザルスが戦うことを決断することにカタルシスを感じましたね。
1巻と2巻のストーリーとしての魅力は、一人のヒロインが主人公のラザルスと出会い、彼女の人となりを知っていくことで、読者の僕らは彼女を助けたいと思うようになる。
しかし、ラザルスには戦う理由がない。僕らも彼の気持ちにも共感する。
そうしていくうちに時間が経てば経つほど状況が悪くなる中で、このまま助からないのでは、と僕らが不安になるなかで、あるイベントにより、ラザルスは戦うことを決意する。
そして、その選択に僕らはカタルシスを得るんですね。
しかし、今巻でラザルスは戦わざるおえない状況に追い込まれます。そして、戦うことの決意は別の少女に委ねられることとなります。

助けを求めない少女

 それがあらすじにも書いてあるラザルスが保護することになった血まみれの少女です。
 あらすじで明かされていない以上、名前やどんなキャラであるかはここでは明かしません。
 今回の話の肝となるのが、彼女の境遇がリーラの時と同じように同情を寄せる境遇でありながらも、彼女自身がラザルスたちに助けを求めていない点です。
 だからこそ、1巻や2巻のような時間が経てばたつほど悪くなる状況で彼らは動けないって場面があり、その時にある事件が起きて彼女が殻を破る瞬間が訪れる。
 この瞬間が来たとき、僕らはああ今回はこういう流れなんだなって思ってさ。みんなが救われるラストを期待します。

驚愕の結末

 しかし、それでは終わらなかったし、終われなかった。
 順風満帆に行くかと思われたラストにある誤算が生じ、解決はするもモヤモヤとした結果に落ちてしまう。
 今回の件は明らかにリーラとラザルスの心に暗い影を落とすことになったでしょう。
 今巻で印象的だったのが、ラザルスもリーラも、自分と似た境遇であり、少し違うもう一人の自分、シャドウに出会っているということ。
 遠い地まで旅をした結果、もう一人の自分に出会うってのは王道のパターンでさ。キャラクターが成長するうえで必須なんですよ。
 自分と似ている人物と出会うことで、自分を相対化し、見つめなおす。
 似ているからこそ、違いが逆に浮き彫りなるんですよね。
 それにより、ラザルスは明らかにリーラを助けることに対しての矛盾を自身に突きつけるような形になっています。
 4巻の内容が今から楽しみです。

 では、続きも追って報告いたします。