そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『始まりの魔法使い』3巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『始まりの魔法使い』の3巻です。

始まりの魔法使い 3 文字の時代 (富士見ファンタジア文庫)

あらすじ
竜の魔法使い・先生は、水車を回すことさえ困難なこの世界をより深く研究するべく大学を設立する。知識を文字として残すため、紙を制作した先生は、かつての教え子である人魚のリンに世界で初めての日記を贈り!?

『始まりの魔法使い』とは(1巻と2巻のネタバレ)

いつものように1巻と2巻を振り返ることで、シリーズ全体の魅力について話していきましょう。
この話はドラゴンに転生した"先生"が魔法を研究しながら人類の発展に貢献していくシムシティ的な街を発展させることを目的にした作品です。
『始まりの魔法使い』で注目すべき魅力は3つです。原始人の状態から発展していく歴史もの、ゼロから解析していく魔法、様々なヒロインとの恋と別れ、再会への期待。
主人公の"先生"が転生した世界では、まだ人間は文明を持っていません。"先生"は彼らと交流するために転生前の知識を教えていくうちに人々の文明は発展していきます。
これがかなり読みごたえがあるんですよ。主人公はドラゴンなので寿命がかなりあります。なので、一巻で100年単位で時間が進む。
そのため、文明の発展していく様が他の現代知識チートよりも納得感があります。また、シムシティのような、主人公の力で街が発展していくのを眺めているような達成感がありますね。
本来であれば、このアイデアだけで物語を進めることは可能です。しかし、この作品の魅力はそれだけじゃない。
"先生"には目的があります。それは魔法の研究です。元々、"先生"の前世はオカルトの研究をしていて、魔法に憧れを抱いていました。
先生は魔法を研究するために、人間、エルフ、人魚、竜人を集めて、魔法を勉強するための学校をつくります。
この展開の面白いとこはですね。魔法を使っていくなかで魔法に関するルールが細かく決まっていくんですけどね。このルールが、まだすべて明らかになっていない点です。
話が進むごとに魔法でできることが増えていくんですけどね。そのインフレの仕方が、新しい概念を持ち込んでくドラゴンボールやブリーチ的なものでなく、1つの決まったルールがある中でできることがわかっていくようになっている。
じつは3巻の時点でバトルものとしてのルール説明がまだ終わっていない状態なんですよ。
そこを、続刊へつなげるための謎の一つにしているところが上手いですね。
そして、三つめがヒロインとの悲恋と再会への期待です。この作品は一巻ごとにメインのヒロインがいてさ。彼女たちと恋に落ちるんだけどさ。
主人公の"先生"がドラゴンのため、ヒロインが先に寿命で死んじゃうんですよ。一巻とか、読んでて涙腺に来ましたね。
彼女たちが心に秘めた想いが、最高潮に達した時に、何かしらの魔法によるアクションを起こしてさ。それが幻想的な描写したりするからさ。涙腺にくるんだよ。
セカチューとかそうだけどさ。読者にここまで彼のことを愛してるんだってわかる描写をして、僕らの気持ちがかなり高まった次のページで、それでもどうにもならない現実を見せられるとさ。
高まった気持ちの行き場がなくなってさ。目がウルウルしちゃうんだよ。
そんな感じでさ、1つだけでも魅力的になり得る3つの要素を1つにまとめているため、毎巻ごとに達成感があるし、読みごたえがあり、感情が揺さぶられる作品となっています。
では、3巻の解説に移りましょう。

付与魔法の登場

今回、精霊との契約。この世界の万物には想いがあり、そのために呪文が必要なのだ、ということがわかった"先生"たちは付与魔法をつくりましたね。
道具に呪文を書き込むことでその通りに動いたくれる。これにより、魔法の適正関係なしに道具によって簡易的な魔法を使うことが可能になりました。
よく、内政チート、あるいは現代知識チートでは電化製品が当然のように出ますが。そういう展開って納得感が薄いですよね。ドワーフにつくってもらったとか、魔法を利用してとか書いてあるけど。なぜ今までなかったのかに疑問が残ります。
今回の場合は1巻で呪文によって魔法が発動しやすくなる、という法則の発見。どう呪文を組み合わせるかって感じで発展していったので。
付与魔法の出現には納得感があります。

ストーリーラインを上手くズラした展開

今回、今までのストーリーラインから上手くズラしたオチになりましたね。
この作品ってさ、基本が一人の女の子に出会うも、その子と死別することになってしまう。でも、じつはその子とはもう一度再開できるかもしれなくて、ってラインなんですけどね。
今回は、それを踏襲しながらも、ラストで上手く意表をつかれました。

今後の展開

前にも言ったんですが、この作品のシリーズ全体のストーリーラインは、『ワイルドスピード』なんですよ。
毎巻ごとに、一人のキャラクターをメインにした作品を描いて。ある段階でそのキャラクターたちを1つのチームにして大きな問題に立ち向かわせる。
実際、1巻の冒頭ではすごい先の未来でヒロインに囲まれた主人公を描いてさ。ヒロインたちの一人が過去を回想する形で始まります。
そう考えると、そのチームに立ち向かうであろう大きな問題とはなにかが肝なんですよね。
その点で気になるのが、3巻に出た主人公以外の転生者の存在です。
1巻のアイの可能性も高いですけど。謎の人物が敵になる可能性もありえそうです。

これからも目が離せない作品です。

では、4巻も追って報告いたします。