そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『となりの悪の大幹部!』について

 今回紹介する作品は、『となりの悪の大幹部!』です。

となりの悪の大幹部! (電撃文庫)

 

 面白かったです。

 

 本作は次のような話です。

 主人公の草間ミドリは世界史を担当する教師。フィギュアを集めるのが好き。しかし、それは仮の姿。

 彼は戦隊組織、バンショクジャーのバンショクグリーンだった。

 悪の秘密組織、クリアードとの決戦を終えた彼の隣室に褐色の未亡人、アシェラーがやってくる。

 ミドリは彼女が以前の決戦で倒したはずの大幹部アイルシェラッドに酷似していることに驚く。

 人間として普通に生活している彼女との交流に戸惑うミドリ。そんななか、次第にミドリとアシェラーは深い仲に発展していく。

 そんな日常の裏で、バンショクジャーは新たな敵組織との戦いをはじめる。

 

 

 タイトルと表紙で特撮要素のあるほのぼの日常系かな、と思って読みはじめました。その予想を超え、特撮系のバトル要素がしっかりいれた上で、ヒロインとの恋愛要素、日常要素もしっかり調和されている作品であったので、驚きつつも引き込まれました。

 

 世界観がよかったです。この作品世界の成り立ちに悪の組織と思われたクリアードが深く関わっていて、単純な勧善懲悪にできない、という点が、どう話をまとめるのか、とページをめくる手を早めさせました。

 

 ヒロインと主人公の恋愛関係も良い。お互い大人だからか。結婚した後が想像できそうなやりとりがとても見ていたくなる関係性でした。この関係が続けばいいのに、と思うほど敵対関係であった過去と不明瞭な未来が不安を煽っていたのがよかったです。

 

 新たな敵組織の秘密が明らかになっていくにつれ、戦いに緊張感が走り、その余波が日常を侵食していく雰囲気も良かったです。そこがラストの展開でいろんなのが合流してきた感じにカタルシスがありました。

 

 終盤にかけて激化していくバトル描写もよかったです。ピンチな場面でも悲壮感がなく、アクションがカッコいいという印象で読めました。キャラクターの心理がポジティブに向いているので、キャラに感情移入しすぎてつらい気持ちで読まなきゃいけないとこがなかった。

 

 本作にはなんとかしなきゃいけない問題がはっきりと明示されるのですが、主人公が前のめりに問題に向き合っているのがよかった。

 

 最終曲面で一つに向かってみんなで進んでいくとこがよかったです。

 

 面白い作品でした。続巻が早く読みたいです。