そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『異世界にドラゴンを添えて』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『異世界にドラゴンを添えて』です。

異世界にドラゴンを添えて (Atom Harako)

あらすじ
定番の異世界転生と思いきや、俺はニートのおまけ───?!
  
台湾の高校生・慕飛は、成績優秀・容姿バツグン、おまけに世界的に有名なコックを父親に持ち、高校卒業後は自動的に事業を継ぐことが決まっている、正に非の打ちどころのない生活を送っていたが、トラックに轢かれそうになっていたニートを助けてやったために、ニートに巻き込まれるようにして異世界に転生してしまう。
けれど“ニート主人公でないとチート能力を授かれない”という慣例によって、異世界転生の主人公になれず、何の能力も与えられなかった慕飛は、初心者向けの村・バニータ村で雑用として働き始める。
異常にケチ臭いハーフエルフによって支配された閉鎖的な村での生活は苦しく、助けてやったはずのニートは『天選之子』として祀り上げられたことですっかり舞い上がり、慕飛のことを奴隷のように扱うのだった。
それでも自分の身を守る術も持たない慕飛には村から出て行くという選択肢はなかった。
しかしそんな彼の住む村を、突然一匹のドラゴンが襲ったことで、村での生活が一変してしまう。
果たして彼は異世界での生活を変えられるのか、
そして再び台湾に戻ることができるのだろうか───
  
台湾角川新人賞でデビューして以来、予測不能な展開で台湾のライトノベルファンを翻弄して来た作者が贈る、今までにない異世界転生ラノベ。 

面白いですよ。日本人にはない異世界に対する考え方。台湾料理。ぜひ読んでいただきたい一冊です。

ただ、異世界転生ものとして読もうとすると肩透かしな部分が気になるかもしれません。今回はその辺を意識して語っていきます。

目次

異世界=海外

主人公の慕飛はある日、ニートを助けようとして一緒にトラックに轢かれることで異世界に来てしまいます。
珍しいのが、じつは主人公は親が有名なシェフで将来が決まっていて、才能も十分にある。異世界に行く理由がない、恵まれた立場であることです。

そんな彼が、自由になりたい。レールに乗った人生は嫌だと考えていた矢先に異世界に転生することになる。

そしたら、異世界では低賃金の仕事にしかつけず、命の危険もある。帰りたいと願っても帰れず泣くしかなかった。

序盤が全体的に暗めに書かれてるんですよね。
しかも、長い。日本のライトノベルを読み慣れていると、なぜ主人公をここまで追い詰めるのかわからないからさ。退屈に感じるんですよ。

でも、読んでいくとさ。じつは異世界に対する考え方が僕らと違うからこうなるってのがわかるんですよ。

序盤の流れってさ。いわゆる田舎者が都会に来たらって、ストーリーなんですよ。都会に憧れて来てみたら甘くなくてだけど今更戻れなくって感じの。

それをさ、台湾の人が書いてると考えるとさ。これ、どこの国かはわからないけどさ。海外留学の話なんじゃないかと思うんですよ。

ある程度の豊かさを持っていた主人公がニートと一緒に異世界に行ってしまうってくだりもさ。僕らがアメリカに行ったら、アジア人としてひと括りにされるみたいなことだろうし。

水を扱える能力のくだりもさ。村という狭い範囲内で通じた能力も、村の外からやってくるドラゴンには通用しなかったていうさ。いわゆる、大学というモラトリアムの終わりにやってきた社会の厳しさみたいなものだと思うんですよ。

つまり、異世界=海外と考えれば、その後の展開もわかってきます。

フリートの登場で異世界グルメものに

ドラゴンに殺されそうになって危ないっ!てなったところでさ。フリートという表紙のヒロインがようやく現れます。

ここから、ようやく明るい話になってくるんですね。

フリートと主人公の絡みは少女漫画的に書かれてますね。不憫な目に遭っていた主人公が、ある日出会った女の子を気にかけるようになる。不幸の度合いがクライマックスになった瞬間に、ヒロインが助けに来て狭い世界から連れ出してくれる。

ここから、ようやく異世界グルメものがはじまるんですね。この辺が開放的に感じますね。

異世界での村がホントにクローズドな空間で、この世界には素晴らしいものがもっとたくさんあるんだってのが伝わります。

ヒロインはさ。ドラゴンスレイヤーでさ。その中では最下位の人間で、お金がない。でっ、美味しいものが食べれればいいじゃんと考えている。

つまり、評価やお金よりも、今日の食事が上手いのが一番大事だよねってテーマが押し出されているんですよ。

塩=投資

そう考えるとさ。本作で悪役として出てくる兄と妹が塩を植えてさ。増やそうとしてさ。植えたものと同じものがなる木の下に植えたら、自然環境がメチャクチャになったみたいな話あったじゃないですか。

あれ、何かと言えばさ。仮想通貨とか、株とかのお金を増やすための投資のことだと思うんですよ。

もちろん、投資がすべて悪いということはないんだけどさ。お金を右へ左に動かしましょうと考えて数字だけを考えると。最初はうまく行くんだけどさ。目先の増えるものだけ見てるとさ。その裏にある人だったりモノだったりに悪影響が出て、最終的に痛い目に遭うぞみたいな話だと思うんですよね。

こんな感じでさ。読んでみたら意外と面白かったですよ。よかったらどうぞ。