そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『賭博師は祈らない』5巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『賭博師は祈らない』の5巻です。


賭博師は祈らない(5) (電撃文庫)
著者:周藤蓮
イラストレーター:ニリツ
レーベル:電撃文庫
出版社: KADOKAWA (2019/1/10)
ISBN-10: 4049122065
ISBN-13: 978-4049122060
発売日: 2019/1/10

あらすじ
賭博師と奴隷の少女、二人に訪れる結末は。

ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度はすべてを失ったラザルス。だが賭博師としての矜持を奪われ、地の底を這いつくばったその先で、彼は自らが進むべき新たな境地へと辿り着く。
再起したラザルスはフランセスにも勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。かつて帝都にいた友人たちが残した、ちっぽけな約束を守るためだけに。
一方、ラザルスの無事に安堵したリーラだったが、彼女は故郷へ帰る為の乗船券を渡されたことに戸惑い、自分が主人に対して抱いていた想いに気付かされる。

――『私は、ご主人さまが好きです』

そしてラザルスはリーラとの関係にひとつの答えを出すことに。二人の物語に訪れる結末は、果たして

 ついにフィナーレですね。今までの伏線や心理的な問題が次々と解決し、心のうちに風が吹くような気持ちのいいラストでした。

『賭博師は祈らない』について

『賭博師は祈らない』とは、18世紀ロンドンを舞台にした賭博ものです。
 主人公のラザルスは賭博師。孤児だった彼は、賭博師であった養父に育てられて、ラザルス・カインドとして賭博師としての道を進むことになった。
 彼は養父の教えを守って、負けない、勝たないを心情に、ペニー・カインドの呼び名で賭博をしていた。
 しかし、ある日、ラザルスは思わぬ大勝ちをしてしまう。賭場での恨みを買うことを恐れたラザルスは、勝ちすぎた分を清算するため、奴隷として売られていたリーラを引き取ることになる。
そこからリーラとラザルスによる穏やかな日常が始まります。
 この日常によって、ラザルスは自分が賭博師として抱えていた欠落をリーラによって埋めていく。
 この作品は日常を送っていく中で徐々に事件が忍び寄り、その日常がある問題により突如続けられなくなり、主人公がその問題に立ち向かうって流れを取っているんだけどさ。
 この日常がよく描けているんですよね。18世紀イギリスの生活風景や豆知識が日常の中でさり気に描かれていてさ。
 それが、ある日日常が崩壊する事件のきっかけだったり、逆転の一手になったりするのが熱いんですよね。
 では、5巻の感想に移りましょう。

リーラとラザルスのそれぞれが抱えているもの、その答え

 日常場面でのリーラとラザルスがよかったですね。
 今巻で、リーラは故郷に帰るための旅券を手に入れました。
 これによって、彼女は故郷に帰るべきか否かで、リーラとラザルスはそれぞれ葛藤する。
 ここで、それぞれに対して感情の吐露が他のキャラが聞き手になっていることで、客観的な視点でわかるってとこがよかったし、最終的に二人の間での会話でお互いがこの問題に対して抱えているものが明らかになった時、開放感があったと同時に、読者の中で、自分の都合のいい展開を期待して自分に対する罪悪感やその選択に対する感動。いろんな気持ちがきれいに混ざっていていいシーンなんですよね。

魅力的な敵キャラジョナサンワイルドジュニア

 今回、敵役としてのジョナサンワイルドジュニアも魅力的でよかったですね。
 前巻でコイツ何者なんだ感を出していたんだけどさ。今巻では、人物像ってのが徐々に明らかになっていき、それによってだんだんと好きになっていく。
 そして、ある段階で彼女の目的が明らかになった時に、僕らは彼女に人間味を感じ、彼女を助けたいと考えるようになる。
 しかし、状況はどんどん進んでいき。事態も解決へと向かっていく。そして、彼女自身は3巻のジュリアナのように救われたがっていないんですよね。
 だけれども、読者の僕らは救いたい。そんななか、ラザルスが今回は自分の意志で動いてくれるってとこがいいんですよね。

気持ちのいいラスト

 全体を通して感じたことがさ。心の中に風が吹くような気持ちのいいラストなんですよね。
 僕らがそれが問題であると気づかなかったようなことさえも、問題として明らかになり、解決に向かうし、僕らが期待していたことにも答えを出してくれる。
 ここまで読後感が気持ちよかった作品はなかったですよ。

 周藤蓮先生の次の作品が楽しみです。次作も追って報告いたします。

賭博師は祈らない(5) (電撃文庫)

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賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

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賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

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賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

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