そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『錆喰いビスコ』1巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『錆喰いビスコ』の1巻です。


錆喰いビスコ (電撃文庫)
著者:瘤久保 慎司
イラストレーター:赤岸K , mocha
レーベル:電撃文庫
出版社: KADOKAWA (2018/3/10)
ISBN-10: 4048936166
ISBN-13: 978-4048936163
発売日: 2018/3/10

あらすじ
愛する人を救うため、滅びの錆を強弓が貫く 。疾風無頼の冒険譚!

『このライトノベルがすごい!2019』(宝島社 刊)文庫部門 総合・新作で史上初ダブル1位を獲得!
第24回電撃小説大賞の中で“一番ぶっとんでいる”と評された、
怒濤の≪銀賞≫受賞作!

すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる《錆び風》の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救うための霊薬キノコ《錆喰い》を求め旅をしていた。
美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構にできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線――。過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く! しかし、その先には邪悪な県知事の奸計が――。
愛する人を救うため、強弓が撃ち抜く冒険ファンタジー!

この作品のスゴさは豪速球すぎて魔球に見えるとこです。本作の面白さを語ろうとすると、世界観がスゴくて、キャラクターが魅力的で、王道のストーリーであることが挙げられます。

普通の感想だと思うじゃないですか。すべてのエンタメ作品の基本じゃないかと。これのスゴイところはさ。その基本が今までの天井だと思ってたところを突き抜けているからスゴイんですよね。

だからこそ、今後万人ウケするだろうし、順当に続巻がでていけばアニメ化もするでしょう。そのくらいスゴイ作品です。なので今回は世界観、キャラクター、王道のストーリーの順で話していきます。

世界観がスゴい

まず、世界観がスゴい。
舞台は僕らのいた日本になんらかのifの出来事が起き、姿を変えてしまった未来の世界。
世界には錆び風というウィルス(?)、あるいは病が存在する。主人公のビスコはその錆をなんとかするためにキノコを咲かせるキノコ守りをしている。
そんなキノコ守りは錆をばらまく存在として周囲から忌避されていました。
そのキノコ守りのなかでもっとも危険な存在として人々に認知され、指名手配されていのがビスコです。
しかし、それは意図的にバラまかれた嘘で、ビスコは錆を喰うキノコを育てることで錆をなんとかしようとしようとしながら、ある目的のために旅をしていた。
一緒に旅をしているキノコ守りの師匠、シャビの錆び風をなおすために、ビスコは錆喰いという錆び風をなおすためのキノコを探していた。

そんな彼が旅の道中、忌み浜にたどり着くと、町でパンダ先生と呼ばれる心優しい医者、猫柳に出会う。彼もまた、錆び風に蝕まれた姉を救いたいと考えていた。

まず、東京都心で起きたテツジンの爆発を大きなifとして枝分かれでさまざまな事態が起き、発展していったため、特殊な世界観だけど地続きの未来として想像しやすい。

食事の場面もしっかり描いていて、それもそこでの土地柄を感じるし、なにより美味しそう。ビスコたちを襲う錆び風の影響(?)で進化したと思われる怪物たちも魅力的。

時代背景、生態系、文化、食事が話のなかに自然と描かれているため、自分が住んでいるところを想像できるくらい作りこまれた世界観になっている。

キャラクターが魅力的

それと、キャラクターも魅力的だ。
この作品には悪役を含めて5人のメインキャラがいるが、彼らはそれぞれ濃いキャラをしながらもお互いの色を塗り潰さないように、方向性の違うキャラクター性を持っている。
さながら、戦隊のように性格や能力がバラけながらもそれぞれが魅力的なんです。
で、キャラクター数はじつは少ないのに、それぞれが作品世界で起こす事件により、だれがどうなったか、あるいは世界がどうなるかがはっきりしているから。
ストーリーも魅力的なものになっている。

王道で痛快なストーリー

このストーリーも王道で面白い。
ビスコも猫柳ミロも、大切な人を錆び風から救いたいと考えている。その錆び風は話が進むごとに彼らの大切な人であるジャビやパウーを蝕んでいることがわかる。
ここから、はやく救わなくては、というタイムリミットの要素があり、読者に緊張感を与えます。
また、この世界にはさまざまなことの元凶であり、主人公の旅の障害となる悪役がいます。彼を倒すことでさまざまな問題が解決され、カタルシスを得る展開も勧善懲悪的でいい。
こうしたストーリーラインを複雑な世界観でやっているため、面白いです。

2巻も追って報告いたしますので、是非読んでみてください。

錆喰いビスコ (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)