そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』について

今回、紹介する作品はこちら、作者 赤野工作 カクヨムで連載、2017年6月30日に出版。『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』です。

あらすじ
2115年4月、レトロゲームレビューサイト「ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム」が開設した。長いゲーム史において低評価とされた数々のゲームを通じ、管理人が至るゲーマーのさいはてとは……?

目次

ブログを書くならこれを読め!

こちらの作品は、2115年の未来のゲーマーの視点から2020年から2070年代くらいのまだ発売されていない架空のゲームを紹介しているブログ形式のSFです。

これですね。SFやネット小説。ゲーム好きにもオススメなんですけどね。じつはブロガーの方にも読んでほしい作品なんですよ。

なぜかと言えばさ。そもそも、僕らの知らない架空の商品をさ。発売されるまでの流れを説明した上で面白さを紹介するってのがさ。実際にあるものを紹介するよりも難しいことなんですよ。

僕らってさ。ブログをはじめてやってさ。アニメの感想だったり。映画だったりでさ。ついやっちゃいがちなことがさ。自分の趣味の範囲内では常識だけど、他の興味のない人にとっては知らないことを解説せずに紹介するってことをやりがちなんですよ。

ブログってさ。友達との会話と違ってさ。話の途中で。「どうしてそうなるの」とかさ、「それのなにが面白いの」ってさ。聞かれないんだよね。

だからさ、ついつい自分の知ってる概念や言語の説明をはしょりがちなんですよ。

例えばさ、監督が〇〇さんだから面白いとか。この役者さんだからカッコイイとか。この人の考えは〇〇的だからいいよねとかですね。

わりと、この辺でつまらないって思われちゃうブログを書く人って意外といるんですよ。

『ウィズ・ノーネーム』は、ゲームの説明にはいる前にそのゲームのジャンルの歴史、発展を説明します。

ここがスゴイんですよ。VR はもちろんのこと。テキストゲームに位置ゲーム。韓国政府とゲーム依存症との戦い。これらの話は、2015年以前に書かれた話は本当のゲームの知識や世界情勢をもとに書かれています。

もし、読む際は試しに2015年以前の事件やゲームのタイトルが出たらスマホで検索して見てください。こんな事件が本当にあったんだ、こんなゲームが本当にあったんだってビックリしますから。

後、勉強になるのが話の構成ですね。

これさ、まず最初に作者の所感や日常。後々、オチの伏線になるような小話でありながら、作者のキャラクター性を出した話を入れているんですよ。

でさ、次がゲームのタイトルの後で、時代背景。そのゲームが出る前段階でどんな技術や流行りがあったのかって説明をすることで。架空のゲームに実在感を持たせます。

そして、紹介するゲームの内容に入ってさ。発売前に期待されてたり。されなかったりする。

しかし、やってみたらこうだったという周囲の人の評価がはいる。

そうした後でようやくブログ運営者の感想に入り。読者の予想していなかったオチに入る。

プロットにするとこんな感じなんですよ。

①作者の小話
②紹介するゲームの時代背景
③周囲の期待、評価
④作者がどう感じたか
⑤オチ(読者が思いもよらなかった真実)

わりと、この構成はマネできたらした方がいいと思います。僕らは、生活であれ、サブカルであれ、趣味であれ、みんなが知らないものを紹介しているんだって意識はブログを書く上で必要だろうなと思います。

ブログの裏で進むディストピア

で、ですね。この作品はゲームを紹介するブログとしても面白いんですけどね。SFとしても面白いんですよ。
この作品はゲームを紹介する前にブログ運営者のキャラづけ、小話のようなものをやってからゲームの紹介にはいるんですけどね。
それを読んでるとですね。主人公がさ。わりと年の入った古参のオタクでさ。彼にはある問題を抱えててさ。その問題がさ。徐々に深刻化しているってのが、読んでてわかります。
そこがさ、ブログを読んでる時に不安にさせるんですよ。この人は文章では楽しげにゲームを紹介しているんだけど、大丈夫だろうか。本当はなにか隠していることがあるんじゃないかと。この不安感はさ。ぜひ読んで確かめてほしいです。

心に貫く人生の重み

後ですね。読んでて、俺泣いちゃったんですよ。この作品の上手いとこはですね。ブログの運営者自身は語ってないんだけどさ。
読んでるとさ、この人の寂しさってのが伝わるよう書いてるんですよ。
ブログの運営者は、俺、さみしいんだって言わないんですよ。だけどさ、ゲームの紹介を通じて僕らが読み取っちゃうことがさ。
彼がゲームをすればするほど彼の孤独感が日に日に高まってることなんですよね。
もちろんさ。ゲームを通じた友達ってのもいるんですよ。だけどさ、年を経るごとに周りの人々はゲームをやめてくしさ。死んでいっちゃうんだよね。
そういうことがわかる情報がさ。ジワジワつたえられた上でさ。彼がとあるゲームをやったことで起きた問題にさ。
彼は誰にも相談したり、頼ることもできずに自分のなかで受け止めて消化せざるおえないってとこがさ。もう、泣けんだよな。

オススメの一冊ですので、ぜひ読んでみてください!