そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ぱすてるぴんく』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『ぱすてるぴんく』の1巻と2巻です。


→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)

著者: 悠寐ナギ
レーベル:講談社ラノベ文庫
発売日: 2018/5/2
出版社: 講談社
ASIN: B07CKT4G3T

あらすじ
ぼっちの高校生軒嶺緋色には彼女がいる。ブログのコメント欄から恋を芽吹かせ、ビデオ通話で愛を育んだ“ネット彼女”の楢山スモモ。新年度初日。クラス替えも静かに乗り切り、素早く帰宅した緋色だが、彼の前に、ここにいるはずのない少女が現れた!! 画面の向こうのかわいい彼女が、ぼっちの殻をぶち壊す! 本当に大事にしたかったのは、大切な人? それとも……。痛くて痒くてそれでも進む、炎上系スマホラブコメ!!

ここを起に持ってきたか

ネット恋愛を題材にしたラブコメです。面白いですよ。まず、最初に読んでびっくりしたのがですよ。この作品、スカイプ越しに彼女と楽しそうに会話するところから始まるんですよ。しかも付き合って1周年記念だね、みたいな話ししててさ。もうその時点でびっくり。
だってさ、付き合うまでの過程をそこまで描写せず、わりとサラッと書いて終わらせてるんですよ

二人が付き合っているのに理由いる? 当たり前じゃんって言いたげにさ。

この時点で、俺が普段読んでいるラブコメとはかなり毛色が違うなと思いましたよ。

本来であれば起承転結の結にしてもいいくらいのイベントをさ。起に持って行って、だけど二人の恋はこれからが本番なんだよってやるのはさ。俺よりも若いのに恋愛経験が豊富そう、というか、俺には絶対書けんって思いましたよ。

だって庶民は、シンデレラがお姫様になったところで勝ち確だと思ってさ。ハッピーエンドだねって思うわけでさ。その後が大変なんだよねって言い出すのはさ。わりとある程度豊かになって上流階級での暮らしというさ。成功した後の人生を想像できるくらいの余裕ができてからじゃん。

この発想になる時点で、人生経験の差みたいなものを感じましたよ。

ガンダムに振り回されるセイラさん

俺さ最初の部分を読んだときはさ。あ〜あ、これはきっと『耳をすませば』や『モノクロームサイダー』みたいに、俺の学生時代にこんな青春はなかったみたいなさ。心をえぐられる思いをすんだろうなって、戦々恐々したんだけどさ。

読んでみると、そんなでもなくてさ。逆にさ、心に余裕を持ってさ。主人公が不幸になる場面ではちょっと笑っちゃったりもしました。

それは僕が『君の名は』を一人で見た時にミツハが手のひらを見たら「好きだ」としか書いてないみたいな場面で爆笑するような嫌なヤツだからってのもあるんだけどさ。

それだけじゃなくてさ。

この作品はさ。ネットをバカにしていたはずの人種がさ、iphoneによって身近なものとして使うようになってさ。それによって苦しんでいる青春模様がさ。

なんか小学生の時から2ちゃんやってるとか、オンラインゲームやってたみたいな側からしてみたらさ。そうか君たちはそういう失敗をしちゃうのかって思うんだよ。

そもそもさ、主人公の軒峰緋色っていう高校生はさ。自分のことを隠キャだって言ってんだけどさ。そりゃ、もともと隠キャの性質を持っていかもしれないけどさ。じつは中学の時は陽キャなんだよね。

でさ、中学の時にある失敗をしてさ。それを境に高校からはクラスのみんなとあまりかかわらないように生きてきたんだよ。

その辺のさ。失敗もそうだし。その後の主人公たちの戦う敵みたいなものがさ。いわゆる大きな力を持ってしまった未熟なものたちとの戦いに、どうしても見えちゃうんですよね。

たぶんこれさ。俺だけじゃないと思うんですよ。今のうちに予言するとさ。これ、絶対アニメ化、映画化、ドラマ化されると思うけどさ。
絶対、要所要所でさ。SNSでの立ち振る舞いやブログのところとかさ。ツッコむオタク出ると思うんですよ。

もちろん、これは俺の話だって言ってさ。聖地巡礼しちゃったみたいな人とか出るし。王様のブランチあたりで。じつはこのお店、あのドラマの名シーンで使われたんですとか言ってさ。でかでかとラノベの挿絵が出たりすると思いますよ。

でも、この作品世界のネットに振り回されている人らがさ。ネットの慣れ親しんだ一部にとってはさ。なんかさ、異世界人を見ているような気分になるんですよ。

言葉がうまく説明できないんだけどさ。

なんていうかさ。この作品ってさ。スマホを抜きにして考えればさ。同調圧力というクラスの中にある空気感が主人公の敵になってるんですよ。

弱キャラ友崎くんやようこそ実力至上主義の教室とか、わたモテとかね。最近の作品でわりとよくみる敵キャラ。

そこにSNSが加わっているんですよね。

主人公たちはこの同調圧力に苦しめられた末に、周囲の目を機にするあまり俺は大事なことを忘れていた。愛している彼女のそばにいることの方がクラスのみんなの目よりも大事じゃないかって結論に至るんですよ。

俺さ、恋愛ものに対して斜に構えた考えを持ってるしさ。知り合いに中学時代の軒峰くんみたいなことした人を見たことがあるから、完全に他人事ってのがあるんだけどさ。

これ、ここまでおおごとにならないと気づけないのかと思っちゃうんですよ。たぶん、絶対にこれを読んで救われる人いるだろうしさ。名作なんだけどさ。

教室の隅でアニメをするオタクが通り過ぎている悩みをスゲェ悩んでいる様がさ。完全に他人事で読んじゃうんだよね。

絶対アニメ化やドラマ化するよ

読んでて確信したのが。これ、このまま連載が進めばアニメ化、ドラマ化、実写映画化はわりとあるんじゃないかと思っているんですよ。

まず、ネットやSNSという今の若者が使っているアイテムをストーリーにうまく絡めている。
思わず笑っちゃうって言ったけどさ。クラスのカーストが低かったひとや感性が古いひとが共感しないってだけで。
話自体は時代性があってさ。面白いんですよ。

共感しないってのも、ちょっと語弊があってさ。俺はこんな経験したことないけど、同じ立場だったらこう考えちゃうのかもなっていう感情移入はしちゃうくらい完成度は高いですから。

それと、秋葉原の2k540とかさ、実際の場所をモデルにしてヒロインとのデートや感動的な場面を描いているのはすごいですね。
主人公たちがどの辺に住んでいるとかも、書いてないけど考えてんだろうなってのがわかるくらい風景の描写が細かい。

アニメ化、ドラマ化する時に場所のすり合わせするのが大変そうだなって思いましたもん。
ライトノベルの時点で聖地巡礼ができる作品ってあんまり見ないですよ。

この二つの点でアニメ化やドラマ化はいつかするんじゃないかと思っていますよ。

今後の期待

期待としては、やはりまだ掘り下げられていない夕波檸檬と萌葱印の活躍が気になりますね。この二人はまだ表向きの人格しか読者にみせていない印象なんですよね。

檸檬ちゃんは、社交的なようにも見えるんですけど。クラスのみんなの目を気にするところがあるってのがさ。なんかむかしあったのかなって思わないでもないし。

萌葱は、スカイプ越しでの会話だけでさ。挿絵とかなかったですよね。

絶対なにかしらのエピソードがまだこれから出てくるのではないかと思います。

それでは、3巻が出ましたら追って報告いたします。