そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『異世界に間違った人材を派遣してしまったのですが何とかしてもらっていいですか?』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『異世界に間違った人材を派遣してしまったのですが何とかしてもらっていいですか?』です。


異世界に間違った人材を派遣してしまったのですが何とかしてもらっていいですか?(泣) ―異世界の 法則が みだれる!― (電撃文庫)
著者:逢坂為人
イラストレーター:もくふう
レーベル:電源文庫
発売日: 2018年9月7日
出版社: 株式会社KADOKAWA
ASIN:

あらすじ
【悲報】女神様、俺の前で土下座。
 知識はあれど知恵がない残念女神ぺディア様の「お願いします、助けてください!」の土下座にドン引きしつつ、憧れの異世界に転移してみると――そこは、先に派遣された人材が「やらかしちゃった」異世界で!?
 不正だらけの失敗経済、日本料理で異世界文化汚染、スローライフに魔法戦争……問題山積みの異世界を、手元の知識と勢いで……救えるの?


面白いですよ。主人公とヒロインは知識の女神ペディアによって異世界に送り込まれる。しかし、その異世界が先に来ていたひとが「やらかしちゃった」異世界だった。

2人はさまざまな異世界に渡って、やらかしちゃった異世界を元に戻していきます。

そう聞くとさ、てっきりチート能力で調子に乗った人を止めるみたいな話かと思いきやさ。先に派遣された人は自身の才覚でそれぞれやるべきことをやった結果、思わぬ方向に事態が動いてしまってるんですね。
主人公の2人はそれを何とかするために先に来ている人をサポートする立場に立っている。

読んでて思ったのがさ。最近の異世界転生もののように描いているけど、これ、キャラの視点を先に異世界に来た人を中心に考えると、ストーリーラインが児童文学的なんですよね。

ピーターパン、はてしない物語、ナルニア国物語にも共通するお約束ってのがあってですね。それが、なにがしかが欠けている未熟な人がさ。架空の世界に行ってある試験を受けることで大人の階段を登るってのがあってさ。

高いところからジャンプして川に落ちるとか。道端の草を食べるとか。アリを潰すとか。本気でUFOを探すとか。大人が子供っぽいと考えていることは、大人になるために必要な過程なんだってのが児童文学書く人に共通してあるんですよ。

クリスマスキャロルとか、まさに子供の時に受けるべき試練を受け忘れた大人が、歳をとってから受ける話ですから。

そして、この作品の失敗経済や魔法世界で軍事チートの話がまさにそれなんですよ。

突然、異世界の財務を担当することになった人はそこで増えてしまった不正に真正面から立ち向かおうとして磨耗してしまうし。軍事を異世界に教えた人は自分の願望を叶えている。

そうやって、架空の世界で挫折したり、願望を叶えた人が元の世界で成長して戻ってくるってのがセットになってるんですよね。

もちろん、そのまま異世界にいつく場合もあるんだけどさ。これさ、主人公たちは成長していないけど、それ以外の視点人物でない人が成長して終わる話になるように描かれているように感じました。

そして、ラストで2人が異世界の旅から卒業して2人で現実世界を満喫するためにデートに行くと思わせて、また異世界に行く。
これ、涼宮ハルヒの憂鬱のラストと2巻の序盤であった。ヒロインと主人公が成長して物語が終わるかと思いきや。その成長がキャンセルされて日常が続いていくというオチだね。

一つの世界観の短編集的な話で読みやすかったし、内容も面白い。いい作品でした。

次巻も引き続き読んで紹介します。