本日紹介する作品はこちら、『悪役令嬢に転生した私がヤンデレメインヒロインとフラグを立ててしまった件』です。
作者は栗栖ティナ。彼の作品は3作品読んだことがある。
『絶対服従! いいなり許可書でお嬢様と共同生活』、『僕とお嬢様の性教育』、『さいみんレッスン』だ。
読んできた印象としては、主人公が個性的であるけども、鼻につくような個性でなくキャラとして消化できる塩梅になっている。まだ進呈していない関係性の日常を丁寧に描いている。そのうえであるきっかけではじまる性行為による今までの関係性の崩壊と昇華が読んでいて心地よい。性行為を通じての関係性の発展、あるいは変化を丁寧に描いた作品が多い印象だ。
性行為描写はもちろんのこと、序盤で描写されるメインヒロインのエステルのヤンデレ味や迫りくる危機を匂わせた上で、なぜこうなったかの回想に写っていくストーリー構成の上手さには驚いた。
本作は序盤で、大きな事件を描き、主人公のロザリーがその事件のさなかでどうしてこうなったのかを回想するかたちで物語が始まる。
これにより、メインヒロインのいじめ描写やピンチに対しても、すぐ解決する問題だと捉えることができ、ロザリーとエステルの関係強化のイベントとして純粋に楽しむことができる。
エステルのヤンデレも素晴らしい。ジュプナイルポルノは基本1巻完結ものであり、本作もその例にもれない。その場合、ヤンデレをメインに据えた場合、読者の気を引くためにもすこし駆け足で進んでしまいたくなるものだ。本作は、エステルがロザリーに惹かれ、彼女を独占したいと考える流れをかなり丁寧に順を重ねて書いているように感じる。
はじめチョロチョロなかパッパと言った感じだ。彼女のヤンデレは弱火で、少し風が吹けば消えてしまいそうなよわよわしいものだった。しかし、弱い炎はほんのちょっとの風と、木屑で大きな火へと成長するものだ。その運命を導く従者として作者に選ばれたのがロザリーの婚約者であるシャルル。この男がなかなかいい仕事をする。
彼はロザリーの婚約者であるにも関わらず、エステルに一目惚れし、彼女を口説こうとする。いわゆる百合に挟まる男である。
シャルルは型通りの悪役を演じており、読者のヘイトを集めながらも、百合小説の枠組みを壊しすぎずに動いている。自分に振り向いてもらうために、エステルへのいじめを先導した黒幕であるが、読者にはバレバレだ。序盤でいじめが解決され、それによりエステルがロザリーに好意を抱くことは明かされているため、ストレスにならない。次のページでは忘れられるレベルの彼の情けなさの強調であり、エステルとロザリーの物語のイベントの盛り上げ役だ。
とにかく物語の構成がうまいと感じる。読者にどうなるのかわからないとハラハラさせながらも、百合の描写もしっかり描いていて素晴らしい。栗栖ティナ先生のヤンデレ描写をとても気に入った。氏の作品には他にも『ヤンデレ奴隷に愛されすぎて子作りスローライフ』という作品があるらしいので近々拝読させていただく予定だ。
とても面白い作品なので、ヤンデレが好きな人はぜひ読んでみてほしい。
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