そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『三角の距離は限りないゼロ』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『三角の距離は限りないゼロ』です。


三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)
著者:岬 鷺宮
レーベル:電撃文庫
発売日: 2018/6/9
出版社: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
ASIN: B07CRW3WBQ

あらすじ
僕と「彼女たち」の不思議で歪な三角関係。その距離はどこまでも限りなく、ゼロに近づいていく――。

 人前で「偽りの自分」を演じてしまう僕。そんな僕が恋したのは、どんなときも自分を貫く物静かな転校生、水瀬秋玻だった。けれど、彼女の中にはもう一人――優しくてどこか抜けた少女、水瀬春珂がいた。
 一人の中にいる二人……多重人格の「秋玻」と「春珂」。彼女たちの秘密を知るとき、僕らの関係は不思議にねじれて――これは僕と彼女と彼女が紡ぐ、三角関係恋物語。

どんな話か

人前でどうしても「偽りの自分」を演じてしまう男性、矢野はどんなときも自分を貫く水瀬春珂に恋に落ちる。しかし、ある日彼は春珂にはもう一つの人格、秋珂がいることを知る。彼女たちは131分ごとに人格が入れ替わる。矢野は秋珂が春珂として学校生活を送れるようにサポートするようになり、春珂への好意がバレた秋珂から恋の応援を受けるようになるって話です。

今回、ラノベ読みVTuberの本山らのさんの紹介で手に取りました。多重人格もの、というジャンルを意識して読むのは初めてですが、とてもいいものですね。

春珂と秋珂、二人の人格との三角関係。二人とも、主人公と交流して行くうちに彼に対する好意を深めて行く。その辺がどくしゃのぼくらにはわかるように描けてますよね。

そして、その好意に気づかないところが不自然に感じない。だから、気持ちのすれ違いで問題がややこしくなって行くところがさ。

もっ……もう! お前らが素直になればすべてうまく行くのに!って思ってさ。もどかしい気持ちになるんですよね。はじめて少女漫画を読んだ時のイライラするのについ読んじゃう感じを思い出しましたよ。

キャラクターについて

春珂と秋珂がとにかく可愛いですよね。
帯にさ、「どっちのわたしが、好き?」って書いてあるんだけどさ。どっちもいるからどっちも可愛い。お互いがお互いを引き立てあってる構造になっていますよね。
どんなキャラかって文章にしようとするとさ。わりと難しいんだけどさ。
春珂って子はさ、秋珂と比べるとぼんやりとした子でちょっとドジなとこがある。で、じつはなにごとにも一生懸命でさ。主人公に好意を持ちながらも彼と春珂の仲を応援しちゃうんだよね。
「だって幸せになってほしいんだもん」って言ってる時さ。いや、お前も幸せになれよってつい思っちゃったよ。
でさ、秋珂はいつでも自分を貫いてると主人公に思われるくらい毅然とした態度を取っている子なんだけどさ。じつは心の中ではある種の葛藤を抱えててさ。強がっているけど、じつは繊細な子だったっていう弱さみたいなのが見えた時さ。わりとキュンと来るんだよね。

キャラクターの魅力ってさ。共感だったり、憧れだったりも大事だけどさ。この子に関わりたいって気持ちにさせられるのが大事なんだろうなって思いますよ。

今後の期待

この作品、じつは第2巻の発売が決定しております。そうなってくると、シリーズとしてどんな展開になって行くのかは気になってきますね。

今後の展開で気になるところといえば、やはりこの三角関係にタイムリミットが存在することでしょう。

名作と呼ばれる青春ものに、必ずある要素としてあげられるのにタイムリミットってのがあるんですよ。

無限と思われていた青春時代、だけどそれも終わりがくる瞬間がある。これを意識させる描写を要所要所で入れておくとさ。年をとった時と若い時に読んだ時で感じ方が変わってさ。作品に深みが出るんですよね。

けいおんがアニメでパズったのも時間の流れの描写を意識していたところにありますから。ここ、大事なんですよ。

この作品も、春珂との別れがいつかくるっていうのが全体的な侘しさにつながっている。そして、その瞬間がどんな形になるのかが予想つかないですよね。

ある日、突然消えてしまうというよりもさ。どちらかというと、人格が統合するって流れになりそうだからさ。そうなった場合、どんなラストになるのかがわからないんですよね。

本作の冒頭に書かれている。何年後、あるいは何ヶ月後の主人公のある人物に向けての手紙もさ。この作品がハッピーエンドになるのかバットエンドになるのかよくわからなくさせている要因ですしね。

今後とも続刊が出しだい追っていきたい次第です。