そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『偏差値10の俺がい世界で知恵の勇者になれたワケ』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『偏差値10の俺がい世界で知恵の勇者になれたワケ』です。

偏差値10の俺がい世界で知恵の勇者になれたワケ

あらすじ
ちょっとおバカな少年、田中竜一。彼が転移したのは別世界のオーバーテクノロジーで人類が自堕落になり、数をかぞえることも読み書きもほとんどできなくなった、知力ゼロの「い」世界だった!い世界人には不可能であった“聖剣”の封印を解いた竜一は、“10まで数えられる”賢者の娘・ミシェルとともに、知力の高さで人々を恐怖に陥れる魔族四天王“策謀”“無双”“最速”“統率”と“飄々”と戦い、さらにはい世界人の再教育をすることに―!?知恵の力で無双する「い」世界冒険譚、始まります!

カクヨムのURL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882072437

今回はこの物語の源流にあるインフレしすぎた俺TUEE、ネットと書籍版との違いについて話します。

目次

インフレしすぎた俺TUEE

この作品は俺TUEEを描きたいがあまり、異世界の住民がバカになるってとこをギャグとして描いています。
ネット小説には、現在進行形でたくさんの異世界俺TUEEが量産されているんですけどね。その中には、小学生が夏休みにまとめて書いたようなのがあってですね。
そうした作品の特徴として、作者の知識不足を補うために、主人公の周囲をバカにすることで、相対的に主人公を頭が良く見せるって手法があるんです。
この作品はその点を強調して描いたコメディなんです。

主人公が転移した世界の住人は、総じて知能が低い。数を数えることができず、村の名前も王都から右の村というネーミング。村の職人たちも、古のオーバーテクノロジーで作られたなんでも作れる機械にそれぞれの一族から伝わる順番にボタンを押すだけ。靴のボタンの押し方を知っている人、オムライスのボタンの押し方を知っている人が今日も作るために機械の前に並ぶ。
それに対して、だれも疑問に持たず、小学生の主人公に指摘されてようやく自分たちのしていることの矛盾に気づく。
読んでてゲラゲラ笑いましたよ。

しっかりしたテーマ性

この作品、現在の量産されるなろう小説を皮肉るだけかと思いきや。じつはテーマがしっかりしている。
前半で、荒唐無稽な異世界人たちの生活を描きながらも。そんな彼らも、きっかけさえあれば成長できるというテーマをちゃんと描いています。
例えば、10まで数えられる賢者の娘のミシェル。彼女は、主人公の魔王を倒す旅に同行することで。自分にも、足し算を理解することができることを知り、成長していきます。
この作品は、異世界住人たちの成長と変化をコメディを交えながらしっかり描けていてそこが上手い。

ネットと書籍版との違い

後ですね、この作品にはネットの時から注目していたんですが。ネットと書籍版では大きな改善点がありまして。そこが上手いなと感じたので話します。

ネタバレがあります。











それは魔王の設定を改変したことですね。ネットでは魔王と主人公との間に接点がないんですけど。書籍版では、じつは魔王は主人公の〇〇という設定に変わりました。

それと、後半からツッコミ仮面という魔王が扮するツッコミをする謎の男が現れるんですが。これにより、ツッコミなしのギャグにメリハリがつきました。

それと、魔王と主人公に接点を作ったことで。ネットの最終回で描いた学校を作ってみんなでお勉強って展開に主人公が絡むことに説得力が出ましたね。

これで続刊も出やすい。

とりあえず、作者のロリバスさんが好きになったので。この人の次の作品が出ましたら、また追って報告いたします。