そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『ダンジョンはいいぞ!』について

さて、今回は小説家になろう連載のネット小説。2017年9月9日にTOブックスにて発売。著者は『異世界に転生したら全裸にされた』を書いている狐谷まどかさんです。

あらすじ(amazon引用)
とある世界の片隅で暮らす男セイジは記憶が無く、さらに魔力も体力も仕事さえも無い究極の落ちこぼれ。そんな彼はある日、知り合いの少女の勧めで冒険者を目指すことに。だが現実は甘くなく、訓練学校では荷物持ちという屈辱的な職業にさせられてしまう。それでも気の合う仲間たちとパーティーを組み、苦楽を共にしながら、セイジはダンジョンの凶悪なモンスターに立ち向かっていく! いざ、茨の道を突き進め!
一攫千金を夢見る男の、ダンジョン攻略ファンタジー!

今回は、まず、狐谷まどかさんの過去の作品について話すことで、僕のなかの狐谷さんの作風のイメージを語った上で。序盤を読んでいて驚いたキャラ立ての素早さについて話し。それが前作と比べると、水彩画からコピックに持ちかえたような明らかに変化だという話と。思わずクスリと笑ってしまう下ネタが面白いという話をします。

目次

作家、狐谷まどかさんについて

『ダンジョンはいいぞ』はかなり前から、Twitterで書籍化の話を狐谷さん本人がしゃべった時から読もうと思ってたんですよ。

なぜかと言えばさ、僕個人がまどかさんの作品を読んでいくうちに、この人自身に関心がいってさ。ついつい、気になる人になってるからなんですよね。

これ、僕だけじゃないと思うんですよね。
この人の作品を読んで。ツイキャスを聞いたり。Twitterで話したりしたことがある人はさ。わりとこの人に好感を持つと思うんですよ。

僕がこの人のことを知るきっかけになったのがTwitterです。

Twitter、140字足らずの短文で情報を共有するSNS。ネット小説の書き手の宣伝や交流のためのツールとしても優秀で。確か、pixivに小説投稿機能が出来た頃からTwitterに登録してましたから。2010年にはいろんな書き手さんをフォローしてたんですよね。

あれから、7年。まさか個人的に追ってた書き手さんがどんどん書籍を出して小説家になるところをリアルタイムでみることになるとは、あの頃は思いもしなかった。

それはともかく、あの時、僕はpixiv小説の書き手さんや小説家になろうの書き手さんをこっそり小説家さんのリストにいれて、その中での会話とか、関係とかを見てたんですよ。

イメージ的には、クラスで教室の隅で寝ているフリをしながら、じつは周囲の会話に耳を傾けている。この7年間の僕のTwitterの楽しみ方はそれでした。

だからさ、この人は元々はpixivオリ小勢だとか。この人らは前に⚪︎⚪︎ちゃんがやった企画をきっかけにオフ会やるようになった仲だよなとか。この人は元々は⚪︎⚪︎の二次創作書いてたよなとか。この人は⚪︎⚪︎で受賞した同士だから仲良いよな、とかみたいなのがわかるんですよ。

あくまで、自分がフォローを外したり、入れたりしてどんどん情報を整理していったTLの範囲内だけでですけどね。

そうやってつくっていった教室で耳を澄ましているとですね。やたらとRTが多いクラスの人気者ってのがみえてくるんですよ。

たくさんの人気者のなかでわりと気になったのが、狐谷まどかさんなんですね。

Twitter眺めてるとですね。
何度か狐谷さんの名前と作品をよく目にしたんですよ。それもさ、作者本人がTwitterで熱心で言ってるんじゃないんですよ。
いろんな人がさ。僕がTwitterでリストにいれてた50人の枠内でさ。狐谷さんの名前や連載中の作品のネタをさ。空リプ、つまりは本人に直接メッセージを送らなくても本人にはその意図がわかるようなツィートにさ。本人が反応するっていうさ。
わりとクラスのいじられキャラみたいなさ。かなりコミュ力のある書き手さんってのがさ。目についたんですよね。
それでさ、こんなに愛されてるなんてどんな作品書いてんだろうなってさ。気になるじゃん?
でさ、はじめて読んだ狐谷さんの作品がさ、『異世界に転生したら村八分にされた』です。

これですね↓
http://ncode.syosetu.com/n9669ct/

ちなみに書籍化された時はタイトルが変わってですね。『異世界に転生したら全裸にされた』で出版されました。前に感想記事をこのブログにも投稿しましたね。
異世界に転生したら全裸にされた - そう、それが言いたかった

『異世界に転生したら全裸にされた』、当ブログではこれを異世界全裸と略します。
異世界全裸は、文字通り、主人公の中年男性が突如異世界に全裸で転生してしまった話です。全裸で転生、つまり何も持っていないんです。スマホも、DIY用品も、チートな武器も、スキルだってない。ホントにこの身一つで異世界に降り立つんです。
しかも、1話から辛辣な展開だ。31歳でフリーターとして生きていた主人公の修太は、転生した世界で、全裸のまま異世界の住民に捕縛される。
そして村長は、捕縛した彼を村の労働力として家畜小屋に放り込む。それからは薪割りの日々。家畜の世話をこなし。次第に猟師の仕事をするようになる。
ちなみに、猟師の仕事を与えられるまでは全裸だ。しかも猟師になっても、もらえるのは毛皮のチョッキのみだ。

読んでてビックリしましたよ。異世界転生俺TUEEを期待したら。出だしからはじまるのはドン底からのスタート。しかも、魔法や身体的なチートも授からず。一章の後半まで村での慎ましい生活が続く。

でもね、つまらないわけじゃないんですよ。1話読んでみるとさ。2話、3話と読んでってさ。読んでいくうちにさ。ジワジワと面白くなっていく。

スゴイ能力があるわけでもない主人公の異世界での生活。それになぜ惹かれてしまうかといえば。読めば読むほど、彼が一見頼りなさそうにみえて、じつはかなりのメンタルとスキルでは測れないような強さを持っていることがわかるからです。

主人公の修太はさ、1話から書いてあるんだけどさ。フリーターなんですよ。それがただのフリーターじゃないんです。空手道場の内弟子から、配管工のアルバイト、花火職人の手伝いに時代劇のエキストラ。

様々なバイト経験があり、それによって、彼は異世界での仕事をどんどんこなし。ジワジワとジワジワと生活水準を上げていって、いつの間にか異世界俺TUEEをやっててるんですよね。

この様々なバイト経験ってのがスゴくってさ。なにがスゴいってさ。かなり細かいんですよ。まるで実際にそのアルバイトを体験してきたかのように。

そりゃそうなんですよ。だって、作者ホントにやったアルバイトの話を書いてるんだから。Twitterでも、何割か自分の経験談を書いてるって言ってました。

これが異世界全裸の魅力です。

異世界全裸を読んでるとさ。作者さんのポテンシャルの高さ。強さを作品から読み取れてしまうんですよ。正直言って、小説を読んでここまで書き手に興味が湧いたのははじめてでしたよ。

あと、狐谷さんは他にも、妹株式会社やじんじゃえーるって作品も書いてます。じんじゃえーるはまだ読んでないんですが、妹株は読みました。

妹株と異世界全裸。この二つを読んだことで、僕は狐谷さんの長所とその長所を選択したことによる短所があるなって思ったんですよ。

まるで水彩画からコピックに変わったかのような変化

僕が狐谷まどかさんの作品から感じる魅力。それは噛めば噛むほど後から染みてくるキャラの深さです。
この人の作品をずっと応援してるファン。読んだ後さ、なんだかんだで読みにくる常連さんってのが、狐谷さんにはいるんですよ。
それはなぜかといえば、狐谷さんの作品をじっくりある程度のとこまで読めば、狐谷さんの世界観やキャラクターを誰もが好きになっちゃうんですよ。

狐谷さんの作品にはさ。最初はあっさりしてるんですよ。
異世界全裸も、突然異世界に全裸で放り出される話だし。妹株もさ、アイドル活動かと思えばさ。そのアイドルをさ妹に置き換えてさ。妹の評価を株として売買するさVALUの先駆けみたいなさ。スゴイアイデアをやってるんだけどさ。
なぜかすんなり読むてさ。わりと盛り上がりにかけるんですよ。

でもさ、ちょっとした事件やエピソードを細かに置いていくことで。ちょっとずつちょっとずつそのキャラクターを好きになっていくようにできてるんですよね。

で、これをやるとどうなるかと言えば。序盤に主人公のキャラを立てるような事件がない作品だからさ。出だしの掴みが弱い作品が多いんですよね。

でも、これが長所なんですよ。いわば食べ物でいうとこの和食でさ。薄味なんだけど、じつは考え抜かれた複雑な味でさ。噛めば噛むほど後からそれの美味さがわかっていく。

そして和食でありながらも。
最初は薄い色でも重ねていくと深い色合いが出てくる水彩画のようでもあるんですね。

でさ、僕は狐谷さんにそういうイメージを抱いてたんですけどね。今回、読んでてビックリしましたよ。

女の子がさ。初登場時から、キャラが立ってるんですよね。女剣士で痴女属性、プラスオネショタのシャブリナとか。回復役でロリ、ビビリねティクンちゃんとか。中二病魔法使い、高慢いじられキャラのドイヒーとかさ。

今まで水彩画のように淡い色だったキャラからコピックのハッキリした属性によるキャラづけがされている。

だからさ、最初からかなり面白いんですよ。しかもさ、主人公は30歳からの転生ショタでありながらも、序盤はじつは活躍してなくてさ。序盤にヒロインたちのキャラを出しつつ、後半である特技を見いだし努力で徐々に魅力を上げていく今までのキャラの立て方も両立させて書いてるんですよ。

これがさ、読んでて上手いな〜って唸りましたよ。

悔しい、でも笑っちゃう! 下ネタのラッシュ

でさ、これの面白いとこがさ。ようしょようしょにある下ネタの数々ですよ。
『ダンジョンはいいぞ』はさ、読んでて思わずさ。こんなことでって、つい思っちゃうようなさ。いい意味でくだらない下ネタが多いんですよ。
それが面白い。ついゲラゲラ笑っちゃいました。
最初から最後まで、どんどん出していく下ネタのラッシュは爽快ですね。
下ネタの解説ってのはやるのは野暮ってもんなので、ぜひ実際に読んでみてください。