そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『賭博師は祈らない』1巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『賭博師は祈らない』です。


賭博師は祈らない (電撃文庫)
著者:周藤蓮
イラストレーター:ニリツ
レーベル:電撃文庫
出版社: KADOKAWA (2017/3/10)
ISBN-10: 4048926659
ISBN-13: 978-4048926652
発売日: 2017/3/10

あらすじ
十八世紀末、ロンドン。賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。――それは、奴隷の少女だった。喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。

時代考証のあるギャンブル

この作品の珍しいところは、時代考証のはっきりした18世紀ロンドンを舞台にしたギャンブルものであることです。

デスゲーム系というジャンルを皮切りにカイジや賭ケグルイ、ゴスロリ卓球など。ギャンブルを主題にした漫画やラノベは出ていたのですが、18世紀のロンドンを舞台にしたギャンブルもの、というのは今まで見なかった印象があります。

その時点で、新鮮な気持ちで読めましたね。それだけでなく、18世紀ロンドンでの賭け事情、拳闘や傘の使われ方等の時代考証が細かく書かれ、それが話の筋に関わっていくところも面白いです。

奴隷と賭博師の恋未満の関係

作中の魅力として挙げれるのが奴隷のリーラと主人公である賭博師のラザルスの関係だろう。
リーラは喋ることができない奴隷の女の子。そんな彼女はラザルスとの関わりを通して、変わっていく姿には言葉にできないなにかがありますよ。
それがある事件によって引き裂かれてしまうのも胸が締め付けられる。リーラとラザルスとの共同生活を見ていくうちにこの子に幸せになってほしいって気持ちが高まっていくんですよ。その気持ちが最高潮になったとこで、ある日、日常の中で語られていたある伏線によって起きる事件によってリーラが連れ去られてしまうってとこでさ。だれか助けてやれよと思わずにいられなくなってさ。それをしてくれるのではって俺たちが期待したくなっちゃうのがラザルスなんだよな。

自分の周りのことを「どうでもいい」と考えていたラザルスがリーラと関わることでその心が溶け、賭博師として生きていくために掲げていた父の教え、「負けない」「勝たない」「祈らない」を破り、リーラのために大勝負を挑むところは読んでいて熱い。

彼もリーラを助けにいくことに対してある種の葛藤があるんだけどさ。それがさ、賭博師として生きていく上で彼が胸のうちで抱えている不安みたいなもんなんですよね。

キャラもいいし、舞台設定と描写もいいし、続きが気になるよ。では、次巻も追って報告いたします。

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)