さて、今回紹介する作品はこちら、『スカートのなかの秘密』です。
「面白いものが面白いものを呼ぶんだ。考え方一つで世界が変わる」
高校で同じクラスの八坂幸喜真は、その名の通り“好奇心”に足が生えたような男だ。
謎の棒、植木鉢、そしてボレロ。アイツの行動はいつも何がなんだかサッパリ。
でもそんな“八坂らしさ”が起こすある奇跡のことを、その時の僕らはまだ知らなかった。「天野、俺たちは飛べるんだ。希望があれば俺たちはどこまでも飛べる!」
世界一の女装アイドル、赤いラインカーの美少女、そして時価八千万円の……タイヤ??
足下を吹き抜ける“蛇の息”が僕(わたし)と私のひみつをさらけ出した時、八坂と“あの子”の愛の物語が幕を開ける――。
どんな話か
二人の登場人物の視点が交差することで、最終的にある謎が明らかになり、爽やかな気持ちで読了できる青春群像劇です。
面白いですよ。複数の視点を交差することでじょじょに物語の全体像がみえてくるのがこうした群像劇の魅力なんですけども。そういう時の謎が解けていく様子が説明臭くない。
物語の最後の感動的なフィナーレに対して、このラストのために今までのことがあったのかとわかる瞬間は、本作で八坂が言っていたボレロのように単調に見えながらじょじょに躍動感をもつストーリーだと言えます。
キャラクターについて
キャラクターも魅力的だ。
全てのキャラクターに表向きのポジティブな面と裏のネガティブな面が描けている。だから一人一人のキャラクターに深みがあります。
キャラクターの一人一人に、悩み、あるいは落ち込むようなことがあって。それが‘あることをきっかけにして今の自分になっているってのがラストで明らかになり。すべて好転しているのがわかるから読了感がいいんですね。