そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『デーモンルーラー』2巻について

さて、今回紹介する作品はこちら、『デーモンルーラー』の2巻です。

デーモンルーラー 2 定時に帰りたい男のやりすぎレベリング (カドカワBOOKS)

あらすじ
冴えない公務員五条は、今日も神楽とともに異界で悪魔を狩っていた。だが、そこへ謎の狐耳娘・サキが現れ、五条はつい家に連れ帰ってしまう!それは、なんだか娘が転がり込んできたような楽しさとトラブルの始まりで―。一方、嫌味な上司相手の失言がもとで、五条は七海とデートすることに!?城跡巡りをしながらいい雰囲気の二人のもとへ、突如武将の姿をした悪魔が迫るが…。レベルも報酬も上がりまくりで、五条ますます絶好調!

目次

1巻について

デーモンルーラーは、ざっくり言うと女神転生でありながら、その源流にあるポケモン否定をしている作品です。

主人公の五条亘は公務員。ある日、彼は話題のアプリ、デーモンルーラーをインストールすると。悪魔の神楽と契約することになる。
なんと、デーモンルーラーは適正のあるプレイヤーがアプリを起動すると悪魔を使役することができるアプリゲーであった。
さっそく、五条は神楽に導かれるまま、現実世界にできる異界のなかにはいり、悪魔と戦う。
最初は、神楽を使役して戦っていたが。自分で戦う方が効率がいいことに気づいた五条は、現実世界で手に入る様々な道具で悪魔と戦う。
次々と悪魔を戦う五条は他のプレイヤーたちよりもレベルを上げ、同じデーモンルーラーのプレイヤーであるチャラ夫と舞草七海に慕われるようになる。

悪魔を使役して異界を旅する。元ネタは女神転生やペルソナでしょう。それと、ゲーム感覚でありながら、命をかけたやり取りである点からはデスゲームの系譜を感じます。その世界観で主人公は悪魔に戦わせる方法を拒否して、自分で戦うことでレベリングをする。
しかも、それをやるのがおじさん。
これが現代にあるポケモン思想の否定につながっている。

ポケモンとは、一人の少年が5匹の仲間を連れて、チャンピオンを目指して旅をするゲームです。

あのゲームが当時の子供たちに示したのが、素質のある部下を集めて自分は支持するだけでのし上がる成功物語です。

もちろん、プレイヤーも旅をするという苦労はあるんですけどね。プレイヤー自身が戦うという経験がポケモンではできないんですよ。

この育成ゲームが与えた価値観は、その後のコンテンツや、大学生になった若者たちの憧れる成功者像に影響を与えています。

例えば、意識高い系の中には。成功するタイプと、しないタイプがいてさ。しないタイプの意識高い系が話す将来やりたいことってさ。彼自身がなにをするかじゃなくてさ。彼自身が成功するためにまわりがなにをしてくれたら都合がいいのかって話をする場合が多いんですよ。

デーモンルーラーの世界で、悪とされるキャラクターはすべてこれにあたります。

ポケモン思想でゲームを攻略しようとして上手くいかないプレイヤーを尻目に主人公は自ら戦うことで、ゲーム内でのトップに立つ。

作品世界内での悪と善がハッキリとした爽快感のある作品となっています。

では、2巻の話に移りましょう。

五条亘の孤独

2巻は、組織と個人の対比がテーマです。
今回、五条亘は異界の悪魔の幻覚攻撃をきっかけに、舞草七海に自身の過去を打ち明けます。幼い頃、彼は家族から虐待を受けていました。
だからこそ、彼は組織に属するのに苦手意識を持っていることが明らかになります。

これに続いて、会社での諍い、博物館デートでの異界の発生、文化祭で異界の発生、となるんですが。
この3つとも、組織と個人の対比が入っています。
露骨なのが居酒屋の出来事。主人公の五条は集団とのコミュニティに馴染めないのが強調されています。博物館での異界バトルでは、組織としてのキセノン社のやり方と、個人で戦う五条亘のやり方や価値観が相反するものであることがわかります。文化祭での異界の発生では、自分のために生きていた五条が、はじめて学園の生徒という集団を守るために戦う決意をします。

五条の心が、舞草七海との関わりあいで変化していく流れをイベントを重ねながら見せつつ。彼自身が抱えている問題をようしょようしょで見せています。

キャラの心境の変化と問題の強調がしっかりと描かれたわかりやすいストーリーラインです。

キャラの深掘り

2巻ではキャラの深掘りもできていましたね。1巻は、「おじさんがデスゲームで無双することで若者から慕われる」というシチュエーションを描くことを意識した作品でしたから。
キャラの掘り下げは表面をなぞるにとどめていました。しかし、2巻からは敵キャラの幻覚攻撃により、それぞれのキャラが見る幻覚によってキャラごとの性格が強調されました。
舞草七海とは、デート回でヒロインとしての魅力を高めましたし。
チャラ男こと、長谷部裕二は文化祭で、みんなを助けるというアクションを主人公より先にやることで。素直ないいヤツ感が出ましたね。

新キャラ

今回、気になったのは新キャラの悪魔、サキちゃんですね。
どんな能力なのかも未知数で、そもそもなぜ異界に来たのかも明らかになっていない。
この辺は、デーモンルーラーの全貌とともに明らかになっていく設定なんでしょうかね。

では、続刊も追って報告いたします。