そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『キミの忘れ方を教えて』について

 さて、今回紹介する作品はこちら『キミの忘れ方を教えて』です。


キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)
著者:あまさきみりと
イラストレーター:フライ
レーベル:角川スニーカー文庫
発売日: 2018年9月1日
出版社: 株式会社KADOKAWA
ASIN: ISBN978-4-04-107091-8

あらすじ
俺は死にゆく身、なのにキミは何度もそれを許さない――青春感動巨編、開幕

「残された余命は半年――、俺はこのまま死ぬつもりだった」

大学を中退してニートとなり、生きる価値がないと感じていた松本修は、昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れる。
そこには芸能人となってしまった因縁の幼馴染み・桐山鞘音がいて……。この出会いが再び修の運命を突き動かす。

『天才ゆえの孤独を抱えたヒロイン、凡才ゆえに苦悩する主人公。二人のすれ違いと、遠回りな青春に引き込まれました』
『逃げて逃げて、逃げ続けたクズに残った一つの約束。胸が熱くなりました』 発売前から感動の声多数。

掴めなかったチャンス、一度何かを諦めてしまった人に贈る、大人の青春物語。

 心を揺さぶられるいい作品ですよ。
 読んでて、胸を締め付けられる切なさを感じました。
 主人公がさ、残された余命を使って、過去においてきた青春を取り戻そうとする。
 これが簡単にいけばただのいい話なんだけど。そう一筋縄ではいかないんですよね。
 主人公に向けて投げかけられるヒロインの言葉の一言一言は。
 青春時代になにかを諦めてしまった人。楽なほうに逃げてしまったという自覚がある人には読んでいて辛いものがある。

 俺達にはこういう女の子はいなかったけども。
 なにかに熱中していた時ってのがあってさ。
 だけど、現実だとか、将来の不安とかで、それをやめてしまった。

 主人公に対して微妙な距離感をとるヒロインは、まるで僕らが置いてきてしまった夢を擬人化したかのような存在にみえました。

 恋愛ものとしても完成度が高かったですよね。主人公とヒロインのほかにさ。もう一組、主人公の親友で結ばれることのできたカップルが出てくるんだけどさ。
 彼らがじつは主人公たちのありえた未来を暗示してくれる存在になっているんですよね。だからこそ、その道にもし進んだら何を失ってしまうかもわかっちゃってさ。
 そのうえで、主人公とヒロインの選ぶ選択ってのが感動につながるんですよね。

 いい作品でした。おすすめです。