そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『異世界トリップしたその場で食べられちゃいました』について

異世界トリップしたその場で食べられちゃいました (ビーズログ文庫)


さて、今回紹介する作品はこちら、『異世界トリップしたその場で食べられちゃいました』です。

あらすじ
お風呂で転んで気がつけば豪華なベッドの上。さらにその場でイケメン軍人さんにおいしく食べられちゃった!? 「帰れ」「そもそもここはどこですか?」「……は?」この恋は、一夜の過ちと土下座から始まった――!

許されているかどうか

今回は異世界トリップものです。異世界転移ものの女性向けです。不思議なことに、異世界転移だと男性向けで、異世界トリップだと女性向けな場合が多いんですよね。

話の内容はタイトルどおり。お風呂に入ろうとした主人公がとつぜん、異世界に転移してしまう。そしたらそこはイケメン軍人の部屋で、彼女は彼にそのまま食べられちゃいましたって話です。

アマゾンや読書メーターの評価は賛否両論。人によっては、冒頭で犯されているのに。ケロっとしてるヒロインに引く人がいるみたいなんですよね。これは男女関係なしに苦手な人がいるんでしょう。

でもですね。これ、犯されたってこと自体にはそんな深い意味はないと思うんですよ。それよりも大事なことは犯された後にできる関係です。

ヒロインを食べちゃった軍人さんは、ある勘違いから食べちゃったんだけどさ。その後の展開はさ。ヒロインを食べてしまったことに対するカルマの解消がこの巻の中心になります。

物語の冒頭があるキャラの罪からはじまって、その罪が許されるってのがさ、ストーリーラインのひとつとしてあるんですよ。一番有名なのは聖書ですね。あれも旧約聖書で書かれた人類の原罪が、新約聖書ではイエス・キリストの処刑によって許されています。古来からあるわりとオーソドックスな話なんですよ。

この罪を王子役に負わせてさ。ヒロインはそれを許す立場にあるってのがこの作品の面白いところなんですよ。

『ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ』でも書いたんですけどね。ハーレムをやるにしても、ただ起きたらまわりに女の子がたくさんいましたってだけじゃ読者は納得せず。リアリティがないっていいます。

このリアリティってのが何かと言えば。それは二種類の可能性があります。

主人公にハーレムをつくる資格があるか。あるいは、主人公はハーレムをつくることを許されているか。

基本、ハーレムものには両方必要なんですけどね。

男性向けの異世界転生や転移は資格を強調することが多い。俺にはこの能力がある、この才能があるってのを強調することで、主人公にハーレムつくる資格があることを強調します。

女性向けの異世界トリップ、異世界交流の場合は許されていることを強調されている場合が多いです。元々、その異世界の王女の生まれ変わりの生まれ変わりだとか。〇〇に認められてとか。立場や上位からの承認がされてたりします。

もちろん、ネット小説の異世界転生、転移においては女性向け、男性向けの垣根は今はないし。悪役令嬢ものとかも、婚約者という許される立場とくっつくためには運命に抗わなければいけないという資格と許しが拮抗しているものもあります。

でさ、この彼と恋愛関係になることに罪悪感を感じない。自分はその幸せを甘受することを許されているんだってとこまで読者を持っていくためによく使われる手がさ。ヒロインを被害者にして、許す側にすることなんですよ。

おそ松さんのEDでもさ。一松が、ごめん言いすぎたとか言うしさ。ドラマでもよく聞くじゃないですか。ごめんね、気づいてあげられなくてみたいなの。わりと恋愛ものでよく使われてる手なんですよ。

今回もトリップした途端に犯されたことでさ。夜はクールだった軍人さんがさ。すまないって言わせてさ。その後、大事に扱われるってのがポイントなんですよ。とりあえず、タイトルを見てじつは犯してないんじゃないかとか。食べられちゃうの意味が違うんじゃないかとか。深読みせずに、冒頭で犯されているシーンがあるんだって素直に考えて読めばそっから後も面白く読めますよ。

室内だけで展開される一巻の前半

これのすごいとこがさ。じつは巻の3分の1まで、ヒロインが軍人さんの部屋から一歩も出ていないことですね。

ヒロインがトリップした異世界ではさ。トリップする存在は珍しくないらしいからさ。軍人さんはヒロインがトリップしたことを信じるんだよ。でもさ、ヒロインがトリップしたとこは魔物と戦う砦のなからしくってさ。魔物との交戦中のため、使用人の女の子は砦にいない。だから、お前が他の奴に見つかると面倒なことになるって言ってさ。彼女を自分の部屋の中に匿う。

そっから1週間だったかな。
いろいろいちゃいちゃするんですよ。

たとえば、ソファーで寝させるわけには。でもベッドを独占するなんてからの一緒に寝る。突然部下が入って来たから慌ててクローゼットに隠れたらキャッ近いとか。

後さ、魔物と戦った軍人が血まみれで帰って来たから怪我したのと心配したら。返り血でさ。じゃあ洗いますとかもあったよ。

スゴイのはさ。部屋の中にいたからヒロインが一回も魔物に会ってないんだよね。それでさヒロインと軍人との小さなスキンシップから徐々に大きくしてさ。ある日起きた事件で二人の仲が急接近ってのを外に出ずにやるのはスゴイですよ。

2巻に期待

今回残念だったのがさ。最後まで軍人さんの罪を許すまでの丁寧に描いたことで。二人のいちゃいちゃシーンとか。異世界トリップの魅力でもあるさ。ちょっといいなと思った男がわたしのおかげで出世して、まわりの女は羨ましがってるけど。わたし、彼とは〇〇の時からの付き合いだからね要素が薄かったですよね。

ヒロインが砦の外にも出てないし。軍人さんが出世するための障害とも出会ってないからさ。二人の恋愛関係の進展があっても。もう1つの大きな物語の進展がなかった。たぶん2巻読むからそれは今後あるのを楽しみにしてます。