そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『サブヒロインだって攻略されたい!』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『サブヒロインだって攻略されたい!』です。


サブヒロインだって攻略されたい! ルートがなくても愛してくれますか (MF文庫J)
著者:藍藤唯
イラストレーター:萌木雄太
レーベル:MF文庫J
発売日: 2018/9/25
出版社: KADOKAWA
ISBN-10: 4040651618
ISBN-13: 978-4040651613

あらすじ
ルートがないなら、作ればいいじゃない!

サブヒロイン――それは、物語の中心となる少女ではなく、二番手三番手ヒロインの総称。今、エンタメ業界において“推しのサブヒロインが幸せになれないことによるユーザーの怨念”がウィルスとなり、さまざまな作品の関係者を蝕む怪奇事件が発生していた。解決方法は、作品の世界に飛んで報われないサブヒロインを幸せにするしかないという。
超人気イケメン俳優でありながら、コアなオタクである主人公・佐藤セイヤは、その技術と趣味を見込まれ「サブヒロインを幸せにする」任務に就くことに!?
小悪魔だけど健気な後輩・真田莉瀬、気立てのいいギャル・池袋愛華――セイヤは彼女たちを攻略して幸せにできるか!?

 世界のために女の子を口説く作品。ギャルゲーの面白さを物語に落とし込んだ作品ですね。
 『神のみぞ知るセカイ 1 (少年サンデーコミックス)』とか、『デート・ア・ライブ十香デッドエンド (富士見ファンタジア文庫)』とか、なにがはじまりかはわかりませんけど、ジャンルとして確立しているんですよね。
 本作の売りは、その攻略する相手がサブヒロインであるということ。

 この作品の世界観では、クリエイターが作り出す架空の物語が、架空ではなく、主人公たちのいる世界とは次元の違う世界として実在している。
 その世界は、あっちの世界の影響でこっちに物語として完成することもあれば、現実世界での物語に対する感情によってその世界がゆがむこともある。
 んで、メインヒロインと主人公が結ばれることで、不幸になってしまったサブヒロインに対することの怨念がウィルスとして作品の関係者をむしばむらしくってさ。
 それを解決するには、サブヒロインを幸せにしなくてはいけないって話なんですよね。

 面白いですよ。主人公は有名な役者。しかし、過度の女性恐怖症。隠れオタクで、自分の推しキャラがなぜかサブヒロインとして主人公とくっつかず、損な役回りをしていることに心を痛めていた。
 彼は『ガラスの仮面 1 (花とゆめCOMICS)』の北島マヤみたいに登場人物に入り込むタイプでありながら俯瞰した視点で全体の人間関係を把握しながら演技できるタイプの役者らしくってさ。明らかに、主人公とくっつかないよなと思うような場面から、うまいこと、読者が納得のできる流れに持っていて、相思相愛エンドにしているんですね。

 役に熱中しながら、心理戦をやっている主人公の心理描写は面白いですよ。ラブコメってさ。主人公の心理描写で、ヒロインを落とすときに、打算みたいな心情が描かれていると興ざめになるんだけどさ。この辺はそれが目的でありながらも、主人公も彼女を幸せにしたいと考えているからさ。バトル物の時の駆け引きとしての心理描写と同じ楽しみ方ができるんですよね。こういう危機的状況で彼はどうするんだってハラハラするんですよ。

 2巻も出たら、追って報告いたしますね。