さて、今回紹介する作品はこちら、『理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?』です。
あらすじ
白銀冬真は救世主である。
――今はありふれた専業主夫だが。
人類再生機構・凰花。
そこは胞子獣との戦いに敗北し、地下へと追われた人類に残された最後の生存圏であり、最下層の《学園都市》では人々の唯一の希望たる《魔法騎士》が育成されていた。
中でも特にエリートが集まる《第一魔法騎士学園》に冬真の娘・白銀雪奈は試験で史上最高のステータス値を記録し、最強のSランクとして入学する。
戦場を離れた後、静かに成長を見守ってきた愛娘の姿に涙する冬真だったが、ある日彼に極秘の指令が下る。
「娘とともに学園に通え。これは、特務指令だ」
世界最強の娘と、表向き一般人の父。
二人の尊い絆と、波乱の物語が始まる!
8月に読んだ本の中で、今、一番続きが楽しみな作品です。
主人公はパパで、ヒロインは娘。最近、多いですよね。読者層が高齢化して、それに合わせる形で父親が主人公の作品が増えてきたのでしょうか。
近未来、胞子獣という怪物と戦うためにある特殊な力を訓練する学校が舞台。主人公は最強なんだけど、ステータスだけでみると一般人レベル。逆に娘は史上最高のステータスでSランク。
周囲はステータスだけ見ると弱い主人公をバカにするも、じつは彼がかなり強く。娘もそんなパパを尊敬している。
この流れで有名なのと言えば『魔法科高校の劣等生』ですよね。
学園で劣等生として扱われる男がじつは最強で、そんな男の妹は成績が優秀なのだけども、自分よりお兄様がすごいと褒める。
「さすがお兄様」 、略してさすおになんて言葉がありましたね。
あれのイメージが強いからさ。このストーリーラインで最近のものな感じがするけどさ。
わりとこれに近いのがかなり昔の漫画でもあるんだよね。
それが手塚治虫の『ブラックジャック』。
あの作品も無免許の医師という公の評価を得ていない男が、じつは凄腕の医者でさ。彼のそばにいる近しい家族のピノコは先生はスゴイのに、と言っている。
手塚さんがブラックジャックを描いていた頃って、漫画に対する風当たりが強い時期だったからさ。
俺にはこんなにすごい才能があるのに、世間は認めてくれないって気分があの人にもあってさ。それがあのストーリーラインを生み出したんですよ。
このストーリーラインで共通することがさ、「公の評価を得られていない男が、その評価を下す側の世界の在り方に疑問をもつ」ってこと。
この本も、すごすぎる娘のそばにいるには不相応な男と思われる主人公がさ。その立場に甘んじながら、彼らを教育する学園の在り方に疑問を抱いているって流れをやっていますよね。
例えば、この世界では胞子獣という怪獣が突如出現してさ。その怪物は現代の科学兵器では倒せなかった。だから、その後で研究が進められていた特殊な力で胞子獣に対抗したんだけどさ。時すでに遅しで、人類はほぼ壊滅状態。そんな中で残り少ない人類をコロニーのようなところで生活させながら。若者たちにその特殊能力の訓練を学園でする。ゴジラのファイナルウォーズみたいな感じですね。
そうするとさ、能力を使いこなし始めた生徒に対して、学園に在籍する先生が頼りない。主人公もそのことを問題にしてましたよね。
ようはメジャーとか。巨人の星みたいなさ。すごい選手が学校の野球部にいるけど、教える先生は野球が得意じゃないみたいな状態ですよ。
この辺は今でも通じる問題ですよ。時代の流れが速くてさ。今の知識は役に立たない。新しいことを学ばなきゃいけないんだぜ、と言っても。そもそもその新しいことを教えられる先生っているんですかって話ですよ。
プログラミングを学校の授業に取り入れようってお偉いさんは言っているけどさ。それを教える先生はプログラミングができるんですかって話が問題になってるじゃないですか。
この話の肝ってさ。世界を救えるかもしれないほどの最強の力を持った娘をちゃんとヒーローとして育てられるのかって話でさ。
その話には、この辺の問題が今後関わってくるんじゃないかなと思いますよ。
それでは、次巻も追って報告いたします。