そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『メイドと学ぶ商会経営(美少女文庫)』について

 今回紹介する作品は『メイドと学ぶ商会経営』です。
メイドと学ぶ商会経営 クールな彼女の愛し方 (美少女文庫)
もくじ

どんな作品か

 主人公のクラウドが抱えている商会は破産の危機にあった。主人公は父から商会を引き継いでいた。父は3年前に落盤事故で死んでいた。商会を引き継いだ後、なんとか商会を黒字経営で進めていたが、突如、父がしていた借金の請求が来る。このままでは、銀行に借りているお金を返せない。黒字経営であるにも関わらず破産してしまう黒字破産の危機に立たされた。クラウドは商会の経営者としてなんとかしようと悪戦苦闘する。彼の従者であるメイドのノエル、ターニャ、クロエもクラウドに協力し、やがて親密になっていく。

どう面白いのか

 本作は2つのメインストーリーがあります。一つが無表情なノエルとクラウドとの恋愛関係。ノエルは普段から毅然とした態度でクラウドをサポートしていて、周囲からは氷の魔女と評されていました。ノエルとクラウドは幼馴染です。クラウドは幼少期に彼女の笑顔を見たことがあります。クラウドはどうしても心からの笑顔を見てみたいと考えています。しかし、ノエルの表情は変わることがない。クラウドはノエルと、主人とメイドとして、肉体関係をもっているが、本当の意味で親密になれていないと考えていて、その仮面の下の素顔に近づきたいと考えている。そうした想いがプレイの激しさにつながっていき、官能描写の必然性になっています。
 もう一つは、商会の経営。クラウドは期限までに融資してもらっている銀行に返済するお金を用意しないといけない。
 その問題の内実を序盤でわかりやすく解説されています。だからこそ、難しいことがわかった、と思いました。それにより、得をした気分になれる。また、この問題はタイムリミットのある問題です。主人公たちが問題解決のために起こすアクションの一つ一つになるほどと思うと同時にページをめくればめくるほど序盤で明らかになった問題の期限に近づくわけですから。読んでいて、緊張感のようなものが走りました。
 そして、本作はこの2つのストーリーのゴールがラストで集約されています。ノエルの仮面の下に隠された本心を知ることと、商会を経営を成功させることが同時に起き、それらが相互に作用してのラストになる。そこにはカタルシスがありました。

キャラクターの魅力

 キャラクターが魅力的です。主人公のクラウドは頭脳明晰で、セリフや心理描写の一つ一つが読んでて頭がいいと感じさせます。それでいて、ノエルに対しては抑えきれない情動のようなものを感じ、商会経営の日常を楽しみながらも、官能的な非日常の到来を楽しみにページをめくりました。
 もちろん、ヒロインであるノエルもとても素晴らしい。彼女はクールなメイド。しかし、内には主人であるクラウドに対する恋心があります。彼女は主人とメイドとしての関係を保つために本心を隠している。表には出ない内面の描写がとても素晴らしいです。彼女の本心を明らかにしたいクラウドによって行われるプレイの数々に対しての彼女の情欲が溢れそうになっている心理描写はとても官能的です。そして、そんな彼女が仮面を外して求めていくさまを見るのはとてもカタルシスを感じました。
 主人とメイド、主従関係であるが、内面で想い想われの関係である二人はとても魅力的な関係性です。
 また、二人の周りに添えられたターニャとクロエも魅力的な登場人物だ。
 二人によるコミカルな台詞回しは面白い。また、クラウドとの肉体関係を持つまでの流れも、その情事も、とてもエロくてよかったです。

どうエロいのか

 本作は文章だからこその魅力の詰まったライトノベルの官能小説でした。クールであるノエルのうちに秘めた主人を想う心理描写はとても面白かったです。ノエルがある失敗をしたことによって行われるクラウドのお仕置きは、とても官能的でした。クールなメイドとしての振る舞いが求められ、そのとおりに振る舞う彼女。しかし、スカートの下にはクラウドによって装着するよう命じられたあるものが身体をいじめる。このプレイの場面は官能的であると同時に、クラウドの考えが読めない場面でもあったため、これからどうなるのだろうとワクワクしながらページをめくりました。
 そして、うちで溜め込まれた情欲がようやく開放された場面は、とてもエロかったです。
そのうえで、二人のメイドとの関係性の広がりも読んでいて面白かったです。
 エロいことと、問題解決が同時に進んでいたため、2つのストーリーが一つの物語として楽しめるところが良かったです。

 オススメの作品です。ぜひ読んでみてください。