そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『 私、能力は平均値でって言ったよね!』8巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『私、能力は平均値でって言ったよね』です。


私、能力は平均値でって言ったよね!  8 (アース・スターノベル)
著者:FUNA
イラストレーター:亜方逸樹
レーベル:アーススターノベル
発売日: 2018年7月14日
出版社: 株式会社アース・スターエンターティメント
ISBN978-4-8030-1210-1

あらすじ
「友よ、私が護る! 」
敵は5000人の侵略軍! 『赤き誓い』最大の戦いが始まる! ! !


累計40万部突破の大人気シリーズ、最新巻登場!


日本の女子高生から、異世界に転生した少女マイル。
今度こそ平均的な能力を願ったマイルだが、神様の勘違いで最強の魔法使いとなり、少女4人のハンター『赤き誓い』として大活躍を続けていた。

しかしその時、巨大なアルバーン帝国の魔の手がマイルの故郷アスカム領へと迫る。
帝国軍5000人が、宣戦布告も無いまま侵略してきたのだ!

マイルたち『赤き誓い』は、戦場へと駆けつける。
少女4人と領軍300人、そして領民たちの運命は! ?

メーヴィスの騎士道、ポーリンの智恵
マイルとレーナの魔法!
領都を背に、『赤き誓い』最大の戦いが始まる! ! !

ストーリー全体の魅力(1〜7巻までのネタバレ)

『私、能力は平均値でって言ったよね』は次のような話です。

 ある日、大学生の栗原海里は車に轢かれそうになった男の子を助けたことで、彼の代わりに命を落としてしまう。死んだ海里は、神様から転生のチャンスが与えられ、どんな人生を歩みたいか聞かれた彼女は、平均値で生まれ変わりたいとお願いする。こうして異世界でマイルとして生まれ変わる。しかし、貴族の家の出だし、魔法も使える、力はコインを曲げられるくらい。そうか、平均値ってことはエルフや魔族、ドラゴンや人間を含めての平均値ってことか、ってそんなの話が違うよってはなしです。

 この作品のストーリーラインは、自分の望みを超常の存在にお願いし、それを叶えた時、それが自分の予想とは違う展開になるというはなしです。
 猿の手や、神話にもよくあるストーリーです。それに、次の人生では平穏に暮らしたいという、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました (GAノベル)』などの平穏系の要素もある。

 今の時代、能力を持つことで豊かになるのは確かなんだけど、それを誇示すると、負担が増えることが多いので、隠したほうがいいって考えがあってさ。平穏系の、能力があることで平凡な人生を送れるけど、その力を見せたくないって願望が、ストーリーに出ている。『ワンパンマン』などのONEさんの描くはなしもそういう系が多い。

 こうして、ふつうでいようとするも失敗してしまうを一巻で繰り返し、その後、それによって仲間を得て、冒険者として旅をしたマイルは、3巻で自分の考える「ふつう」というのものは平均値で手に入れることはできない。じつはふつうの幸せを持てる人はふつうじゃないっていう気付きを得る。そのうえで、自分は自分のことを対等に扱ってくれる仲間が欲しいんだという平均値になりたいという願望の裏にあった本当の願いに気づいたマイルは、ふつうであろう、というかせを外すというのが、1巻から3巻までのストーリーラインです。気になった方はまず、3巻まで読んでいただきたいですね。

 そして、4,5、6、7巻はキノの旅のような。訪れた国でこんなことがありましたという小話をまとめたようなロードストーリー。コメディ満載の短編のうらには、異世界全体の謎に迫っていくことがこの本の目的となっていきました。

 さらに、今回、6巻の最後で、マイルが貴族の時にいた国が大変なことに。
 では、8巻の話に移りましょう。

 

8巻の感想

 今回は、マイルが貴族だった時に託されてしまった領地が戦争の舞台になってしまうとのことで。マイルたちは急ぎアスカム子爵領に戻り、大帝国の5000人の兵を追い払うことに。一人の少女が二つの国の大きな戦争に関わる。異世界転生ものでは一番盛り上がる場面。今回、正体をバレることを恐れたマイルたちは「赤き血がいい!」という傭兵部隊に扮して、アスカム子爵領の味方をします。チート能力をもつ5人に対する周囲の人々の反応、動揺が面白いですね。1個人が大局を揺るがしていく感じ。水に石を投げ込んだら波紋が広がっていくように影響力がはっきりと見えるのが読んでて楽しいですね。
 全体がわかる読者と、一部分しか見ることのできない軍人や役人のかたの誤解や動揺もコメディとして楽しく読めました。
 さらに、王都を通り過ぎて、マイルたちは新たな国へ。書籍版だと地図が挿入されているので、どんなふうに移動しているかわかるのが楽しいですね。
 お次はドワーフの住む村。マイルはここではじめてドワーフに出会うことになりました。
 ここで、ある事件に巻き込まれどうなるか、で次巻に続くとなりました。

 はたして9巻はどうなるか、今から続きが楽しみです。