そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『おまえ本当に俺のカノジョなの?』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『おまえ本当に俺のカノジョなの?』です。


おまえ本当に俺のカノジョなの? (MF文庫J)
著者:落合祐輔
イラストレーター:ろうか
レーベル:MF文庫
発売日: 2018/9/25
出版社: KADOKAWA
ISBN-10: 4040652371
ISBN-13: 978-4040652375

あらすじ
幼なじみのカノジョ(自称)の出現で、俺の「理想の青春」が修羅場に!?

計算打算を駆使し高校デビューを成功させた俺・優哉(ゆうや)は、誰もが羨む美少女三人との「理想の青春」を満喫していた。なのに、突然カノジョを自称する幼なじみ・望海(のぞみ)が現われて崩壊の危機に! って、あれ? なんでみんな急に恋のやる気スイッチ押しちゃったの? 俺らの関係は、なぜか俺争奪のアピール合戦へと急展開で、ドキドキさせられっぱなし! マズい……俺はある事情から、修羅場なんて求めてない。こうなったら俺の計算打算でアピールを華麗にかわしてみせる! って、なんだよ望海。「優ちゃん、計算高いクズに成り下がったんだね」だって? 辛辣すぎ! しかも、なんでお前が修羅場をけしかけてくるの!?

 面白いですよ。王道の学園ハーレム。
 主人公は素の自分を隠して、クラスのみんなと良好な関係を築き、自分にとっての理想的な人間関係を作り上げていました。
 序盤の50ページが彼が手に入れた理想的な日常。この時点でからかい好きの生徒会長、友達以上の気安く接することのできるクラスメイト、先輩と慕う後輩。彼女たちとの恋のちょっと手前のいい具合の関係が日常系ハーレムとしてしっかり描かれていて面白いんですね。そんな日常がある日現れた小学生の時の幼馴染、望海によって壊れていく。
 再会した彼女は主人公のことをあたしの彼氏だって言って紹介してさ。それは、小学生の時のやりとりで付き合っていると勘違いした彼女の誤解なんだけどさ。これにより、友達以上恋人未満だったほかの3人も主人公との距離を縮めていこうとする。しかし、主人公は相手が自分を異性として意識していて、その関係を一歩進めようとしていることにも気づいていて。なんとか、それに気づかないふりをして、関係を進めないようにするんですね。

 このへんが面白くてですね。全体的に青春もののハーレムなんだけどさ。そのハーレムがうまくかみ合わない原因に、どうやら主人公の中学時代のトラウマというのがあるらしくってさ。それがなんなんだろうってのがシリーズ全体の謎になるらしいんですね。

 それと、テーマもはっきりしててさ。これってさ、『干物妹! うまるちゃん 1 (ヤングジャンプコミックス)』でもやってたペルソナ問題を扱っているんですよね。
 ペルソナとは、心理学用語でさ。あるコミュニティでみせる「私」とべつのコミュニティでみせる「私」は違うよって話でさ。最近、ドラマやアニメ、ゲームでもペルソナシリーズっていうまんまそれを異能力バトルにしたゲームなんかもあるくらい最近テーマとして取り上げられることが多くなっているんですよ。
 昔でも、学校で暗い奴が塾だと明るく接してて、なぜか学校では塾での自分を口止めしたがるとか、髪染める子が家ではスカイプ使ってネットで知り合った子と話すときは丁寧みたいなことってのはあったんだけどさ。あくまで、個々人の問題でさ。そこまで一般的な話じゃなかったんですよ。しかし、最近だとSNSの発達により、コミュニティごとの自分ってのが視覚的にわかるようになったからさ。このテーマも一般の問題として広がりつつあるんだと思います。ラインとか、一つの教室でもそれぞれ細かいグループ分けでトークルームを作り分けてる時代ですからね。コミュニティごとに違う自分に対する問題ってのはだれにとっても身近なんですよ。

 主人公も小学生時代を知る幼馴染が現われたことで、ほかのヒロインたちも主人公のそれぞれのペルソナを知っていく流れになっていてさ。それぞれのヒロインに、それぞれの主人公に対する人物像があるって感じが、彼の抱えている葛藤を深くしてくれて、面白いんですよ。

 これ、2巻も読みたいですね。じつは主人公が中学の時に何があったのか、今回はわからなくてさ。どうやら、2巻でさらに大きな問題に発展しそうなので、続きも追って報告いたします。