そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『僕には暴淫暴食(エロエロぱくぱく)エルフ神様転校生がいます』について

今回紹介する作品は、『僕には暴淫暴食(エロエロぱくぱく)なエルフ神様転校生がいます (美少女文庫)』です。

僕には暴淫暴食(エロエロぱくぱく)なエルフ神様転校生がいます (美少女文庫)

どんな話か

 主人公の開人には幼い頃に親に言いつけられた役目があった。それは社に捧げ物を用意すること。最初、彼は家のしきたりでそれをやることに不満だったが、次第に自分からやるようになる。
 彼はある日、社の祭壇の向こうから手が伸びて、自分の捧げ物を食べる女性の姿を見てしまう。
 一瞬見たその姿に一目惚れした彼は料理を学んで、以前よりも熱心に捧げ物を用意するように。
 一方、異世界から扉をつくり向こうの世界の捧げ物を食べていた女性。名前はセーラ。彼女は異世界のエルフだった。熱心に捧げ物を用意する幼い開人に興味を抱き、彼に好意を抱くようになる。
 彼に会いたいと願うも、彼女と彼の世界をつなぐ扉は魔力がたまらないと移動することができない。
 時は経ち、開人が学生になる頃。祭壇が開き、中からエルフが現れる。
 現れたセーラは開人を自分の専属料理人にするため、両親が転勤でいない彼の家で同棲する。
 さらに時は経ち、エルフの女性として街の近隣住民や開人の学校に受け入れられるようになる彼女。
 それにつれて、彼女は自分の開人に対する恋心を自覚するようになる。

どう面白いか

 異世界につなぐ門、それをつくって異世界の住民はこちらの世界にやってくる。エルフのセーラも門を自作してこちらの世界に行くことに。しかし、魔力が溜まって使えるようになるまでに時間がかかる。その間、門の隙間からお供えものを手に取り食べるように。門は神社の祭壇と繋がっていた。
 そこでお供えものを捧げる主人公をみつけ好意を抱くようになる。
 設定が既に面白い。序盤の関係性の作り方も上手い。二人が出会ったらどうなるだろう、というワクワク感がある。
 ついに出会った二人。学校に通うようになるくらいに成長した主人公。親は仕事の都合で神社を離れ、一人で暮らしている。
 もちろん、日課の捧げ物は忘れずに。
 そんななか、ついに魔力がたまり、こちらの世界にやって来れたエルフのセーラ。
 彼女は唯一のつながりである主人公を頼る。二人は同居することに。
 ここで、異世界からこっちの世界にやって来る存在については国の表に出ない組織からは認知されており、戸籍などの諸々の事情は解決されていることも説明されている。
 スタイル抜群のエルフとの二人暮らし。無防備な女性との日常的なお色気シーンを挟み、数ヶ月、あるいは数年の時間が経つ。
 街に馴染んだセーラ。当たり前のように学校にも通っている。
 そして、開人に対して言語化できない感情があることをクラスメイトの女性に相談する。
 クラスメイトたちから、それが恋心であることを伝えられ、恋バナに色めき立つ彼女たちはセーラにアプローチのためのアドバイスをする。一週間後、クラスメイトたちから恋愛講義を受けたセーラは行動に移すことを決意する。
 開人に牛乳風呂を提案し、先に入った開人の風呂場に乱入する。
 知らないことに対して好奇心が旺盛で、食欲が旺盛な彼女。そんな彼女が恋心を自覚すればそれらの欲求の熱量がそのまま性欲に変換される。だからこそ、彼女の行動はスムーズだ。そしてそのことに読んでいて違和感がない。
 セーラの心理描写を追うほど、沸騰したヤカンの蒸気はいずれ吹き出すように、内に湧いた衝動が実行に移されることは読者にとって想像に難くないことであり、期待感が高まる。
 また、本作は異世界から現実世界にくる存在が表立ってではないが一部の人には公になっている世界観だ。そのため、エルフがこちらの世界にやってくることに対する諸々の障壁はすんなりと崩れ、二人の同棲生活を楽しむための土台が速やかに組み立てられている。
 スタイル抜群のエルフとのエロい性活の描写がよいことはもちろんであると同時に、エルフが人間の世界でどう暮らすのかという話としてもソフトな読み応えの面白さがある。

キャラクターの魅力

 エルフのセーラは魅力的な人物だ。好奇心が旺盛で一度決めたことにはまっすぐに突き進む。
 そのことは、周囲にバカにされながらも現実世界に繫がる門を自作し、何年もかけて開人のいる世界にやってきたことからもわかることだ。また、食欲が旺盛なことも可愛らしい。
 本作はこちらの世界にやってきたセーラと開人との同棲生活だ。そこでは現実世界にやってきたエルフの日常が描かれており、彼女の挙動は見ていて楽しいものだ。食欲が旺盛で少し天然。それでいて、優しいところがあり、周囲もいつの間にか異質であるはずの彼女を受け入れている。そして、周囲に受け入れられたという日常が、そのまま開人への恋心を自覚した途端、周囲はセーラの味方にもなる。
 この辺も読んでいて楽しかったです。日常が楽しく描かれており、エロもちゃんとある作品でした。

どうエロいか

 長寿のエルフと人間である開人との恋愛。二人の関係性はある種のおねショタ味がある。
 食欲が旺盛な彼女は性欲もかなりあるという設定がよかったです。
 日常のほんわかとした空気を壊さずに、恋心を自覚してからのエロへの直行はとても良かったです。
 本作は、序盤はセーラが開人をリードする形で性行為を重ねていく。しかし、セーラは開人に自分に対しての強い劣情を行動に移してほしいと考えている。回数を重ねていくにつれて、S寄りなプレイもしていく流れも良かったです。
 おすすめの作品です。ぜひ読んでみてください。