そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『エロマンガ先生』10巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『エロマンガ先生』10巻についてです。


エロマンガ先生(10) 千寿ムラマサと恋の文化祭 (電撃文庫)
著者:伏見つかさ
レーベル:電撃文庫
発売日: 2018/8/9
出版社: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ASIN: B07F7Q8XB3

あらすじ
『エロマンガ先生』待望の最新刊! 年下の先輩作家・千寿ムラマサがマサムネに……!?

「兄さん……一緒に、寝てもいい?」
 紗霧との甘い日々を過ごしていたマサムネは、ムラマサの父・麟太郎に呼び出される。千寿ムラマサのえっちすぎる新作小説が大騒動を巻き起こす!
 秋――『青春の思い出』を作るため、ムラマサの通う女子校の文化祭に赴いたマサムネたち。
「兄さん! お嬢様の群れをジックリと観察したい!」
「クラスの人気者ですよ、花ちゃんは」
「千寿ムラマサ先生は文芸部の神です」
 コスプレ喫茶に占いの館、エルフのミスコン出場などなど、文化祭を巡るうち、謎に包まれていた梅園花の学生生活が明かされていく。そして運命の後夜祭へ……。

シリーズ全体の魅力

『エロマンガ先生』はバクマンを皮切りに増えていったライトノベル作家を主人公にしたクリエイターものの作品です。

このジャンルは、同時期に『妹さえいればいい』も存在しており。最近だと、『このラブコメが1位』という作品も有名。

この作品のことを語る上で注目すべきは、この作品の作者、伏見つかささんの前作に『俺の妹がこんなにかわいいわけがない』があり、この作品が最終回で炎上してしまったことだろう。

その時の炎上理由が、複数の人気キャラが主人公と関係性を築き上げた上で、最終的に妹を選ぶのだが。その際にドロドロとしたやりとりがあり、人気キャラが汚れ役をやらざるおえなくなる事態に陥ったものの。やっぱり妹とは付き合えないよねっと言って、元の関係性に戻ったようにみせかける展開が読者のヘイトを集めてしまったことにあった。

このハーレムだったラブコメが最終巻で1人の女の子を選ぶためにグダグダになるという展開は、長期連載のハーレムラブコメでは致し方のないことで、『妹さえいればいい』の作者、平坂読も、前作の『僕は友達が少ない』で同じくハーレムの末の最終巻が炎上している。

ちなみに、ハーレムものは長期連載の中でじょじょに人気が下降して最終巻の存在は一部のファンだけで読まれる場合が多いので。この炎上は最後まで読者の注目を集めることができた作者の力量によるものである。

こうして炎上を経験した作者が自分の描くライトノベルとはなんだろう。あるいは、ラノベ作家とはどうあるべきかと考えて自身の業界をぶたいにした作品を書いたということは因果関係としてとても興味深い。

こうしたハーレムでの炎上を踏まえて、平坂読さんの場合は、連載中の『妹さえいればいい』では、誰が誰を好きになって、どう失恋するのかと言った「人間関係の交通整理」を意識したラブコメを描いている。
一方、伏見つかささんの場合は、血の繋がった妹が問題なら、義妹にしよう、さらには両親はすでに死んだことにすることで、妹キャラとの正規ルートを開拓した。

この辺に2人の作家のキャラクター性の違いが出ている。

こうして、主人公の正宗と狭霧は8巻でめでたくゴールイン。9巻ではイチャイチャ満載の障害などもはやないと言わんばかりのラブコメとなりました。

しかし、これで諦めるライバルヒロインではなかった。彼女たちは主人公のハートを射止めるためにあれやこれやと画策していたのである。

その中の1人、ムラマサの恋の暗躍が炸裂するの今巻のメインの話となる。

千寿ムラマサについて

千寿ムラマサ、正宗よりも年下であるが、同じ出版社のラノベ作家としては彼女の方がベテランといういわゆる「年下の先輩」。

時代小説作家、梅園麟太郎の娘で、自身に課した締め切りが守れない時は生爪を剥がすほどストイックな性格。普段は着物を着ている。

初出は2巻。バトルものの連載を終えた、正宗が今度は妹との恋愛を描いたラブコメを次作の連載にしようと考えていたなか。彼女の連載を邪魔するライバルキャラとして登場する。
しかし、それはすべては正宗のバトルものを読むためであった。じつは彼女は正宗がネットで連載していた頃からのファンで、彼のバトルものを読むためにラブコメの連載を邪魔していたのである。

自分にとって一番面白い作品を書いてお腹いっぱいになるのが夢。だからこそ、正宗が自身のために作品を書いてくれることになった際、もう書く必要はないと断筆宣言をした時もあった。

正宗に対する好意の示し方はヤンデレの傾向があり、1人の時にエア正宗と会話していたりする。

彼女の魅力は自分のために作品を書くという貪欲な姿勢でしょう。彼女を見ていると、僕個人自分が書きかけのままにしているWEB小説を書きたくなります。自分が一番自分の書いている作品を面白いと思っていた時のことを思い出すんですよね。

今回、彼女が正宗を落とすためにしたことは、彼女らしい行動で僕は好きです。

今回の話

今回、主人公はムラマサの父、麟太郎に呼ばれて彼女の家を尋ねます。すると、麟太郎は正宗に彼女の書いた未完成の作品を読ませます。その内容は中学三年生の娘が年上の婚約者のいる男と禁断の恋をする話で、どう読んでも、正宗とムラマサをモデルにした作品だった。

じつはムラマサは主人公の気持ちを動かすためにこの小説を書いており、この作品が完成するのは文化祭の3日目になる予定だった。

彼女は後編に自身の恋愛経験を繁栄させるために、正宗に文化祭の時に一緒にデートしてほしいと言うのだが、という話です。

面白いですよ。内容としては、主人公のコミュニティで見せていたペルソナと、別のコミュニティで見せる彼女のペルソナは違うという話でさ。

ムラマサ先輩の中学校での一面が明らかになる回でした。

ムラマサ先輩の魅力として多面性によるギャップがあってさ。最初に見せるのが正宗の前に立ちはだかるライバルとしての面を見せていたんだけどさ。じつはそんな彼の熱烈なファンでもあってさ。さらには時代小説の作家の娘としての顔や、ヤンデレとしての一面もあってさ。着物のように、綺麗な布が折り重なっていて、それが脱げていくたびに新たな色が浮かび上がるとこが魅力なんですよ。

今後の期待

今回読んでて、今後、期待としたいと思った点はやはりムラマサ先輩を中心として開拓された新たな人間関係ですね。彼女たちは今巻だけのキャラクターなのかそれとも今後、正宗たちに大きく関わるのかは興味が尽きない。

また、今回はムラマサ先輩の個人回であった以上、11巻は山田エルフである可能性は高い。彼女の恋の鞘当てがどのようなものになるかは今から気になってしかたない。

それでは、11巻も追って報告いたします。