そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる』3巻について

さて、今回紹介する作品は、カクヨムで連載中のネット小説、『この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる』の3巻です。

カクヨムのURL: https://kakuyomu.jp/works/1177354054881165840

あらすじ
以前、救済し損ねた世界を再び救うことになった勇者・聖哉。だが、そこは荒れ果て、ウルトラハード―モブ敵が他世界の四天王級な世界になっていた。そんな中、聖哉は呪いを受け、向こう見ずな勇者になってしまった!どうにか呪いを解いたはずの聖哉は『魔法戦士』から『愉快な笛吹き』に転職して―なんと、そのまま、死闘の末倒した戦帝級の中ボスが待ち構える敵陣に乗り込もうとする!そこへ魔王すら凌ぐ攻撃力のラスボス級の敵まで現れて!?

面白かったですよ。1、2巻が完結した作品でありながら。リスタと聖哉の関係を描くことに重点においた作品だったことがわかります。
3巻読んでてわかったんですけど。この作者さん、キャラだてうまいんですよ。
今回は、慎重勇者全体の魅力をキャラ立てを中心に語った上で。3巻の感想に入っていきます。

目次

積み重ねていくキャラ立て

相反する立場のバディもの

この作品は、タイトル通りスペックが高い俺TUEEEな主人公が慎重すぎるプレイで世界を救うって話です。

1、2、3巻を通して読むとですね。この「慎重すぎる勇者」聖哉と「駄女神」リスタのキャラの立て方が上手いなってわかりますよ。

まず、序盤の二人が相反する立場であるにも関わらず外部の力によって組むことになったバディとして書かれてることです。

リスタは異世界を救済するために別の世界から勇者を派遣し、サポートする女神たちの一人です。彼女にとって異世界転移でやってきた勇者による魔王討伐は何度もやったことで、これが正解っていう王道が彼女のなかにあります。

このリスタの視点や考え方は異世界転生を読み慣れた僕たちに近い存在です。

そんな彼女の前に現れるのが俺TUEEE系の勇者のクセに慎重すぎる聖哉です。聖哉の慎重すぎる行動に対してツッコミを入れていくギャグが序盤のストーリーでさ。

これで慎重すぎる聖哉ってキャラづけをしっかりやってる。相反するキャラを外部の力でコンビにすることで互いのキャラを立てる。でっ、飽きさせないようにボケとツッコミをアクセントにしてるここが上手い。

新参者のロジックとセーブザキャット

すでにルーティーンで決まっている仕事を外部からやってきた新参者が、これ違うっスよって言って別の方法を提示する。

以前、キムタクの出演するドラマ、HEROはなぜ面白いのかで語った。新参者のロジックがじつは慎重勇者でも使われてますね。

既存の枠を外部からやってくる人の発想によって壊されるって流れにカタルシスを感じる人がいてさ。テレビドラマでよく使われるんですけどね。

一巻と二巻って、聖哉のやり方をリスタに認めさせる。ひいては読者に認めさせるための作品なんですよね。

明かされた過去と二人の関係の変化

そうやって、この作品は慎重すぎる勇者と駄女神リスタの話だよってのを強調して。でもじつはいいひとだよってセイブザキャットをして。キャラ立てをしっかり積み立てた上で、二巻の後半にやったのが隠されていた二人の関係。なぜ彼が慎重なのかの謎解きですね。

この流れが上手いんですよね。

キャラ立てってさ。よくキャラの履歴書を書けとか。キャラにどんどん質問するとか。魅力的なキャラの作り方の話しに行くんだけどさ。

それよりも大事なのが、キャラの魅せ方なんですよ。

このキャラは〇〇で〇〇も好きで、だけど〇〇な過去もあって。みたいなさ、複数の情報を矢継ぎ早に出したら、逆にわかりづらくなる。

かといってさ。悪い就活みたいにさ。このキャラは〇〇です。なぜならこんなエピソードがあるから、と。1つのエピソードに固執しすぎてもいけない。

キャラ立てをする時は一言で言えるキャラを手を変え品を変えて。複数のエピソードで強調した上で。みんなにしっかり伝わったであろうタイミングでさらに奥まで掘り起こす。その辺の流れが上手いんですよね。

二巻の感想

前回よりハードな世界での戦い方

今回は以前救済しそこねた世界。聖哉とリスタにとって過去の因縁がある世界でのスタートでしたね。

神界への転移ができなかったり。モブキャラですらボス級だったり。絶望感のある要素がかなりある。

一巻や二巻でギャグなのに、逆花火や拷問があるってモヤモヤするなって初見は思ってたんですけど。三巻の絶望感をみると。あれがないとこの作品のハードな逆境を攻略するカタルシスがなかったんだなってことが。今更になってわかりました。

今回も慎重な聖哉の奇想天外な攻略が読んでて楽しかったです。

恋のすれ違い

前々から恋愛要素はあったんですが。二巻の衝撃の事実が明かされたことで。三巻では濃くなりましたね。

たしかに、ある時点で元の関係に戻ったかに見えたけどさ。リスタにはわからなくても読者にはわかるデレってのがあってさ。

それが尊かったよね。


では、次の作品も楽しみにしてます。