そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』の7巻について


乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…7 (一迅社文庫アイリス)
著者:山口悟
イラストレーター:ひだかなみ
レーベル:一迅社文庫アイリス
発売日: 2018年11月1日
出版社: 株式会社講談社
ASIN: ISBN978-4-7580-9113-8

あらすじ
乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生し、なんとか破滅エンドを回避した私。職場の魔法省では周囲との関係も良好、闇の使い魔ポチをかわいがる日々を満喫!―していたけれど、魔法省が舞台のゲーム続編では闇の力を手に入れた出戻り令嬢カタリナに、悲惨な未来が待っていたはずで…あれ?今の状況ってまずくない!?そんな中、古の魔法に関係する契約の書を探すことになってしまい!?大人気破滅回避ラブコメディ、第7弾登場。

シリーズ全体の魅力

 この作品は次のような話です。

 ある日、主人公は頭を打ってしまったひょうしに自信の前世の記憶を取り戻す。それにより、自分が今、生きている世界が前世でやっていた乙女ゲームの世界で、自分はそのゲームの悪役、カタリナ・クラエスであることを思い出す。このままゲームのシナリオ通りに進めば、自分は悪役令嬢として破滅してしまうことを恐れた彼女は、なんとか破滅フラグを回避しようと考える。しかし、土魔法の修行のために畑をいじったり、義弟のキース・クラエスがグレないようにかわいがったりと、その努力は見当違いな方向ばかり。しかし、彼女の行動が事態を思ってもみない方向へと進めていく。

 悪役令嬢もののなかで一番コメディ色の強いのが本作でしょう。ストーリーラインが、ある行動によって起きる幸運が畳みかけるように起きてさ。読者もそんなことないやろって心の中で突っ込みながら読み進めていけるもの。幸運のインフレは読んでいて楽しい。
 カタリナは破滅フラグを回避する、という目的のために、読者からしたらその目的とはかけ離れたような行動をする。それが彼女なりのトンでも理論に基づいているのも面白い。そして、その行動が、婚約者のジオルド・スティアートやキース・クラエスなどの彼女の周囲のキャラクターが心の奥で抱えていたトラウマや悩みを解消することにつながっていてさ。彼女のことを好きになるってのが、カタリナの珍妙な行動とその後の彼らの心理描写によってわかるのがいいんですね。

 ちなみに、この作品はアニメ化が決まったそうです。帯を見て驚きましたよ。
 カタリナという一人の人物の行動によって、周囲の人々が変わっていくさまは舞台のようで面白いので、ぜひアニメになった時はそのへんが視覚的にわかるようになってたらいいなと思います。

 では、7巻の感想に移ります。

マリア・キャンベルを中心にしたストーリー

 6巻から、学園を卒業したカタリナは魔法省で働き始めます。
 彼女はそこの魔法道具研究室の配属となることに。
 さらに、6巻ではストーリーを動かす大きな謎として、どうやら自分が前世にやっていた乙女ゲームの2が出ているらしく、そこでは、カタリナはまた悪役令嬢としてマリアの邪魔をすることになるらしいってはなしになっているんですね。しかも、今回はそのゲームをプレイする記憶がないので、対抗策が思いつかない。読者である僕らも、こうすればいい、がないからさ。このへんが緊張感や謎として物語にメリハリを利かせるのに役立っています。

 でさ、7巻から面白いところが、マリア・キャンベルを主軸にしたストーリーが展開されていることですね。

 悪役令嬢ものってさ。乙女ゲームの端役を主人公にした作品だから、人の恋路を覗き見する楽しさってのがあります。
 この作品の4巻までの流れも、マリアが進むはずだった大きなストーリーってのが、カタリナによって大きく変わったというのがカタルシスとしてある。
 しかし、4巻ではどんでん返しとして、後からマリアの抱えていた物語が明らかになったという形だからさ。今回みたいに、最初からマリアの物語にカタリナが関わるってのはなかったんですね。
 この辺が今回は面白かったし、気になるところですね。

同僚のソラとの絡み

 それと、今回尊みが深かったのが、ソラとカタリナですね。
 彼は今回、彼女の同僚になっててさ。
 6巻から気になる異性との距離感がやけに近いってイベントが多くてさ。
 そのうえでのさ、彼の幼い時期からすでに社会に飲まれているから精神的に成熟している部分ってのがさ。キースとは違った意味で、カタリナに踏み込めてない感じでさ。少女漫画によくある、メインヒロインと王子様役がすでに付き合っている後に出てくる負けちゃった王子様感がしてさ。僕、性格がわるいから、こういうのニヤニヤしながら読んじゃうんだよ。今回、7巻の44ページの挿絵もそんな二人の関係性がわかってさ。かなりよかったですね。

今後の期待

 今回、全体的な印象としては日常回にみせかけた伏線回といった感じですね。カタリナたちは、マリアがパワーアップするのに必要とされる光の契約書を探して、魔法省のなかを探索する。これにより、魔法省にいる登場人物の紹介や施設の説明をすませているんですね。流れとしてミステリーの事件の起きる前日ちょっとしたいさかいみたいな感じでさ。これからなにか起きますよって印象をうけました。
 8巻も楽しみにしています。