そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『とってもカワイイ私と付き合ってよ!』1、2、3巻について

 さて、今回紹介する作品はこちら、『とってもカワイイ私と付き合ってよ!』です。

 タイトル通り、表紙で見るからにカワイイを振りまく女の子と、陰キャな男の子が付き合うライトノベル。
 しかし、この付き合うって関係がかなり込み入った事情につながっている。
 ヒロインの七峰結朱はクラス一の人気者の女の子。彼女はクラスの中でカーストの高いコミュニティに所属している。
 そのコミュニティ内の中心人物である桜庭楓太が本作のヒロインである七峰結朱のことが好き。さらに、親友の小谷亜妃は楓太にひそかに想いを寄せている。

 三角関係による、クラス内でのコミュニティの崩壊を危惧した彼女はクラスで恋愛ごとに興味を持たない主人公の和泉大和に偽物の恋人関係をしてほしいと頼む。

 読んでいてとても面白かった。まず、当然のことにヒロインがカワイイ。長い髪の優等生女子、ムードメーカー、人気者、クラスの中心人物。王道でありながらも、没個性的ではない。リアクションをずっと見ていたくなるような小動物的な可愛さがある。主人公とのやりとりが読んでて楽しかった。
 本作はボーイミーツガール。一人の男に対し、女も一人。底抜けに明るいキャラでありながら、彼女にはクラスの人気者としてのふるまいや、友達との関係による自身の葛藤がある。キャラクターの履歴書とかを書いた場合、そこまで特殊な出生や生い立ちは書かれていないはずなんだけども、目に焼き付く魅力がある。

 僕は本を読むときに序盤で、どんな作品かあたりをつけて、自分だったらどう書くだろうって考えながら読んでいる。
 最初、僕が書くとしたら主人公の妹とか、教師とか、そのたもろもろで結朱以外でヒロインを出すだろうなって考えながら読んでいた。
 この作品は、実際はキャラ数がそこまで多くなく。かといって少ないわけでもない数で物語を動かしている。
 楓太と結朱の二人の関係を描くために必要な適切な人数で青春を描いている。

 かといって、二人だけの世界で閉じているわけではない。物語の主軸には、学園カーストが関わっているし、生きづらい学校の中でどう生きるのかが描かれている。
 その舞台を描くための象徴的存在として、亜妃と楓太。2巻以降から活躍するキャラがいる。
 穏やかな海の下の荒れた渦を表現するのには、葉っぱ一枚で事足りるのだ。

 1巻から3巻を通して描かれているラブコメであり、青春だし、ボーイミーツガールだ。しかし、そこにはときおり積みあがったジェンガの不安定さに気づいたようなハラハラする瞬間がある。

 まったくタイプの違う二人が出会ったってだけじゃないんだよね。かといって、好き同士だけど、お互いの立場で結ばれないロミジュリでもない。
 なんてったって、二人は付き合っているところからはじまっているし、まわりは二人の関係に反対しているわけでもない。
 ただ、最初に偽物の恋人をやろう、というボタンのかけちがいがあるから、相互理解の途中ですれ違う。

 本作読んでて面白いなってところに、主人公がヒロインがどこにいるかわからなくて探しているって場面があるんだけどさ。
 客観的に見れば、問題なんてないように見えるんだよ。なぜなら、二人にはスマホがあってそれで連絡を取ればお互いの場所なんてわかるはずなんだよ。
 べつに、だれかが片方の居場所を隠しているわけじゃないし、昔のメロドラマみたいに、ガラケーの電波障害でお互いに連絡が取れないわけじゃない。では、なぜ主人公がヒロインを探さなければいけないのか。
 ヒロイン自身がどこにいるのか、主人公に教えないからなんだよね。

 それは主人公のことがすごい嫌いだからってわけじゃなくてさ。今日、今、会わなくてもいい、てヒロインが思っているからなんだよね。
 それはさ、彼女が友達のためだとか、主人公のためだとかを考えての行動なんだけどさ。
 それを彼自身が否定して、ヒロインの下にやってくる。
 これが主人公の性格がわかってきて、彼の考えに共感できるなって思うところでそういう行動をとるから感動するんだよね。

 ストレートに面白い話だった。続きが読みたい。