そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ダンジョン飯』6巻について

さて、今回紹介する漫画はこちら、『ダンジョン飯』の6巻です。

ダンジョン飯 6巻 (HARTA COMIX)

今回は、ダンジョン飯の魅力、グルメものからダンジョンものへの移行、ライオスや他キャラクターのキャラの掘り下げのための6巻、新キャラと今後の展開について話します。

ダンジョン飯の魅力

まず、ダンジョン飯の魅力についてはなしましょう。
ダンジョン飯とは、こんな話です。

冒険者のライオス・トーデンは、仲間たちとともにダンジョンを探索中、ドラゴンに襲われ、絶滅する。
その時、妹のファリン・トーデンだけはドラゴンに食われたため蘇生されなかった。
妹を助けるために、ライオスは、エルフの魔導師、マルシル、ハーフフットの罠解除担当、チルチャックとともにふたたびダンジョンに潜る。
しかし、ファリンを助けるには、彼女がドラゴンに消化される前に、ドラゴンを倒して彼女に蘇生魔法をかけなければいけない。
時間もなく、さらには食料を用意する金のないライオスはダンジョン内の魔物を食べることで食料を節約しながら奥深くまで潜ることをマルシルたちに提案する。
マルシルたちの反対を押し切り、魔物を調理するライオス。彼らの調理を見ていた通りすがりのダンジョンで暮らすドワーフ、センシは彼らの初調理を手伝い、ファリンを助けるたびに加わる。
はたして、彼らがこれから食すダンジョン飯はどうなるのか? って話です。

ダンジョンのモンスターを料理するって着眼点が面白いです。今まで、ライトノベルでも『異世界居酒屋「のぶ」 (宝島社文庫)』をはじめとした異世界で料理をするって話があったんですけどね。それは異世界にもこっちの世界と同じような動植物がいてさ。現実世界と同じ料理をつくる話でした。
この作品では、ダンジョンのモンスターを調理するって話になるんですね。しかも、ダンジョン内のモンスターの生態系や調理法を丁寧に描いているため。他の異世界グルメよりも説得力があるんです。
 
 では、順に6巻の魅力を話してみましょう。

グルメものからダンジョンものへの移行

  今回、注目すべき点は、グルメものとしての要素を残しながらダンジョンの謎を解くことに物語のゴールを移行させている点です。
 1巻から5巻まではドラゴンに食べられた妹を助けるはなしでした。だからこそ、ダンジョンの謎でなく、ダンジョンの攻略、モンスターをどうやって倒すか。どうやってたおしたモンスターを調理するのかに焦点を絞って描かれています。
 確か、1巻は完全にモンスターをどうやって調理するのかを描き、次にマリシルとチルチャック、ライオスがダンジョンに潜る動機の強化。その次に他のキャラとセンシとの絡みを描くことで、コミュニティに新しい価値観を持ち込む新参者がそこに馴染むまでの過程を描いていますね。
 でさ、4巻でマルシルが黒魔術が使えるってなったところで話が全体的に不穏になってくる。
 そっから、5巻でオークと出会い、シュローと再会する。
 でさ、6巻で復活したファリルにある異変が起き、それを何とかするために狂乱の魔術師に会わなければいけなくなるんだけどさ。
 こっからさ、主人公たちは物語の端々であったダンジョンの謎を解くことが物語のゴールとして再設定されました。

キャラクターを掘り下げるための6巻

さらに、6巻は全体的に、キャラクターを掘り下げるための回が中心になっている。これはさっき説明したけどさ。1巻から5巻までの流れがさ。どんなテーマの作品か、キャラクターについて、新参者がパーティーに馴染む、パーティーがゴールの前に立ちはだかる障害と対峙するって流れだったんだけどさ。じつは5巻の妹を復活させたところで、もう一回、妹に異変が起きたのでってところから、もう一周、同じストーリーラインを回しているんですよ。
 だから、6巻はシュローとライオスとの対立によって、ライオスの異常性と次の物語上のゴールを読者に印象付けています。
 このシュローとの対立もさ。一巻でライオスが魔物を食そうとするのを、マルシルが嫌だって言って対立することでライオスのキャラと物語のゴールを印象付けるのと一緒なんですよ。
 あと、シェイプシフターの回もまさしく露骨なキャラ回ですね。キャラと同じ姿をしたシェイプシフターによって、だれが本物かわからないという回をやることでそれぞれがどんなキャラだったかを読者に再確認させている。
 あの回のいいところは、今までの話で出た短編が偽物と本物を見分けるための指針になっているから、前の回の話を読み直したくなりますよね。
 もし、『ダンジョン飯』がアニメ化したとして。僕がアニメのプロデューサーをやるとしたら、1期は妹に異変が起きて、彼女を助けるためにダンジョンの深くへをラストにしてさ。2期はシェイプシフターの回を1話になる構成を提案しますね。

新キャラと今後の展開について

では、次は新キャラの話に移りましょう。今回、6巻の終盤近くでイヅツミって女の子が新たにパーティーに加入しましたね。これ、ストーリラインが一周しているって考えればこの子が1巻から5巻までのセンシと同じ立ち位置であることがわかりますね。1巻で「魔物を食べながらダンジョンに潜ろう」と、ライオスが提案すると、その目的に適したキャラとしてセンシがパーティーに加わりました。
 今回もそれと同じで。「妹をもとに戻そう」と考えるパーティー一行に対して、妹と同じような境遇のイヅツミが加入するって流れなんですね。そう考えると、おのずと7巻の内容は予想がついてさ。たぶん、イヅツミがパーティーに馴染むまでの話になるでしょう。ただ、まんま同じってことはないだろうからさ。読み味を変えるとするならば。1巻から4巻までが、「魔物を食べたことのないおパーティーがセンシによって魔物を食べるって価値観に変えられる話」だったのがさ。何かしらの過去があって、人を信用しないイヅツミが、ライオスたちと関わることでなにかしらの価値観を変える話になると思うんですよ。
 6巻の初登場の回もさ。スプーンの持ち方をセンシに注意されるじゃん。でさ、ライオス、マルシル、チルチャックがさ食事の作法が雑だって話になってさ。わざわざ、チルチャックに「育ちが悪いのさ」って言われている。そもそも、彼女はだれかからかけられた呪いで人工的につくられた獣人になったわけだからさ。なにかしらの深い過去があってさ。たぶん7巻の最後か8巻あたりで明らかになると思うんだよ。

 あとさ、イヅツミが妹を助ける目的に沿ったキャラだとしてさ。じつはそのキャラの能力だけでなく、人格やキャラクター性みたいなのが後々のゴールに置いて大事になってくるって流れがあると考えるとするならさ。妹さんもなにか精神的な問題をじつは抱えているんじゃないかとも予想できるんだよ。

 例えばさ、シュローはじつは妹のファリンに惚れてて、告白しているって話が6巻ではあったじゃないですか。そこでさ、彼が一目ぼれしたシーンにこんなシーンがあった。

 野宿の晩、シュローが目を覚ますと、見張り中だったファリンは指先をじっと眺めている。みると、どうやら指先には芋虫がいて、彼女は芋虫を宝石のようにうっとりとみていてさ。その横顔に惚れました、みたいなはなしだよ。

 さいしょ、聞いたときはさ。オタクがさ。ちょっと変な感じの女の子をみて、この子なら僕を、みたいに考えるような童貞臭い話だと思ったんだけどさ。よくよく考えると、それだけじゃない気がする。

 今回さ、カブルーって褐色の男の子がさ。魔物に執着するライオスをすごい危険視してたじゃん。かれが迷宮の主になったら、素直に迷宮を閉じるのだろうかって考えたりしてさ。ここさ、主人公のキャラクター性が、コミュニティーから外れた立場の人間からみると異常に見えるってやつなんだけどさ。じつはこの異常性ってさ。妹にもあってさ。じつは妹のファリンはライオスのシャドーなんじゃないかと思うんですよ。

 つまりさ、じつはカブル―の予想は半分当たっているんだけど、外れててさ。迷宮の主になるのはライオスじゃなくて、ファリンなんだよ。

 6巻で、ライオスは獣と人間の魂が融合したイヅツミと出会ったことで、魂が融合しても意識を保つことができるかもしれない。それなら希望が持てるっていうんだけどさ。もし、妹が融合した後に意識を持ってたとしたら、じつはライオスと同じで異形と化したことをそこまで気に病まなくて。むしろカッコいいとか思っちゃってさ。そんで、そのまま迷宮の主としてわりとヤバいことをやっちゃうくらいさ。じつはスゲェヤバイやつだったりするんじゃないかな。

 そう考えるとさ、マルシルとファリンの過去とかも引っかかるんだよ。例えば、ファリンが学生時代、お兄さんのライオスに宛ててた手紙が暗い内容が多かったらしいんだけどさ。マルシルと出会ったことで明るい内容の手紙が増えていったって書いてあったじゃん。その時、ファリンはマルシルとどんな話をしたのかって話はそんなないわけだけどさ。マルシルが黒魔法を研究していることをさ。ファリンは知ってんじゃないかな。だから、魔法陣だけみて、察することができたんじゃない。

 じつはファリンだけ内面を描いてないわけなんだからさ。じつは彼女は心の中に、周囲から見たら異常ととらえられる大きな目的があってさ。それがドラゴンに食べられて、黒魔法で異形と復活することがトリガーになって、彼女は自分の中の願望を叶えようとする。それがかなりヤバイことだったみたいなことがさ。あんじゃないかな。

 では、7巻も読んだら報告します。下のはアマゾンリンクなんでよかったらどうぞ。