そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『僕はリア充絶対爆発させるマン』1巻から3巻までについて

さて、今回紹介する作品はこちら、『僕はリア充絶対爆発させるマン』です。


僕はリア充絶対爆発させるマン (ファンタジア文庫)
著者:浅岡旭
レーベル:富士見ファンタジア文庫
発売日: 平成29年11月20日
出版社: 株式会社KADOKAWA
ASIN: ISBN978-4-04-072522-2

あらすじ
この社会では、モテ度を数値化した『恋愛適性』によって人生が決まる。適性が高い者はリア充養成学校『告立校』に進学し、低い者は非リア専用の『独立校』へ強制送還される。初の適性0点を出したリア充に憧れる少年・遙真は、リア充から迫害を受けるなか、突如『リア充を爆発させる能力』を発現する!「あの独身術…アンタ非リアの天才ね」困惑する彼に目を付けたのは反リア充組織の少女・姫奈。勢いのまま彼女と共にリア充のフリしてリア充破壊活動に挑むことに!?さらに無個性やニートな非リア系女子たちも続々と仲間になり―。非リアヒロインと贈る異能青春ラブコメ、大爆誕!

作者のTwitter
https://twitter.com/arthurianroman

どんな話か

未来を舞台にしたディストピアものです。導入のストーリーラインが、未来に存在している不平等の格差に気づかず、逆にこの世界の体制に同調する側であった主人公が、とあることをきっかけに差別される側に回り、同じ立場の仲間たちとともに体制と戦うようになる。
同じのだと、映画なら『第9地区』、ラノベなら『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』、後、メジャーなのだと『レゴザムービー』と同じ導入でしたね。

『レゴザムービー』もさ。主人公が今日もみんなと同じように働こうって言ってさ。歌いながら1日のレゴシティでの1日の様子を語ってさ。あることをきっかけに反体制側に回る。

ディストピアものでは理想的な導入でさ。最初、主人公が体制に賛成する側に回らせたほうが世界観が説明しやすいし、後でそんなまさかこんなことになるなんてって感じでハラハラさせれますよね。

本作の世界では、少子化と性犯罪率の上昇を問題視した日本が、恋愛適正率を思春期の時期に測っていてさ。高い人には恋愛を推奨する教育を、低い人には独身で生涯をおえるための教育を行う施策を取っていた。それにより、リア充と非リアの差別意識が国民の間で生まれてしまいましたって世界なんだよ。

この世界では社会で差別され抑圧された非リアたちはリア充を撲滅させる組織、喪中の獅子がカップルを別れさせるテロ行為を行なっていました。

そんななか、主人公の八木遥真はリア充に憧れる高校生。リア充たちが集まる告立校に入るため、日々恋愛指数を上げるための努力を 欠かしていませんでした。しかし、待ちに待った合格通知日の際、自身が恋愛適正が0であることを知ってしまう。

こっからの流れがいいですよね。リア充に憧れていた主人公の目の前でさ。リア充は醜いって思わざるおえないエピソードが次々と流れる。それにより、主人公の中でリア充を憎む気持ちが生まれ、彼の運命を変える「ヒロインとの出会い」が起き、彼は喪中の獅子に入り、精神的に追い詰められた非リアだけが持つことのできる異能に目覚める。

ここで、非リアとリア充に分ける体制に置かれた思春期の心の揺らぎにより、この世界には独身術と愛気道の二つの異能が存在することが明らかになります。主人公は「リア充を爆発させる」という独身術に目覚めました。

こっから、1巻の後半は異能バトルになって行き、主人公の目的が、不思議な力を持つと言われる性遺物を集めることと告際恋合たちとの戦いになっていきます。

ダブルヒロイン制

この話は異能×ラブコメ。なので、ヒロインたちのイチャコラが多いです。比率的にはラブコメが7、異能が2、SFが1ですかね。
メインで絡むのが主人公の運命を変えるきっかけとなった伊集院姫奈。中学の時はリア充に憧れていたが、あることをトラウマに、リア充を憎むようになる。
主人公と反発するも、彼と似た生い立ちをもつ彼女はしだいに彼に惹かれるようになる。しかし、非リアを憎み、恋愛を憎むため彼の前で素直になれないツンデレなとこが可愛い。
そんな彼女に対するライバルが国続聖愛。恋愛適正が100で告際恋合の議長。1巻で困っているところを主人公に助けられることで好意を持つようになる。そして、主人公から他のリア充とは違うところを感じて彼のことが好きになる。
ラブコメの3角関係で大事なのが、くっつく理由と同じくらいくっつかない理由による恋のパワーバランスの調整。
姫奈は恋愛に対する恨みにより、立場上主人公のそばにいることができても、自分の気持ちを認められない。反面、聖愛は主人公に対して素直に恋を表明するも、立場上、敵であるため主人公に近づけない。
この辺で上手いこと「恋のパワーバランス」を取っています。

物語が進む連れて広がるハーレム

このダブルヒロインを軸に、主人公のハーレム候補のヒロインが敵味方陣営問わず増えていく。
1巻の時は恋愛適正0と言われていた主人公が、この人は他の人とは違う効果でどんどんハーレムを拡大します。
僕、ヒロインのなかだと一ノ瀬雪が好きですね。

3巻での締め方について

本作、あとがきによると「今回をもちまして一区切りとなりました。」とのことで、つまり事実上、3巻で完結しています。
そのため、3巻では時間が半年経っていて、最後の強敵が残りの性遺物を駆使して主人公たちと戦い。追い詰められた結果、主人公はある選択を強いられるという話になっています。
1巻や2巻と比べると、ストーリーの流れが一気に早くなっていて、これはこれでかなり面白い。
ただ、個人的にはこの話は1巻分じっくりやってほしかったなといったエピソードや問いかけが多かった。
例えば、今回、前半では主人公の恋心を自覚した姫奈がそれにより独身術を使えなくなる事態に陥ります。
そんななか、独身術と愛気道を超える力の存在が示唆され、それがラストの伏線になるんだけどさ。
今回姫奈に対する問いかけの答えを主人公がラストで出すわけだけどさ。
それは、1巻かけて姫奈が自分で考えて答えを出してさ。たぶん主人公が手に入れた能力と同じ種類の力を覚醒するはずだったんじゃないかなと、読んでて思っちゃうんですよね。
個人的には、キャラクターが可愛くて好きだったのでもっと巻数が欲しかったのが正直な気持ちですね。

今後の期待

この作者さんの次回作は引き続き読んでいきたいですね。バカっぽい設定の詰め込み方が好きですし。主人公のキャラの立て方と世界観の伝え方が綺麗です。
ヒロインの引き出しも多く。彼女と主人公の反発からの、好意を持つまでや考えが変化していくまでの細かいエピソードの積み方も上手い。
ハーレムもののため、複数のエピソードが絡むわけなんですけどね。大筋の話がブレないようにしながら、キャラクターそれぞれの細かいエピソードを積んでいき方が上手いんですね。
こういう人の次回作は期待せずにはいられませんよ。今度、新刊が出たらすぐに買わせていただきます。