そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』7巻について


スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました7 (GAノベル)
著者:森田季節
レーベル:GAノベル
発売日: 2018/7/12
出版社: SBクリエイティブ
ASIN: B079K6ZMT4

あらすじ
≪WEBサイト「ガンガンGA」にてコミカライズ&スピンオフ小説好評連載中!≫
300年スライムを倒し続けていたら、いつの間にか――狐耳(と尻尾)が生えてました!?

「モフモフできるお姉様が欲しい」とイタズラされたせいです…(魔王め!)
おかげで本能に逆らえなくなった私は、「油揚げ」を求めて、魔王城中を暴れ回る事になってしまうのですが――!?
ほかにも、私を転生させてくれた女神様と再会したり(感動!)、ピラミッドっぽい遺跡で、幻の古代文明を解明したりします!

巻末にベルゼブブのドタバタわーきんぐ物語
「ヒラ役人やって1500年、魔王の力で大臣にされちゃいました」も収録でお届けです!!

小説家になろうの連載
https://ncode.syosetu.com/n4483dj/
コミカライズの連載
http://www.ganganonline.com/contents/slime/

シリーズ全体の魅力

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』は、平穏系の主人公の話です。

主人公の相沢梓は現世で過労死してしまいます。しかし、女神様によって不老不死の魔女のアズサとして転生することに。

次の人生ではスローライフを送ろうと考える彼女は、薬を作り、毎日コツコツスライムを倒す日々を送る。こうして300年の時が立ちました。

300年後、彼女の住む高台の近くの村ではアズサの名前を知らないものはいません。魔女として細々と暮らしていた彼女はスライムを倒す傍ら、薬を研究して町の人々の病を治して暮らしていました。これにより村の人口は増え町と発展する。酒場に行けば、自分が病気を治した人からお礼を述べられ。前世で誰にも認められずに仕事を抱え込んでいた時は違う充実感に満たされていました。

『スライム300年』って、じつは主人公個人だけをみてみると。彼女は物語の序盤で抱えていた願望をかなり初期の段階で叶えているんですよね。

異世界転生ものってさ、基本猿の手と同じストーリーラインでさ。なんでも願いを叶えられる超常の存在がいたとして。その存在に自分が願った通りのものを与えられた時。その人は本当に幸せになるのか。はたして言葉で伝えた通りのことが自分の本当の願望なのかってのが根底にあったりするんですよ。

実際、神様の前で次の人生はこうしたいって願っても彼らの前にはなんらかの障害があったり、自分が予想していたこととは違う結果があったりして。右葉曲折の結果、仲間だったり、本当の自分を見てくれる女の子だったりが手に入るってストーリーが多かれ少なかれあるんですよ。

アズサの場合、彼女は健康な体とのんびりできる田舎の暮らしを願った結果、不死の魔女の身体と田舎の土地と家を手に入れる。そして、そのまま300年立ちましたって省力されてさ。その言葉の裏にあった、努力しても誰も認められないという。過労死した異世界転生者が深層心理で抱えていた不安を次のページでの街の人たちからの感謝の言葉で解消している。

つまり、願望が叶っている世界なんです。

そんな状態でこれから物語がはじまるんですよってなった場合、どうなるかといえばさ。主人公の目的がなくなった状態なわけだからさ。そこから物語が進むのは停滞した日常であり、それの代表的な流れがサザエさんやこち亀、という家族ものや人情ものにつながるんですよ。

スライム300年とは、努力とはなにか、というメッセージが一巻にあるんだけどさ。それも一度物語としてラストを迎えた後だからこそ。弟子となるライカに教訓として伝えることができるんです。

それでは、7巻の内容に移りましょう。今回は魔王ペコラが活躍する短編、ロザリーに友達ができる、ベルゼブブのスピンオフについて話した後で今後の期待について語ります。

魔王ペコラが活躍する短編

今回は魔王ペコラが活躍する短編が多かったですね。彼女は作中で、ベルゼブブのように主人公たちに事件を持ち込む依頼者の役割や、『こち亀』の中川やドラえもんのように。物語の舞台を作り上げるための便利キャラとしての役割を持っています。
つまり、話を転がしやすいキャラなんですね。
実際、魔界の農相であるベルゼブブと魔王のペコラがいることで、魅力的な魔物キャラとアズサとの間の接点は作られています。
それにアズサを振り回すことのできる唯一のキャラクターでもあります。 今回、彼女のおかげでアズサの可愛らしい一面を見ることができましたからね。
ペコラはいいキャラですよ。

ロザリーに友達ができる

アズサの家に憑いている悪霊のロザリーに同じ悪霊の友達ができました。古代文明の王で死してもなおその怨念で現世に残る悪霊のムー。彼女(彼?)のキャラクター性が明らかになるのはこれからだと思うので、今後の活躍が気になりますね。

ベルゼブブのスピンオフ

それと、ベルゼブブのスピンオフが収録されていましたね。これは5巻の時から収録されていた彼女がヒラ社員から魔界の農相までに出世するまでを描いたスピンオフです。
今回はじつは過去にアズサやファルファ、シャルシャ、ライカにすでに会っていたよという話でしたね。
こぼれ話らしい。いいスピンオフです。

今後の期待

今後の展開で気になる点は、ついにアズサが自分を異世界に転生させてくれた女神様と再会できたこと。後、アズサの今後の成長の可能性。また、サンドラ関連のストーリーが進行する可能性ですね。

7巻で、アズサは自分を異世界に転生させてくれた女神様と再開します。今まで、ドラゴン、エルフ、魔人、獣人、アンデット、悪霊といろんな種族と交流し、精霊とも知り合いとなった彼女ですがついに神様との交流が行われることになるんですね。

こうなってくると、人間関係に関しては手を広げ切った感じがするので、こっから先どうなるかが気になりますね。

また、次のようなセリフをアズサが地の文で言ったのも気になります。

もしかすると、私もまだ成長できる余地があるのかも。たとえば、魔族とか古代文明の魔法を覚えるとかね。あるいはこの世界の神様から何か力を授けられるとか。
そのために一生懸命になりすぎて、スローライフどころじゃなくなるのは勘弁だけど、通信教育のノリでやれて挑戦できるなら試してみてもいいかもしれない。時間はたっぷりあるわけだし

アズサが異世界での風習や文化に対して所感を述べるのは珍しいことではないので、深い意味はないかもしれませんけども。じつは新たな力を得るための伏線の可能性もありますよね。レベルMAXになりましたってのがタイトルなわけでさ。今までアズサが成長するってことはなかったんだけどさ。やろうと思えば新しいスキルや魔法を手に入れることはできるんですよね。
そういう展開ももしかしたらあるかもしれません。

また、今回、ロザリーと同じ存在が出てくることで後半は彼女をメインにした短編だったわけなんですけども。このアズサの家族に当たる存在が自分と近しい存在がいるところを見つけ、主人公のアズサも一緒に行くって流れってさ。5巻のシャルシャとファルファの精霊会議や、6巻のハルカラのエルフの森であった展開と同じなんですね。
そうなると、消去法で考えればマンドラゴラのサンドラも自分と似た存在がいる場所をみつけ、アズサもその場所について行くという展開が今後あるのではないかというのが僕の予想です。

もちろん、いつものことながら外れても当たっても面白いんですけどね。

では、8巻も追って報告いたします。