そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

小説版 星のカービィ『大盗賊 ドロッチェ団あらわる! の巻』について

さて、今回紹介する作品はこちら、小説版 星のカービィ『大盗賊 ドロッチェ団あらわる! の巻』です。


星のカービィ大盗賊ドロッチェ団あらわる! の巻 (角川つばさ文庫)
著者:高瀬美恵
イラストレーター:苅野タウ
レーベル:角川つばさ文庫
発売日: 2018/1/15
出版社: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ASIN: B078JZJJTP

あらすじ
カービィは、古びた神殿の中で大きな卵を見つける。ケガをして卵の面倒を見られない親鳥にかわって、卵を守ることになったカービィたち。そんななか、大盗賊ドロッチェ団が卵を盗もうとやってきて……!?【小学中級から ★★】

 任天堂の看板キャラの一人、カービィの小説版です。今回は3巻目の感想になります。

導入

  デデデ大王が城を留守にしていたので、結果として休日がもらえたワドルディはカービィといつもとは違うところへお出かけ。
 お花畑で転げまわったり、林の中でかくれんぼしたり、浅い川に飛び込む二人。
 カービィに促されていつも行かないような場所に来れて楽しそうなワドルディ。
 真面目なワドルディが活発なカービィによって、普段とは違う経験ができる。これからも続いていくであろう二人の関係性がわかるのがいいですね。
 しかし日は暮れ、デデデ大王が帰ってくる時間になりもう帰ろうというワドルディ、そこで彼がデデデ大王の部下であり、いつもは仕事でカービィとこんなところまで遊びに行けないことがわかる。
 それとカービィとデデデ大王の敵対関係とそんな二人の間に挟まれる微妙な立場であることも解説される。
 時間を気にするワドルディ。そんななか、カービィは林の奥に見知らぬ遺跡をみつける。
 その中を意気揚々と探索するカービィとおっかなビックリに歩くワドルディ。
 するとその奥でコピーのもとをみつける。ここでカービィがコピー能力が使えることが明らかになる。
 こうしてさらに奥に進むと、カービィたちは大きな卵を見つける。おいしそうと言って、思わず卵に近づくカービィ。
 すると、そこにアクティブブレイドが襲い掛かってきた。アクティブブレイドは卵の母親。卵は彼女の子供だったのだ。
 そこでなにかしらのイベントをやった後、誤解であることがわかるとアクティブブレイドのお願いでカービィたちは彼女の卵を守ることに。

 ここまでが導入ですね。カービィのキャラクター性がはっきりした1巻。悪役の悪だくみをにおわせて思わぬ展開に入る2巻。導入までで、前置きが少し長めの3巻。
 だんだん、話のつくりを複雑にしていってますね。実際、次の4巻あたりでかなり読み応えのあるシリアスな要素が入りはじめますので。そこを目指して、じつはちゃんと話の構成を少しずつむずかしくしているんですね。

 そして、デデデ大王の目を盗んで遊んでいるワドルディにとって、彼がお城に戻る前に帰らなければいけないジレンマを抱えながらも、カービィを追いかけるワドルディの葛藤を描くことで、彼のキャラクター性を分かりやすく示している。1巻はカービィ、2巻はデデデ大王に焦点を合わせた巻でした。3巻はじつはワドルディのキャラクター性を示す巻なんですね。

ゲームのキャラが大活躍

 この巻から、ゲームのカービィで出てくるキャラクターたちが登場するようになります。
 星のカービィ 参上! ドロッチェ団に出てくるドロッチェ団。星のカービィ ウルトラスーパーデラックスに登場のダイナブレイドにそっくりなアクティブブレイド。
 後、遺跡もスーパーデラックスに出てくる洞窟遺跡大作戦の舞台を意識したつくりになっています。
 5巻以降からこうしたゲーム要素もどんどん入るようになり、ある出来事をきっかけに最新作では完全にゲーム版に同期したつくりになっていきます。
 だから、この辺も重要なんですよね。

ワドルディ巻

 さらに、この巻は2巻で悪役だったデデデ大王が味方になる。なぜかメタナイトが敵になる、と読んでいるときは先が読めずワクワクする展開があるんですが。全体を通して読むと、ワドルディに焦点をあてた巻であることがわかります。
 今回、猪突猛進なカービィとデデデ大王にたいして、メタナイトの行動に疑問を持ったり、ドロッチェ団の狙いが何だろうと考えたり。彼が二人と比べると頭を使うキャラであり、二人の間に立って協力させられるキャラであることがわかる。そのことをメタナイトが評価している場面も書いてあります。これにより今後、デデデ大王とカービィが星の危機に対して協力する流れになることが自然になってくるんですね。

 では、今回はここまで。
 次はついにシリアスなストーリーに変わっていくメタナイト主役の回、『メタナイトとあやつり姫』です。
 

星のカービィ ウルトラスーパーデラックス

星のカービィ ウルトラスーパーデラックス