そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『後宮天后物語 ~簒奪帝の寵愛はご勘弁!~ 』について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『後宮天后物語』です。

あらすじ
幼馴染の志紅を慕う公主の雛花は、神の力を授かることができる【天后】になろうと勉強に励む日々。ところが、志紅が帝位を簒奪する現場を目撃! しかも「今日から君は俺の妻だ」と告げ、雛花を後宮に拘束し……!?

中国風のファンタジー世界で、幼馴染が仲が良かったはずの兄を殺す。さらにはお前は俺の妻だと後宮に拘束されて。設定はかなりてんこ盛りですね。この前読んだ『残念公主のなりきり仙人録』が思いのほか面白かったので。同じくビーズログ文庫で最近発売されたこちらの中華風のファンタジーを舞台にした作品を読んでみました。

 面白いですよ。この世界には神々の力をこの身に下すことで、魔のものから国を守る皇帝と天后って立場の人がいる。主人公は天后になることで。幼馴染の志紅を支えようと考えていた。でさ、ある事件をきっかけに天后に降りる神、女媧を下ろすことに成功します。これにより、主人公は天后になるはずだったんだけどさ。ここで事件が起きる。志紅は主人公の兄で、皇帝である煉を殺しちゃってさ。その皇帝の座を簒奪するんですよね。

 皇帝となった志紅は主人公を天后の座からおろし、自分の妻として後宮に閉じ込めてしまいます。

 なぜ、志紅は皇帝を殺したのか、後宮に閉じ込められた主人公が異化に脱出して天后の座に返り咲くかってのがストーリーラインです。
 まず、1,2ページで主人公と幼馴染の関係を説明し。ずっと好きだったはずの彼から「俺の妻になれ」と言われて断るシーンからのスタート。物語の土台になる設定の説明をはぶき、関係性からの説明から入ることで。とりあえず二人のこんな関係性に燃えてくださいねって前置きがあるのはわかりやすくていいですね。
 その後で、天后になるために努力を重ねる主人公。されど、それが報われないフラストレーションからの。幼馴染とのじれったい関係。彼に対する好意からの。だからこそ、天后になりたいんだという動機の印象付け。そのうえで平穏な二人の日常を脅かす事件が起きたうえでついに念願の力が覚醒する。ここまでがそこまでページ数が咲かれていなくてスムーズなのに。主人公の頑張りの結果だと印象付けられている。文章と事件の整理がしっかりできています。
 でさ、天后になれたよかったと喜ぶもつかの間。兄のキャラクター付けをした後で、その晩に兄が殺され。幼馴染が皇帝になるわけなんですけども。この後のいやいや妻としてこう後宮に閉じ込められ。彼からの異常な愛を受ける日々はグッとくるものがありますね。主人公は彼からの愛をずっと待ち望んでいたことであると同時に、それがこんな形であってほしくなかったという心理描写をクド過ぎずに要所要所で味を変えて入れている。それと主人公に対するヤンデレ的な幼馴染の愛も手を変え品を変えで読んでて飽きない。ただの形だけのヤンデレでなく、その属性、関係性の尊さをわかったうえでの描き方ですね。
 それと、天后、皇帝が神を下ろすことによる代償。待ち受けている悲劇的運命がじつは幼馴染を暴走させている要因となっている、という設定の組み合わせもうまい。中華的なファンタジー要素が邪魔になるんじゃないかと思いきや。幼馴染と主人公の関係性を引き立たせる魅力的な舞台装置として働いています。

 オススメの作品です。続きが出たら追って報告しますね。

後宮天后物語 ~簒奪帝の寵愛はご勘弁!~ (ビーズログ文庫)

後宮天后物語 ~簒奪帝の寵愛はご勘弁!~ (ビーズログ文庫)