そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』6巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』の6巻です。

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました6 (GAノベル)

あらすじ
300年スライムを倒し続けていたら――婚活パーティに行くことになってました!?

ナタリーさんのお願い(ごり押し)で、しぶしぶ向かったものの、なぜか『娘たち』同士で結婚式を挙げるという話になり――!?
ほかにも、ライカが武術大会に出てみたり(職業:スライム使い)、ハルカラの故郷に行ってみたり(あの胸は遺伝でした)します。
あと、高原暮らしですが、今回は南国でバカンスも楽しみます!!

小説家になろうのURL
https://ncode.syosetu.com/n4483dj/

ガンガンONLINEでのコミカライズのURL
http://www.ganganonline.com/contents/slime/

小説家になろうにて日間と週間ランキングの一位を獲得、ドラマCDも出ましたね。この調子でいけばアニメ化確実の本作の6巻目です。

相変わらず森田季節さんは刊行ペースが速いですね。一時期、小説家になろうで3作品くらい同時連載する上に、書き下ろしで本出してたんですよ。今の出版業界の棚がコロコロ変わるスピードについていける筆の速さには脱帽ですよ。

今回も、最近3巻以上の続刊の紹介では必ず書いているシリーズ全体のの魅力を語ってから、婚活パーティー、ハルカラの故郷、スピンオフの順に話していきましょう。

目次

平穏系が生まれる時代背景

『スライム倒して300年』は大まかなジャンルで区分すると平穏系に当たります。

最近多いんですよ。チートな能力を持った超人キャラがヒーローでなく、普通の暮らしがしたいと言ってさ。ホントに日常を送る話。

一番有名なのが、web漫画でデビューし、現在は裏サンデーやとなりのヤングジャンプで連載中のONEさんによる、『ワンパンマン』や『モブサイコ』。
後、小説家になろうだと、FUNAさんによる『私、能力は平均値でって言ったよね』も主人公のマイルの最初の願いが普通の女の子になることですよね。

今の時代の流れでさ。日常が一番いいよねって流れがあるんですよ。

これ、なんでかといやさ。
極端な方向に走った反動によって、逆の方向に戻るっていう正統的な時代の流れなんですよ。

例えば、バブル崩壊後ってさ。お金より愛だよねって歌とかドラマが流行ってるんですよ。SMAPのセロリとか、ドラマだと『やまとなでしこ』がありましたね。

でさ、景気に対する将来の不安と同時に、環境問題が持ち上がってさ。1999年には、ノストラダムスの予言が流行りましたよね。

僕、1991年生まれでさ。SMAPと同じ年に生まれたんですけどね。その当時は、今よりも恋愛賛歌の歌が多くてさ。環境問題のニュースに辟易していた。基本、将来への不安を匂わせる話題が多かったです。

その後で2002年にSMAPが『世界にひとつだけの花』を発表しました。世界同時多発テロの後ですよね。

僕らは一人一人違うんだけど。オンリーワンなんだって考えがさ。テレビで発信されるようになるんですよ。『ごくせん(2002年)』とか、『電車男(2005年)』とか、島田紳助による『羞恥心(2008年)』とか。テレビは、暗いニュースから一転して明るいニュースに変わって、個性を押し出すようになり。環境問題を棚上げしてさ。消費者が物を買わないから経済が回らないって言い出し始めましたよね。

こんな感じでさ。時代の流れってさ。潮の満ち引きみたいにあっち行ったりこっち行ったりしてるんですよ。

『スライム倒して300年』はさ、この2002年から始まった特別な私ブームの反動と、バブル崩壊後に流れた「普通が一番だよね」と言いながら流されたもう存在しないはずの普通が入り混じった結果できたものだと思うんですよ。

今だから言えるけどさ。バブルが崩壊した後で日常に帰ろうってらメッセージをさ。バブルを経験したひとらが諦めた顔で流すんだけどさ。そういうひとらが定義づけた「日常」はさ。その後で生まれた僕らにはさ。一部の人しか手に入らないものになっていたっていうのをお互いわかってなかったのがさ。世代間での今でも続く誤解の元なんですよ。

さらに、その後で本来は互いの違いを認め合いましょうという、世界に対する問題に目を向けていくためにSMAPが発したオンリーワンって言葉がさ。テレビによって、消費で演出する特別な私に改竄されてさ。個性を押し出せって流れがさ。2010年まで続いて、意識高い系の登場と就活地獄に繋がるんですよ。

そっからさ、ブラック企業の問題が明るみに出てさ。スマートフォンの登場によって、ほとんどの人がテレビ以外の情報媒体に触れられるようになりましたよってところでさ。

今度は特別な自分になるなんて無駄だと。もっとのんびり生きたいって言ってさ。けいおんやのんのんびよりみたいな日常系アニメやDASH村が流行るんだけどさ。

この頃になって、ようやく私たちの考える「ふつう」って手に入らないかもしれないっていう『私、能力値は平均値でって言ったよね』の土台となる考えが出てくるんですよ。

だから、その「ふつう」を実現させるために主人公を超人にさせなければいけないんです。

という、時代背景があるんですよ。

それでは、シリーズ全体の魅力について話しましょう。

シリーズ全体の魅力

『スライム倒して300年』の魅力は、努力とは何かを説いた平穏系から家族ものへのゆるやかな移行です。

1巻のテーマは、「努力」とはなにかです。

作中で、アズサは次のようなことを言います。

「頑張るって言葉をいい意味で使いすぎちゃダメ!」
私は社畜時代のことを思い出していた。
今日、無理に残業をすればどうにかなる。
今日、徹夜をすれば遅れは取り戻せる。
そういう考えで何度も強引に物事を進めていた。
結果として、何が起こるかというと、常態的に無理を 強いるスケジュールになってしまったのだ。
もう結末は見えている。
最後には私は過労死した。
あれは一言で言えば頑張りすぎた結果だ。
なので、 過剰 な頑張りはもうやらない。
日が暮れるまで働いたら、もう残りは明日でいい


これ、当たり前のことが書いてあるかのように思うかもしれないんですけども、今の時代、誰かが発しなければいけないメッセージの一つなんですよ。

僕らが子供の頃ってさ。努力すればよくなる、あなたがダメなのは努力してないからだってメッセージの作品がさ。多すぎるから、それが呪いになってさ残っているところがあるんですよ。

代表的なのが週刊少年ジャンプ。あれってさ、元々は友情、努力、勝利がさ。連載に求められる3要素としてあったじゃん。

さらにあげれば、『ドラゴン桜』を皮切りに残酷な社会にを生き抜くためには努力しろってメッセージがテレビ側でもやたらとあったんですよ。

それを聞いて大人になったってのがさ。今のブラック企業、あるいはゼブラ企業に繋がって行くってのがあると思うんですよ。

1巻では、そうやってズレていった「努力」の意味をコミカルに軌道修正させていくってのがテーマとしてありました。

そしてですね、2巻、3巻になっていくとですね。じょじょに自分の家にいろんな仲間が住んで大きな共同体をつくる家族ものへと変わっていくんですけどね。

それに至るストーリーラインがじつはアナと雪の女王に似ているのも面白いですね。

『アナと雪の女王』ってさ、エルサというお姫様がさ。我慢に我慢を重ねた結果、ついに魔法を使ってしまい、国から逃げてしまう。その後、彼女は、「私はありのままに生きるのよ」って言ってさ。国の近くの雪山に城を作って立てこもるって話じゃん。

『スライム倒して300年』は、アナ雪のエルサがあのまま城にこもっていたらどうなったかって話だと思うんですよ。

エルサってさ。私は一人でいいんだって言ってさ。城を作っちゃうわけなんだけどさ。その時にオラフを作っちゃうんですよ。

つまり、自身の寂しさを埋めるための疑似家族ですね。

じつは、もしアナがエルサを助けなかったとしても彼女の寂しさはオラフが埋めていたかもしれないんですよ。

スライム300年も、アズサがスライムを倒し続けてきたことにより生まれたシャルシャとファルファの存在により家族ものとしての意向が進みました。

あの作品って全体を見ると、アズサとシャルシャとファルファの物語がメインである時が多いですからね。

でさ、このストーリーラインの類似性が時代性の現れでさ。今はさ、社会の中にあるしがらみから孤独になることで解放された主人公が、その後で、価値観を共有できる魅力的な仲間とつながりを強めるストーリーが流行っているんだってことがわかります。

それでは、6巻の話に移りましょう。

今回は、婚活パーティー、ハルカラの故郷、スピンオフの順で話します。

婚活パーティー

今回、アズサは、ギルドの職員のナタリー、エルフのハルカラ、ブルードラゴンのフラットルテとともに過疎化した村の婚活パーティーに参加することになります。

前巻のダンジョンでの村おこししている村を訪れた話を読んでた時も思ったんですが。ギャグの流れがこち亀で両さんが寂れた田舎、あるいは会社にツッコミをいれて、後で自身のアイデアで発展させる流れでしたね。

村の過疎化っぷりがコメディとして面白い。婚活に熱心なナタリーさんがこち亀のリアクション要員の本田さんや寺田さんの役割を演じていたのがよかったですね。

さらに、ファルファとシャルシャの姉妹式も可愛かったです。

それと新キャラのミスジャンティーも面白かったですね。スライム倒して300年はファンタジーの世界に俗っぽいキャラがいるところが面白いので。彼女の今後の活躍には期待しています。

ハルカラの故郷

それと、今回、アズサたちはハルカラの故郷に行くことになります。

ハルカラはエルフのため。エルフの住んでいる森にきたというわけなんですけども。ここで、じつはエルフの村はかなり近代化していてさ。

この辺のギャグの連続も面白いですね。

さらに、ハルカラと家族とのやりとり。その後のハルカラの母からアズサへ語られる彼女の過去はよかったですね。ハルカラのキャラに厚みが出ました。

スピンオフ

今回も魔王、ベルゼブブのスピンオフが収録されていましたね。

前巻では平社員だったベルゼブブがどうやって農相まで上り詰めたのかって話でした。今巻は、作中唯一アズサといい勝負ができる彼女がどうやって強くなったのかって話でしたね。

これも彼女のキャラクター性を補強するのに一役買った短編となってますね。


では、7巻出ましたら追って報告いたします。