そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『学生結婚した相手は不器用カワイイ遊牧民の姫でした』について

今回紹介する作品は、『学生結婚した相手は不器用カワイイ遊牧民の姫でした』です。

 

学生結婚した相手は不器用カワイイ遊牧民族の姫でした (オーバーラップ文庫)


**ラブコメでオカルトで異能バトルにした冥婚⁉︎

 現段階で、本作の続きがかなり気になっている。タイトルと表紙からは予想がつかなかったが、本作にはどのジャンルにも横断できる幅の広さがある。

 タイトルを読んで、ラブコメかと思いきや、序盤からかなり斬新なファンタジー要素がある。

 交通事故に巻き込まれた主人公は臨死体験をしており、一緒に死んだ遊牧民の女性と冥界で結婚式を挙げるのだ。

 ヒロインの国ではそういう文化があるらしい。どうせ死んだのだから、と軽い気持ちで結婚式を承諾する主人公。

 しかし、結婚式の最中に2人の意識は回復し、蘇ることになる。これにより、魂だけは冥界での婚姻契約に縛られることになる。

 これにより、2人は100メートル以上離れると片方の魂が引っ張られて抜ける体質になってしまった。

 2人は蘇った後も夫婦として一緒に暮らすことになる。遊牧民族の姫であるヒロインも、主人公の家に住み、同じ学校に通うことになる。

 冥界での結婚という設定がラブコメ展開になると思っていた私の意表をつく形となっていることにより、本作はどうなるのかわからないという困惑を抱えたまま途中までページをめくった。しかし、序盤の急展開とは裏腹にかなり真っ直ぐ恋愛が描かれている。


**爽やか2人の関係

 本作は右葉局説があるにせよ、ストーリーの型としては、一見正反対と思われる2人がある外的な要因から半強制的に恋愛関係になってしまう話だ。

 こういう話って、意外性をだすために2人がどれだけ合わないのかみたいな話をやるために、序盤にひりついた場面が出がちになる。しかし、本作では、2人ともそこまで毒がなく文化の違いだけを差し引けば比較的に普通の人って感じがするところがよかったです。

 ヒロインの遊牧民族設定はかなり詳細に詰めてあり、読んでいくうちにその国で育った女の子なんだなってすごい思いました。

 主人公も、妹思いのいい人だって感じが最初から出ていた。

 そういった2人が夫婦として、お互いのことを知って尊重していく流れがとても良かった。


**これからどうなるかがまだわからない一巻

 本作は一冊の作品として面白くまとまっている。冥婚という特殊な状況に置かれた2人のドタバタは読んでて楽しかった。終盤に明かされた交通事故に隠された民族間の争い、ヒロインが誘拐される急展開にはハラハラしたし、そこに冥婚のギミックを使って立ち向かっていく流れはとても良かった。

 いい意味で、どんなジャンルの話かわからない作品だった。だからこそ、知りたくなった。続きが読みたくなった。

 2巻以降が、ファンタジーになるのか、恋愛になるのか、異能バトルになるのか。今後の展開がとても気になる作品だ。