そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『賭博師は祈らない』2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『賭博師は祈らない』2巻です。


賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)
著者:周藤蓮
イラストレーター:ニリツ
レーベル:電撃文庫
出版社: KADOKAWA (2017/8/10)
ISBN-10: 4048932756
ISBN-13: 978-4048932752
発売日: 2017/8/10

あらすじ
第23回電撃小説大賞《金賞》受賞作、待望の第二巻登場!

奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。
それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが……。
「ねえ、ラザルス。私と結婚しましょ?」
道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは――。
少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。

『賭博師は祈らない』について(1巻のネタバレ)

『賭博師は祈らない』とは、18世紀ロンドンを舞台にした賭博師の駆け引きと人生を描いた作品です。
主人公のラザルスは、養父のカインドから賭博師としての技術と、賭博師として生きていくためのルール、「負けない」「勝たない」「祈らない」の3つを受け継いでいます。
負けすぎず勝ちすぎない、そんなギャンブルを心がけていたラザルスですが、ある日、思わぬ大勝ちをしてしまう。
賭場での恨みを買わないために彼がそこで買い物したのが異国から来た奴隷の少女、リーラだった。
彼女との突然の共同生活により、徐々に親交を深める二人。しかし、平穏な日常は突然崩れる。
ラザルスは葛藤の末、リーラを救うためにある大勝負をする。

面白いですよ。18世紀ロンドンの日常的な時代考証がしっかりしているし。それが後々の日常の崩壊の伏線になっているところは驚く。
ラザルスの人生観が過去に基づいたものであり、だからこそ、彼の決断に重みを感じます。

では、2巻の感想に移りましょう。今回は新キャラのエディスとフィリー、不器用な二人との関係の進展、なぜ戦うかの順に語ります。

新キャラのエディスとフィリー

新キャラのエディスとフィリーがよかったですね。二人とも、この子はいったいどんな子なんだろう、と思わせるシーンが初登場シーン。何者なのか? って思わせる場面は必ず夜の暗い場所で、明るい昼間に彼女たちの隠された秘密が明らかになるってとこも視覚的にわかりやすくて映画的ですよね。
エディスの表面的な強さと内面の繊細さも可愛いですし。フィリーの飄々としつつもエディスのことを気遣っている従者としての一面もギャップがあっていいです。

不器用な二人の関係の進展

今回、ラザルスとリーラ、不器用な二人の関係の進展も読んでてキュンキュンしましたね。
お互いがお互いをどうしていいのかわからない。そうした気持ちを抱えているところがみていて尊い。
エディスが二人の気持ちの聞き手になっていたところもよかったですね。恋愛ドラマはやっぱお互いの気持ちが読者にわかったほうがいいですから。
その役目を引き受けてくれる相手がいたのはよかった。二人の今後の関係が気になっちゃいます。

なぜ戦うか

今回、読みどころになったのがラザルスがなぜ戦うのかって点ですね。ラザルスが訪れた街で事件が起きている。
しかし、彼にとっては関係のないはなし。読者のこのキャラを助けたいって気持ちと反比例するように。ラザルスには戦わない理由が増えていく。
そんななか、リーラのある決断によってラザルスは動かざるおえなくなるというのがかなり上手いなと唸らされました。

次巻がどうなるか、今から楽しみです。

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)