そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ワキヤ君の主役理論』について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『ワキヤ君の主役理論』です。

 

あらすじ

青春を最大限楽しむためのメソッド《主役理論》を掲げ、夢の一人暮らしを勝ち取った俺・我喜屋未那。隣に住む少女・友利叶も一人暮らしで、クラスメイトで、バイト先も趣味嗜好も全てが同じ……なのに俺と真逆の《脇役哲学》を掲げる、決して相容れない天敵だった! そんな叶との口喧嘩の果て、同時に部屋の壁を蹴破ってしまい、何故か同棲する羽目に。そして俺たちは、やはり同時に考えた――これは戦争だ、と。
「そのさもしい青春に嫌気が差したら、いつでも言ってくれればいいぜ?」
「そっちこそ、煩わしい人間関係に嫌気が差したら、いつでも頼ってくれていいよ」
俺の《主役理論》と叶の《脇役哲学》、どちらが正しいかこの同棲で白黒つけようか!

  

 カクヨムで連載中の青春ものです。

  読んで最初に思ったのが、『佐伯さんのひとつ屋根の下』と同じ流れだなって、つい思っちゃいましたね。正反対の二人が外部の力によって一緒に暮らす。一緒に暮らしていくうちにふたりは……みたいな感じの話ですね。ライトノベルでは典型的なパターンなんですけどね。最近、また多くになった気がします。

 たぶん、『君の名は』が流行ったからかなって思わないでもないんですよね。『君の名は』がなぜデートムービーとして多くの人から見られ、人気になったかと嫌さ。

 ちょっと陰のあって、下心のある滝くんとさ。田舎なんて嫌だ都会に行きたいと考える三葉ちゃん。あのふたりが異性としても魅力的に魅せつつ、じつは同性の目でも内面的には共感ラインが近いんですよ。

 日本のドラマでもよくやるんですよね。俳優、女優さんはイケメン、あるいは美女でさ。立場や設定もキラキラしているんだけどさ。抱えている内面や問題が俺らや僕ら、私たちに近いキャラ同士の恋愛劇。

 しかも、どっちか片方の物語でなくW主人公の形をとっている。

 『ラストクリスマス』とか、『最後から2番目の恋』とか、最近の『逃げるは恥だが役に立つ』とか。

 バディ物も男女でやったりする作品がありますけども。あれも男女の両方から見てもらえるようにするためにあると思うんですよ。

 『君の名は』は日本ドラマがずっとやってきたことを意識的に取り入れたことでさ。新海さんの作品を大衆的にしていると思います。

 まあ、最後に出会えたところで泣いてさ。その後に幸せな未来が待っていると思っている人多いけどさ。俺は入れかわっただけで一度も顔を合わせてない人が本当にスキあっていると思わないけどね。むしろ、滝くんの友達や先輩の女の子がじつは運命の人だったんじゃねぇの?とか観てて思いましたけどね。

  

 でさ、この作品も男性の主人公の視点だからさ。男の子がたまたま美少女と一緒になった的なよくあるはなしにみえるんだけどさ。じつはヒロインと主人公が意識的に鏡合わせに書かれているW主人公系の作品でさ。二人のうちのどっちかに感情移入できるように描かれているんですよね。

 

 まず、主人公のワキヤくんは主役になりたい人間でさ。友達もつくってさ。リア充みたいな生き方がしたい。逆に友利ちゃんは脇役でありたいと考えていてさ。だから、人とあまりかかわらず、自分のために時間を使いたいと考えている。

 

 そんな二人はアパートのお隣さん同士で一人暮らし。でさ二人の間の部屋の壁がさ。ある事件を境に壊れちゃってさ。しかたなく二人はルームシェアに近い生活をすることを余儀なくされるって話なんですよ。

 

 僕らはさ、二人のうちのどっちかの考えに共感するんですよ。誰かと関わるなんて面倒だ。僕は一人でいたい。あるいは、みんなと一緒に何かをしたいってね。

 学校生活を送るにあたって、俺らってどっちかを選ばなければいけなかったんだよね。無意識だったり、意識的だったりね。

 

 まだ、一巻しか読んでないんだけどさ。この作品はさ、最終的にじつはこの二つのタイプの人間で正反対のようで心の底には共通の望みがあるんじゃないかってのを僕らに突き付けているんですよ。

 

 そこがさ、ふたりのうちにどっちかに共感しながら、わかるわかると読んでいくと最終的にどっちに共感ラインを置いても同じ結論になるってストーリーラインがさ。きれいな作品だなって思いましたよ。

 

 2巻も読み終わったら、話しますね。

 

ワキヤくんの主役理論 2 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論 2 (MF文庫J)

 
ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)